EMERGENCY! (Polydor)
- The Tony Williams Lifetime

  1. Emergency
  2. Beyond Games
  3. Where
  4. Vashkar
  5. Via The Spectrum Road
  6. Spectrum
  7. Sangria For Three
  8. Something Special

Tony Williams (ds)
John McLaughlin (g)
Larry Young (org)

1969/05/26 & 28

怪しい。殺気立っている。非常にヤバそ〜な雰囲気。
このアルバム全体から立ち上ってくる濃密な湯気と、ただごとではない空気はいったいなんなんだろう。

一つに録音ミスということがあげられる。
アルバム全体の音に薄くディストーションがかかっているのだ。
ディストーションとは、音の歪みのこと。ロックのギターの音を連想してもらえば分かると思う。“ジャーン”、“グワーン”なあの音ですね。

エレキ・ギターのナチュラルな音に、ディストーションをかけると、あのような歪んだエッジのある音色になるが、この歪みが録音トラブルにより演奏全体にかかってしまったのだ。

しかし、それが逆にこのアルバムの演奏の雰囲気の怪しさを高め、より一層緊迫感に満ちた内容に仕上がっているのだから、“怪我の功名”とはまさにこのことだと思う。

もし、クリーンなトーンで録音されていたら、これほどスリリングな内容になっていたかどうか。
音の分離が悪くなる、レンジが狭くなるといったデメリットはあるにせよ、ディストーショントラブルにより、結果的にドアーズよりもヤバく、ピストルズよりも攻撃力の高いサウンドに仕上がってしまった。

もっとも、私が所有している記録メディアはCD。ライナーによると、CD化に際しては、かなり音質が改善されているという。とはいえ、音のザラザラ感や、音圧の強い箇所では、音が割れる様は、健在(?)で、改善されているたとはいえ、決してクリアで上品なトーンとは言いがたく、充分に迫力のあるザラつき感を味わえる。
レコードの『エマージェンシー!』のザラザラ音質はどれほどのものなのだろう?かなり興味がある。

ライフタイムは、トニー・ウイリアムス、ジョン・マクラフリン、ラリー・ヤングにより結成されたオルガントリオだ。

トニーの執拗なまでに細かく刻むシンバルが疾走する。
ラリー・ヤングのぶちキレたオルガン。
鋭利な刃物を思わすマクラフリンのギター。

ただでさえ、テロリストのような演奏集団なのに、それに加えて、あのザラザラした感触の音質だからね。ヤバさ加減といったらない。
マイルス不在の電気マイルス・サウンドとでも言うべき凶暴さだ。

とくに、ベストトラックとでも言うべき《スペクトラム》は、トラブル、パニック、暴動、スクランブル、発射←報復という言葉がよく似合う。
なんだかよく分からないけれども、力と熱のこもり過ぎた“緊急事態”なのだ。
いくつかの箇所で設けられたユニゾンによる“キメ”。
“ズッ・ピャー、ズッズッ・ピャー”が、とてもヤバくて鳥肌ものだ。

ちなみに、このアルバムはサウンドも凄いが、ジャケットも凄い。
このジャケットのビジュアルも、怪しい雰囲気をより一層倍加させることに一役買っていると思う。

表面、裏面、中面ともに、使われている写真のピントが甘く、全体的に赤緑がかった色彩。
ホラー映画などでよく使われる、恐怖を倍加させるエフェクト処理の一つに、映像を緑色に近づけ、画面の粒子を荒くするという手法があるようだが、『エマージェンシー!』のジャケ写は、まさに、それに近いものがある。

まさに、ジャケットとサウンドが一体となった“エマージェンシー=緊急事態”なのだ。
(2004/05/09) 


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