STEPPIN' OUT (Blue Note) |
| -Harold Vick |
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Harold Vick (ts) Blue Mitchell (tp) Grant Green (g) John Patton (org) Ben Dixon (ds) 1963/05/27 |
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R&B系のテナー奏者、ハロルド・ヴィックの初リーダー作にして、唯一のブルーノートでのリーダー作。 と同時に、隠れたオルガンジャズの名盤でもある。 そう、このアルバムのもう一人の主役はジョン・パットンなのだ。 フロントの、2管を立てながらも、ソロになったときには、ネチッこい自己主張を決して忘れない彼のプレイは、オルガン好きにはたまらない味だ。 もちろん、パットンのみならず、グラント・グリーンのアーシーなギターも特筆ものだし、決してリーダー、ヴィックのお株を奪おうという企みは感じないが、ブルー・ミッチェルのトランペットも、茫洋としたヴィックのテナーに対して、ピリリと良い引き締め役を果たしている。 そう、つまりリーダー以外のサイドマンのプレイのほうが印象に残るということは、それだけヴィックの主役としての押しが弱いことの裏返しといえるのだ。 ヴィックには悪いが、彼はどちらかというと、イモなプレイヤーだ。 メロディアスにフレーズを組み立てていることは分かるが、全体的に一本調子でノッペリとした印象は拭えない。 また、タフさで鳴らすR&B系テナーにしては、堅さや勢い、突っ込みが足りず、そのぶんスイートなまろやかさはあるが、やはり、パットン、グリーン、ミッチェルといった“音が立つ”プレイヤーを3人も向こうに回すと、存在感に翳りがさすことは否めない。 しかし、この3人の存在に救われていることも確か。 おそらく、ワンホーンの作品だったら、2〜3曲聴くだけで、早々と「飽き」がきてしまいそう。 つまり、ヴィックのテナー1本だけだと、どうしても聴き手の集中力を持続させられるだけの内容が乏しいことが容易に想像できるからだ。 しかし、さすがはブルーノートの巧みな人選。先ほどイモと書いたが、イモでも調理の仕方次第では、おいしく味わえる、極上の味付け係が加わった。 言うまでも無く、オルガンのパットン、トランペットのミッチェル、ギターのグリーンの3人だ。 彼ら演奏の引き締め役がいるからこそ、ヴィックの持ち味が生き、同じフィーリングのプレイを違う楽器がするからこそ、一貫したテイストが維持される。 R&B畑出身のヴィックのプレイは、アーシー、ブルージーと形容すれば聞こえは良いが、同じB級臭の漂う、たとえばドン・ウィルカーソンよりは、もう少し小粒な印象がすることは否めない。 独特のホゲホゲした音色と、ヘロヘロとしたフレージングは愛らしいが、引き出しの少なさが彼の小粒感に拍車がかかっていると感じる。 しかし、だからこそいいのだ。 ヴィック一人が浮くことなく、脇を固めるミッチェル、パットン、グリーンらの個性が生き生きと浮き彫りになり、アルバム全体をダラけることなくグッと引き締めているのだから。 人選に加えて加えてアレンジも、ヴィックを底上げするための重要な要素。 テーマをはじめ、演奏の要所に「キメ」が設けられていることが、聴き手を退屈させない大事なフックとなっている。 たとえば、1曲目。 各人のソロの終わりに、次のソロ奏者へと橋渡しするためのアンサンブルと、次の奏者にソロオーダーのバトンが渡った瞬間のブレイクが効果抜群。 期待感が高まり、なおかつ次のソロ奏者の存在を効果的に印象づけることに成功している。 ある意味、このアルバムの参加メンバーの紹介スペースの役割も果たしており、こうしたアレンジの曲をアルバム冒頭に配したセンスは素晴らしい。 唯一《ローラ》のみ、ミッチェルとグリーンが抜け、ワンホーントリオによる演奏。特に凝ったアレンジも施されておらず、この曲は、ヴィックの独壇場となっている。 あくまでマイペース、呟くようにしみじみとしたプレイに徹するヴィックの《ローラ》は、それなりに味はある。 しかし、ヴィックのみに焦点を当てたナンバーはこの1曲で十分だったともいえる。 全体の流れの中盤に《ローラ》を配するという、流れにメリハリをつけた選曲も素晴らしい。 リーダーにしては、存在感と力量が不足気味のヴィックかもしれないが、リーダー作としてキチンと聴き通せる内容に仕上げたプロダクト能力は、さすがブルーノートといったところだ。 |
| (2007/09/01) |
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