SARAHE VAUGHAN AT MISTER KELLY'S (Mercury)
- Sarah Vaughan

  1. September In The Rain
  2. Willow Weep For Me
  3. Just One Of Those Things
  4. Be Anything But Darling Be Mine
  5. Thou Swell
  6. Stairway To The Stars
  7. Honeysucle Rose
  8. Just A Gigolo
  9. How High The Moon
  10. Dream
  11. I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter
  12. It's Got To Be Love
  13. Alone
  14. If This Isn't Love
  15. Embraceable You
  16. Lucky In Love
  17. Dancing In The Dark
  18. Poor Butterfly
  19. Sometimes I'm Happy
  20. I Cover The Waterfront

Sarah Vaughan (vo)
Jimmy Jones (p)
Richard Davis (b)
Roy Haynes (ds)

1957/08/06-08

1957年8月6日、シカゴのジャズクラブ「ミスター・ケリーズ」にて録音されたサラ・ヴォーンのライブ盤だ。

当時の彼女は33歳。この時点で、デビューから10年以上のキャリアを積んでいる。ピアノトリオをバックに余裕たっぷりに歌うサラは、もうベテランの風格だ。

このアルバムの目玉(?)は、なんといっても《柳よ泣いておくれ》で、ピアノソロの合間に、マイクを間違えて(?)蹴飛ばすところだろう。
自分のコーラスが来ると、咄嗟に歌詞を変えて、そのことをジョークとしてサラは歌う。
客席が、どっと笑い声で湧く。

“演出説”もあるにはあるが、この一幕がライブな感じをより一層高めていることには間違いない。

ちょっとしたヴォーカルファンには、「マイクを蹴飛ばすアルバム」といえば、「ああ、ケリーズね」と返ってくるぐらい、この箇所は有名だ。
サラの観客を引きつけるショーマン・シップの発揮っぷりは楽しいし、あくまで、曲を大切にじっくりと歌いこむ姿勢には、思わず観客ならずとも引き込まれてしまう。

個人的には、《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》が興味深い。
エラ・フィッツジェラルドの名盤、『エラ・イン・ベルリン』において、エラが観客を沸かせに沸かせた《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》を、ここではサラもチャレンジしている。
サラもエラに倣ってか、曲の中盤からはスキャットで歌っているるが、スキャットの出だしのフレーズがエラとそっくりだ。

彼女に敬意を払ってなのか、それとも、このフレーズを出だしとして使えば、その後の滑り出しが良いのかは分からないが、いずれにせよエラの同曲を聴き比べてみるのも面白い。

楽しさと、味わいのバランスの取れた好盤といえよう。
ジャズ・ヴォーカルの入門盤としても最適だと思う。

バックがピアノトリオというシンプルな編成なので、ビッグバンドをバックに歌うジャズヴォーカルはゴージャス過ぎてどうも苦手だという人(意外に多いのです)も安心して聴ける内容だと思う。

このアルバム、オリジナル・アルバムは9曲の収録だったが、後に未発表曲が11曲も発見され、現在CDで発売されているバージョンは、20曲収録されたお得版となっている。

したがって、これ一枚を買えば、しばらくはこれ一枚だけでサラ・ヴォーンを楽しめるという、満腹盤でもある。
私なんて、これを買った後の数週間は、ヴォーカルといえば、こればかりかけていた。

なんといっても、多くのジャズマンが演奏している有名なスタンダードが目白押しなので、歌詞付きの原曲を知るには格好のテキストにもなることだろう。
色々な意味で、おいしいアルバムだ。
(2004/05/09) 


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