BEYOND STANDARD (Universal Classics) |
| - 上原ひろみ |
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上原ひろみ (p) Dave "Fuze" Fiuczynski (g) Tony Grey (b) Martin Valihora (ds) 2008年 |
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こんなもんジャズじゃない! いや、これこそ現代のジャズだ! 私の周囲に限っての反応なのかもしれないが、賛否両論うずまくアルバムではある。 ギターのデイヴ・フュージンスキーの役割、演奏面についての賛否両論も多く耳にする。 否定派の意見は、やはり、「こんなギタージャズじゃねぃ!」という感想が圧倒的だ。 あるいは、ギターとバックのバンドとのバランスが悪いんじゃないか? という指摘もある。 肯定派は、「ギターはエキサイティングだし、プログレ感覚でも聴けるからイイじゃないか」という意見が多い。 むしろ、ジャズジャズせずに、幅広く音楽を聴いている人ほど、このような感想を抱いてるように感じる。 どちらの言い分も一理あるし、私は両方の感じるところがよく分かる。 前者は自分の中にある「ジャズとはこういうものだ」というイメージを大事にしたい人なのだろうし、後者の場合は、必ずしも「ジャズ」という枠組みのようなものにとらわれず、「刺激的な楽器ミュージック」が好きな人なのだろう。 最終的には好き嫌いの問題なんだけれども、『ビヨンド・スタンダード』を認めるか認めないかは、受け手の感性の、受容キャパの大きさで決定されるのだろう。 過去の経験と照らし合わせた上で、安全地帯に収まる音のみを良しとするか、それとも、外れた地点の音にも興味を示し、面白がれるか。 おそらく否定派に、このアルバムの面白さを言葉を尽くして説明しても、通じないだろう。 では、私はどうなのかというと、どちらかというと肯定派、です。 いいんじゃない? エキサイティングで、楽しくて。 もっとガンガンやっちゃって!って感じ(笑)。 ギターがうるさい? バランス悪い? いいじゃない、いいじゃない、カッコいいし。 ギターが上原ひろみのピアノを喰っている? いいんです、食っちゃっても。 だって、このアルバム、上原ひろみのリーダー作のように見えるが、実際は上原リーダーの“ヒロミズ・ソニックブルーム”っていうバンドのアルバムなのだから。 ギターのヒュージンスキーよ、思う存分暴れてくれ!って感じ。 彼らはきっと、“いわゆるジャズ”をやろうとしている意識は毛頭無いと思う。 あったとしても、ウイントン・マルサリスのように、ジャズの歴史や伝統が……、といった重さは決して背負ってはいないことだろう。 もっと広い意味で、音楽をやろうとしているのだろう。 それが証拠に、付属のDVDを見てごらん。 楽しそうに、奔放に友達(=鍵盤)と戯れる上原の姿。 今やりたいこと、今弾きたいことを、今沸き起こる衝動を音としてアウトプットをすることのみに没頭しているかのよう。 これでいいのだ。 おそらく、このアルバムに眉をひそめる方は、タイトルの「スタンダード」という言葉に引っ掛かりを抱くからかもしれない。 「《朝日のようにさわやかに》? どんな“解釈”でアプローチしているんだ?」 無意識に、過去に演奏された同じ曲が意識の俎上に乗せられているのかもしれない。 そして、「こんなん、全然《朝日のように》じゃないじゃん!」となってしまうのかもしれない。 たしかに、上原流のアプローチだし、私も、この解釈が従来のスタンダード解釈を“ビヨンド”しているとは思わない。 しかし、こういうアプローチもアリだと思っている。 試しに、このアルバム、中古屋に売り飛ばさずに、10年後に聴き返してごらん。 きっと、最初に聴いたときの違和感がなくなっているはずだから。 最初に感じた違和感が強ければ強いほど、後々好きになる可能性も高いし、自分の中の価値基準が揺さぶられることも多いから、時間が経てば「フツーにイイじゃん」に変わっているかもしれないのだ。 すべてのジャズが、一度や二度聴いただけで理解できるわけでも、楽しめるとは限らない。 ときには時間をかけて寝かせる必要があるアルバムだってあることだろう。 もっとも、自分はCDを寝かせているつもりでも、実際は自分がCDに寝かされているといったほうが正解かもしれない(笑)。 CDのほうが聴き手のセンスが育つことを、じっと待ってくれているのだ。 |
| (2009/11/13) |
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