KARMA (Impulse) |
| - Pharoah Sanders |
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Pharoah Sanders (ts) Julius Watkins (frh) James Sqaulding (fl) Leon Thomas (vo,per) Lonnie L.Smith Jr. (p) Richard Davis (b) Reggie Workman (b) William Hart (ds) Nathaniel Bettis (per) 1969/2/14 NYC |
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Pharoah Sanders (ts) Julius Watkins (frh) Leon Thomas (vo,per) Lonnie L.Smith Jr. (p) Ron Carter (b) Frederick Waits (ds) 1969/02/19 NYC |
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ジョン・コルトレーンが亡くなった2年後に録音されたファラオ・サンダースの『カルマ』が大好きだ。 コーヒーよりも、アルコール入りの飲み物が似合う。 それもビールやウイスキーよりも、泡盛がもっともこのサウンドに似合う酒だと私は確信している。 難しいことはなにも考えず、快楽的なサウンドの洪水に溺れるのがもっとも正しい鑑賞法だと思っている。 この『カルマ』というアルバム、誤解を恐れずに言えば、ジョン・コルトレーンの『至上の愛』をベースに音のスケールと快楽度を増した作品だ。 ファラオ・サンダースは、晩年のジョン・コルトレーンのグループに参加していただけあって、スピリチュアルな部分は多いにコルトレーンから感化され、その手ごたえを自分なりに昇華させようとしたのだろう。 コルトレーンの精神的な部分をしっかりと継承し、自分なりの音を打ち出そうとする姿勢がひしひしと伝わってくるのが『カルマ』なのだ。 ストイックで一点に凝縮してゆくような高密度の『至上の愛』に対して、ファラオの『カルマ』は、どこまでも快楽的で、様々な音が宙空に拡散してゆくような開放感を感じる。 出だしのベースのリフからして、『至上の愛』の《承認》のラインを裏返しにしたようなニュアンス。 このシンプルなリフを土台にそれぞれの楽器が音を紡ぎあげてゆく。 手法はコルトレーン流モードを継承しているが、音の肌触りはまったく違う。 先述したように、コルトレーン的ストイックさとは裏腹の快楽主義的な楽園的サウンドが放射されてゆくのだ。 複数のパーカッションとフルートが加わり、音の色彩感が豊かになり、フリージャズっぽいん局面も表出するにもかかわらず、漂うトーンはどこまでも牧歌的。 トランス状態に違いないと思われるレオン・トーマスのヴォーカルも陶酔の境地に誘う。 まさに、人力・悦楽トランスミュージック。 ジャケットで、陶酔した表情で瞑想するファラオ。 赤っぽい照明を浴びながら、悟りを得ようと、ヨガの行者のごとく両手を広げ、宇宙と一体になるかのようなポーズのファラオ。 ファラオの脳裏に浮かぶ極楽ユートピアが、まさにこのようなサウンドなのではないだろうか。 途中で挿入されるファラオのテナーサックスの咆哮も、良いスパイスとなり、とにもかくにも心地よさのテンコ盛りの音楽なのだ。 壮大でスケールの大きいサウンドなことは間違いない。 しかし、そこはかとなく漂うB級感も、これまたこのアルバムの魅力でもあるのだ。 シャンシャン・シャカシャカシャカと終始心地よくなり続ける鈴の音色や、ピロピロと軽やかに舞い続けるフルートの味付けを砂糖とするならば、ときおり現れるファラオのブギャー!は、ピリッとした塩味。レオン・トーマスのコテコテなヴォーカルは油の成分。 つまり、コテコテなトンコツ風味のラーメンの旨さに近いものがある。 たとえば、六本木や渋谷に行くと、辛さ・油っこさ・スープの濃さなど、客の好みで細かなリクエストを受け付ける「一蘭」というラーメン屋さんがある。 一度、実験的に、すべてにおいて極端な味付けを注文をしてみたことがある。 油の量、スープの濃さ、辛子の量など、すべてをマックスにしてもらったら、お菓子のような味のラーメンだった(笑)。 喩えるならば、「うまい棒」のような。 砂糖と塩が極端に盛り込まれれば盛り込まれるほど、スナックや駄菓子チックな味になるのだと感じた。 もちろん、私は豚骨ラーメンも、極端な味付けの「一蘭」のラーメンも、うまい棒やキャベツ太郎のようなB級スナック菓子も大好きだ。 それと同様、極端にコテコテで、極端に甘口で、極端にコレクティブ・インプロビゼーションによる辛口な部分が、ごちゃ混ぜ状態に共存している『カルマ』が大好きなのだ。 食べ物ついでにもう一つ。 怪し気だが、とても良い味出しているレオンのヴォーカルは、まるでコーヒーに入れ過ぎたクリープのようにマイルド過ぎて牛乳臭い。 