PHIL TALKS WITH QUILL (Epic)
- Phil Woods

  1. Doxie 1
  2. A Night In Tunisia
  3. Hymn For Kim
  4. Dear Old Stockholm
  5. Scrapple From The Apple
  6. Doxie 2

Phil Woods(as)
Gene Quill(as)
Bob Corwin (p)
Sonny Dallas (b)
Nick Stabulas (ds)

1957/9/11 & 10/8

手に汗握るとは、まさにこのこと。

二人のアルトサックス奏者、フィル・ウッズと、ジーン・クイル。
この2人の白人アルト奏者コンビによるエキサイティングな演奏を、ゲップが出るほど楽しめるのが本盤なのだ。

ところで、恥ずかしい話なのだが、いまだに、フィル・ウッズのアルトと、ジーン・クイルのアルトの区別がつかない。

もちろん、手元にある日本盤の解説を読めば分かるんだけども、ボーッと聴いていると、
「あれ?今のソロはどっちだったっけ?」
となる。

それほど2人は似ているのだ。
まるで双子のようなサウンドだと思う。

フィル・ウッズとジーン・クイルは、チャーリー・パーカーを敬愛する白人アルト奏者。
プレイもエモーショナルでエキサイティング。よく通るクリアな音質だということも大きな共通点だ。

一曲目の《ドキシー》なんて、しばらくはフィル・ウッズが後発のソロを吹いていると思っていた。
それにしても、ロリンズ作曲の《ドキシー》は、フィル・ウッズのお気に入りナンバーなのだろうか。
後年ヨーロッパに渡り、現地で結成したヨーロピアン・リズム・マシーンとのアルバム『アライヴ・アンド・ウェル・イン・パリ』でも取り上げていた。
ロリンズの場合は、緩めのテンポが似合うが、ウッズの場合はアップテンポの演奏が似合う。

2曲目は、エキサイティングな《チュニジアの夜》。
テーマのインタールードの後のブレイクにさしかかると、演奏の流れからしても、当然アルトのソロが展開されるものだと思いきや、ピアノが先発してソロを奏でるので、分かっちゃいるけど、いつも肩透かしを食らわされる感じ。

後続のクイル、ウッズのソロもエキサイティングで手に汗握る展開となっている。

ミドル・テンポの《ヒム・フォー・キム》は、ハードバップ的な名曲だと思う。
ジャッキー・マクリーンが吹いたら、より一層魅力的になるんじゃないかと思うようなテーマのメロディ。そして、重量感溢れる腰の据わったリズム。
前の《チュニジアの夜》ほどハードかつ高速テンポの演奏ではないので、アルバム中では良い気分転換、アクセントになる。
もっとも、次第に2人のアドリヴが白熱してくるので、体が自然に揺れてくるが。

名曲《ディア・オールド・ストックホルム》。
速めのテンポで、このしみじみとしたメロディを熱く焦がしている。
悪くはないけど、なんだか元気の良いハジケまくった北欧の民謡ですな。
やっぱり、彼らのように流暢で熱い演奏は、次の《スクラップル・フロム・ジ・アップル》で生きるんじゃないかと思う。

この《スクラップル・フロム・ジ・アップル》のテンポの速いこと速いこと。
ドラムとベースのソロの場所を前半に設けた後はピアノに橋渡し。
真打ちの登場は、リズムセクションの紹介コーナーが終わってからとなる。
このようなタイプの曲となると、2人の吹奏は、まるで水を得た魚のようだ。
放っておいたら、いつまでも熱いソロが続くんじゃないかと思うほど、とめどめもなくフレーズが次から次へと出てくる。

ラストの《ドキシー2》は、最初の《ドキシー1》よりも、さらに速めのテンポ。
最後のスルスルと流れてゆくようなアレンジは好みの分かれるところだが、この2人には相応しい終わり方なのかもしれない。

……と、書いている間にあっという間に48分が過ぎてしまう。
聴いた後の感想は、「スカッとする」の一言。
爽快な気分になれるアルバムだ。

そう、かなり熱い演奏なのに、鑑賞後に感じるのは重たい疲労感ではなく、あくまで、スポーツで汗を流したときのようような、爽快さが勝る心地よい疲れなのだ。

ところで、私はこのアルバムは、あまり“バトルもの”として聴いてはいない。
たまたま同じ管楽器の奏者がフロントになっただけの編成といった感じで、テーマのアンサンブルがキチンとアレンジされている点からしても、あまり“ジャムセッション的な雑なバトルもの”という印象は受けない。

同じ楽器がフロントを務めているアルバムとしては、私にとっては『テナー・マッドネス』よりも、『カイ+J.J.』に近い位置付けだ。

それはつまり、整然とアレンジされた部分と、思いっきりブロウが爆発しているところの配分のバランスが素晴らしく、だからこそ繰り返し聴くに耐える内容になっているのだと思う。

なめらかな流線型を描き、つややかな音のエッジを煌めかせながら、疾走するウッズ。
負けじと食い下がるクイル。

互いが互いを燃え上がらせる触媒となると同時に、テーマにおいては、ピタリと息の合ったアンサンブルを聴かせてくれる。

このコンビ、エキサイティングな演奏でたちまち人気を博したそうだが、活動期間が短かったのが残念。
もっとたくさんアルバムを残して欲しかった。

スピーカーから飛び散る勢いあふれる元気な音の飛沫。
このアルバムは、出来るだけボリュームを上げて聴きましょう。
迫力、と同時に突き抜けるような爽快感も味わえることだろう。

元気になりたいとき、仕事前の気合いを入れるときなどに最適な1枚だ。

(2002/05/24) 
(2009/12/30 加筆修正) 


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