CLAY (Enja)
- 山下洋輔

  1. ミナのセカンド・テーマ
  2. クレイ

山下洋輔 (p)
坂田 明 (cl, as)
森山威男 (ds)

1974/06/02

映像の無い映画のようだ。
映像の無いスペクタクル映画。
予感、不気味な前兆があり、クライマックス、そして終焉。
こちらの期待を裏切らない展開。何かありそうで、やっぱり何かが起きる。
山あり、谷あり、土砂崩れあり、津波ありの台風あり。そして、地震、雷、火事、親爺ありの、天変地異や、およそ思いつくすべての災害・災厄がドカンと一気に降り注いでくるというワクワクする(?)展開だ。

しかし、いきなり、クライマックスがドカーン!とくるのではない。

1974年、ドイツはメルスの「ニュー・ジャズ・フェスティヴァル」でのライブの模様が収録されたアルバム『クレイ』。

この時の演奏が、他の山下のアルバムと一味も二味も違うのは、展開における「勿体つけ方」が絶妙だということ。
《ミナのセカンド・テーマ》を聴いてみよう。
静かなる予感から徐々に演奏が始まってゆく。
不気味に静かに唸るピアノ、クラリネット。
ドラムはまだ、スティックではなく、ブラシで静かに彼らを彩る。
何かが起きるに違いない。どうせ最後はドバーッ!と暴力的に盛り上がるのだろう、ということは分かってはいるが、そこに至るまでの、緊迫感、聴き手に求める集中力の深さの度合いがスゴイ。

ピアノって、こんなに恐ろしい楽器だったのか!?
そう思うくらい、山下洋輔がゴンゴンと鳴らす鍵盤の低音部は、邪悪で黒光りしている。
不意に、あるいは、この瞬間を計算していたかのように入る、森山のドラムが入った瞬間は背筋がゾクゾクとするほどだ。
演奏のちょっとした隙間から、絶妙なタイミングで聞こえる「いえー!」という叫び声も不気味な予兆を盛り上げている。
そして、最後は暴風雨のように三人が一丸となって暴れまわる。

当時、ヨーロッパを荒らしまわった「山下トリオ」の三人が、「カミカゼ・トリオ」と呼ばれていた理由も分かろうものだ。

盛り上がったところで、次の曲《クレイ》へ。
《クレイ》でフリーソロになる坂田明は本当にスゴイ。全身が痙攣しているんじゃないか、というぐらいの吹きっぷりだ。

(2002/03/16) 

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