ま、入れすぎたクリープの匂いも、たまにはキライじゃないですけどね。 とにもかくにも、1曲目の《ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン》は、甘さと塩っぱさの落差が激しい、うまい棒のような駄菓子屋で売っているお菓子のようなテイスト。ま、スケールの大きなお菓子ではあるけど。 しょっぱい・甘い。 この2つが交互に繰り返されて、怖いぞー!極楽だぞー!なわけですが、うん、とても特撮的というか怪獣映画的というか。 最近のCGなどを駆使した手のこんだ特撮ではなく、「シンドバッドの冒険」などで「B級リアル」な腕をふるったレイ・ハリーハウゼンの世界観に近いものがある。 もちろん音だけで描かれた世界だが、非常にビジュアリスティックな音楽なのだ。 スケールが大きいサウンドではある。 しかし、あまりに大雑把にスケールが大きすぎると、かえって、そのスケールに耐性が出来てしまい、「最初鳥肌・最後は笑い」のコースを歩んでしまいがちなことも確か。 たとえるならば、新宿の東口に立っている映画の看板のような(笑)。 ここの看板は、すごくペイントが下手なんですよ(笑)。 いや、けなしているわけじゃありません。下手くそな看板には下手くそな絵なりに、「あの俳優の顔、気持ちは分かるけれども、全然似てねぇじゃん(笑)!」とウォッチングする楽しみがあるからね。 デッカいサイズの看板の中、描かれる映画の宣伝ビジュアルが、デッサンも色彩もどこか崩れていて、ホンモノに似ている、似ていないの次元を超えた、味のあるB級アート的な趣きさえあるのだ。 ファラオの瞑想音楽『カルマ』は、限りなくこのテイストに近い。 大雑把で大袈裟ゆえの大味というか。 もちろん、そこが素晴らしいのだけれども。 話はちょっと飛ぶが、ファラオの『カルマ』や、コルトレーンの『アセンション』など、フリーがかった“大作主義”の作品を聴くと、否が応でも「演出」について考えてしまう。 そう、これらの作品を聴くと、「小出しの重要さ」のようなものを逆説的に気づかせてくれる。 『ジョーズ』も『エイリアン』も後半になるまで、なかなか姿を現さないゆえの怖さってあるじゃないですか? 何から何まで小出しにしたり、ほのめかしたりすれば万事OKという訳ではないのだが、マイルス・デイヴィスなんかはそのあたりが非常に上手な人だったんだなと思う。 コルトレーンやファラオなどとは違った意味で壮大でスケールの大きな音楽の創造主というと、どうしてもエレクトリック楽器の導入以降のマイルスの存在を思い浮かべてしまう。 しかし、マイルスの場合は、ファラオやコルトレーンとは好対照。 同じ「スケールが大きい」でも、表現のベクトルがまったく違う方向に向いている。 一度に全部を出さない。 一度に全部を見せようとしない。 ほのめかしが巧い。 じらしが巧み。 良く言えばペース配分が巧く、悪く言えば「ケチ」(笑)。 特に、エレクトリック路線になればなるほど、マイルスは、ますます、この「ほのめかし」と「小出し」の演出テクニックが巧くなってくる。 本当は、何もないかもしれないくせに、「本当はもっとスゴイものが隠れているんだぜ」とばかりに、聴き手にほのめかすチラリズム。 切り札を持っていないのに、持っているように臭わせるギャンブラー的なブラフ。 核弾頭など搭載していないのに、世界中に「もしかしたら、原潜やまとは核を持っている可能性も否定できない」と、まんまと思わせることに成功した『沈黙の艦隊』における海江田四郎艦長並みのハッタリの効かせるテクニック。 この頭脳戦的したたかさがマイルスにはある。 それに比べて、ファラオは正直だ。 手持ちのカードを最初の段階ですべて公開してしまう(笑)。 「これが俺の言いたいことすべてだ!」とばかりに、最初から裸になってすべてをさらけ出す。 カバンの中の荷物を路上にドバーッと並べる。 最初は、「おお、すげぇ」と驚くかもしれないが、この驚きは長続きするものではない。 しかし、このファラオの真っ正直な不器用さが、逆に好感を持てたりもするのだから面白い。 マイルス流・巨大スケールの演出も、ファラオ流・巨大スケールの演出も、私は両方好きなのだが、マイルスが演出する興奮度は、どちらかというと神経が覚醒していたほうが良い。 ゆえに、『ビッチェズ・ブリュー』には酒よりもコーヒーが似合う。 一方、ファラオの『カルマ』には、コーヒーよりもやっぱり、泡盛。 張りつめた神経をホグした上で、ドバーっと押し寄せる気持ちの良い音の洪水に身を任すには泡盛が最適。 『カルマ』は極上の泡盛ミュージックなのだ。 ジャズに泡盛は相応しくないということで、泡盛禁止のジャズカフェが沖縄にあるが、どうしても泡盛を飲みたいお客には泡盛と『カルマ』をセットで提供すると良いんじゃないかと思う(笑)。 もっとも、「ジャズカフェ」ではなく「トランスカフェ」になってしまうかもしれないけど……。 |
| (2005/03/08) (加筆修正 2009/11/03) |
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