M A L - 1 (Prestige)
- Mal Waldron

  1. Stablemates
  2. Yesterdays
  3. Transfiguration
  4. Bud Study
  5. Dee's Dilemma
  6. Shome

Mal Waldron (p)
Idrees Sulieman (tp)
Gigi Gryce (as)
Julian Euell (b)
Arthur Edgehill (ds)

1956/11/09

《イエスタデイズ》の名演として有名なアルバムだ。
しかし、私はその《イエスタデイズ》が、あまり好きではない。

たしかに、テーマの前半はベースとトランペットのデュオというシンプルな組み合わせが醸しだす、独特なムードを演出するというアイディアは効を奏していると思う。
雰囲気設定は申し分ないし、アルバム2曲目に、このようなアレンジの演奏を配する演出もよく考えられていると思う。

では何が好みじゃないのかというと、トランペットのアイドリース・シュリーマンの“節回し”が、どうも野暮ったいのだ。

歌詞で言うと、
“Days I know as happy sweet sequester'd days”
のところの、
“sequester'd days”の部分だ。
いくらなんでも、“パー・ヤッ!”はないだろう、“ぱーやっ!”は。

続く、“Olden days,Golden Days”のところも同様。
“パヤッ・パヤッ・パヤッ・パヤッ〜”とメロディを細切れにして、なおかつ音が元気に飛び跳ねている。

原曲の旋律を、たったの2音に省略するセンスには目をつぶるとしても、せっかくの神妙なムードの中、勢いよく跳ねて音を切る演奏をされてしまうと、せっかくの雰囲気がぶち壊しだ。
陽気な感じが否めないのだ。一人で大手を振って張り切っている感じ。
フレーズもそうだが、TPOが分からないという点を取っても、ダサくてイモなラッパだ。
このアルバムの《イエスタデイズ》を名演だと持ち上げる人は、私がダサくてイモだと感じる箇所を良いと思っているのだろうか?

この曲は、マルのソロもいただけない。
テーマのメロディに近い旋律を奏でるのは良いが、モールス信号のように同じ音を打鍵しているので、ムードもへったくれもない。
たしかに、同じ音を何度も繰り返すモールス打鍵”はマルの得意技の一つだが、テーマのメロディを細切れに分解することも無いだろう、と思ってしまう。
歌詞で言えば“ゴールデン・デイズ”にあたるところを、
“ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴールデン・デ・デ・デ・デ・デ・デ・イズ”と痙攣させて、どこが面白いのだろう?

私は、《イエスタデイズ》というスタンダード曲に特別な思い入れがあるというわけではないし、「《イエスタデイズ》はかく演奏すべし!」という信条も特にない。
各プレイヤー、自由に演奏すれば良いと思っているが、「この曲に、これだけは、やっちゃいけないんじゃないか?」と思わせる要素が満載な演奏だと思うのだ。

《イエスタデイズ》はイマイチだが、《ステイブルメイツ》や、《ディーズ・ジレンマ》は良い。
とくに、スイートなトーンでセンスの良いアルトサックスを聴かせてくれるジジ・グライスは素晴らしい。

そういえば、腰砕けの《イエスタデイズ》も、ジジ・グライスの短めのソロは、趣味の良いソロなので、曲の持つムードを破壊していない。あまり語られることはないが、このアルバムの“要”は、ジジ・グライスなのかもしれない。

このアルバムは、タイトルからも分かるとおり、マル・ウォルドロンの“MALシリーズ”の1枚目だ。
“MAL”には”回数”という意味があるので、名前とシリーズにうまく引っ掛けたネーミングだと思う。
(2003/08/04) 

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