NORTH BIRD (King) |
| - 寺久保エレナ |
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寺久保エレナ (as) Kenny Barron (p) Peter Bernstein (g) #3,9 Christian McBride (b) Lee Pearson (ds) 2010/03/28,29 |
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驚いた。 女子高校生アルトサックス奏者・寺久保エレナの出現は、矢野沙織が登場したとき以上の驚きかもしれない。 たしかに矢野沙織が《コンファメーション》などのパーカーナンバーを引っ提げて登場したときは、その楽器の演奏技術や、骨の髄までバップに心酔した者にしか醸し出せないニュアンスには舌を巻いたものだが、どこまでも演奏に漂う「先人にへのリスペクトの念」が、ときにストイックな堅苦しさも漂わせていたことも事実(そこがまた、ストイックなジャズファンにとってはたまらないのだが)。 しかし、寺久保の場合は、少なくとも彼女が出す音からは、そのようなストイックさは感じられず、もっと自由で奔放。あけっぴろげな解放感と、突き抜けてゆくスピード感を感じる。 なにしろ、巧くて、旨いのだ。 「巧」と「旨」が両立していること。 これはつまり、テクニックはもちろんのこと、きちんと聴かせる内容で演奏しているということにつきる。 たとえば、冒頭の《イエス・オア・ノー》を聞いてみるとよい。 ケニー・バロン、クリスチャン・マクブライド、リー・ピアソンら、ジャズ本場の一流リズムセクションによる、変化自在で肉厚なリズムの貢献ももちろん大きいのだが、百戦錬磨の彼らに翻弄されることなく、あくまで自分のペースで世界を組み立ててゆく寺久保エレナのアルトサックスの堂々っぷりが頼もしい。 アルトサックス奏者は女子高生だということを知らせずに、ジャズマニアに聴かせれば、思わぬ大物サックス奏者の名前が出てくるかもしれない。 私の場合は、特に快速調の《イッツ・ユー・オア・ノー・ワン》を聴くにつけ、クリーミーな音色で、スルスルと次から次へと淀みなくフレーズが生まれてくる様は、スタイルこそ違えど、ソニー・クリスに通ずる気持ちよさを感じた。 ハービー・ハンコック、ハンク・ジョーンズ、日野皓正、渡辺貞夫、山下洋輔、タイガー大越をはじめ、国内外の大物ジャズマンからも絶賛を受けるのも当然だろう。 たしかに、細かいところをト突つけば《マイ・フーリッシュ・ハート》のようなバラードはもう一歩踏み込んだ深さが欲しいとも思うが、こういう年季がないと成し得ない表現は、時間が自然と解消してくれることだろう。 そして、メリハリやアーティキュレーションが少々オーバー気味なバラード表現も、現時点での彼女のリアルタイムな気分であり、それはそれでストレートに受け止めるに十分な内容ともいえる。 1曲目の《イエス・オア・ノー》最高、ジョー・ヘンダーソンの《ブラック・ナルシサス》もいい。 私は、この2曲を聴き、曲目を知らぬまま、《ステイブル・メイツ》もこの勢いでやって欲しいな、などと考えていたら、本当に収録されていたことも嬉しい驚きだった。 彼女の音色、スピード感、フレーズのメリハリなど、まさに《ステイブル・メイツ》が相応しいナンバーだと思う。 プロデューサー、あるいは彼女自身も、現時点での実力、表現レンジを熟知しているのだろう。 もっとも、ジャケ写のアート・ディレクションはいまひとつだが……(笑)。 ガングロ(顔黒)のアフロ女子高生が革ジャンで「よっこらしょ!」なアー写は、一体どの層をターゲットにしているのだろう? これでは“ノース・バード”ならぬ“サウス・ホンカー”ではないか(笑)。 国籍不明な過剰スタイリングを施すよりも、私はライナーにうつる自然体女子高生のままのジャケ写のほうが良かったのではないかと感じる。 それはともかく、次回作にもますますの期待を抱かせる大型新人の登場だ。 ちなみに、アルバムタイトルにもなっている《ノース・バード》は山下洋輔が彼女のために書き下ろしたナンバー。 「北の鳥」。いや、「北のチャーリー・パーカー」か? いずれにしても、北海道で生まれ育った自由奔放なアルトサック奏者に相応しいネーミングだ。 |
| (2010/07/20) |
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