HORACE SILVER TRIO (Blue Note)
- Horace Silver

  1. Horescope
  2. Safari
  3. Thou Swell
  4. Quick Silver
  5. Ecaroh
  6. Yeah
  7. Knowledge Box
  8. Prelude To A Kiss
  9. I Remember You
  10. Opus De Funk
  11. Day In, Day Out
  12. Silverware
  13. How About You
  14. Buhaina
  15. Mesage From Kenya
  16. Nothing But The Soul

#1-3
Horace Silver (p)
Gene Ramey (b)
Art Blakey (ds)
1952/10/09

#4-8
Horace Silver (p)
Gene Ramey (b)
Art Blakey (ds)
1952/10/20

#9-14
Horace Silver (p)
Peacy Heath (b)
Art Blakey (ds)
1953/11/23

#15-16
Art Blakey (ds)
Sabu (conga)
1953/11/23

ホレス・シルヴァーの曲やプレイはファンキーと形容されることが多いが、彼の初期の演奏には、その萌芽はあるものの、露骨にファンキー臭が漂うものは、じつは少ない。

最初の出発点は、バド・パウエルからだった。

しかも、パウエルのもろコピーと言っても過言ではないほど、初期のホレスのアルバムを聴くと、パウエルの影響が認められる。

たとえば、1曲目のアドリブなんかが顕著。アドリブの中に、パウエルの《異教徒たちの踊り》がポロリと出現したりする。

これは、「最初はパウエルのようなメカニカルなラインが好きだったし、得意だった」と、ホレス・シルヴァー自身も述懐している。

後年の“ファンキー”と形容される曲作り、プレイスタイルになったのは、ブルーノートのプロデューサー、アルフレッド・ライオンからの助言が大きい。

もっとブルージーに弾け、
もっとソフトに弾け。

これが、ライオンからシルヴァーへのアドバイス。

忠実に従ったホレスは、後の《ソング・フォー・マイ・ファーザー》のヒットにつながる作風を獲得するのだ。

しかし、初期のパウエル的、硬質&メカニカルなタッチも捨てがたい。
というよりも、私は、この時期のホレス・シルヴァーのほうが、好きだ。

ただでさえ、ポキポキとした硬質なピアノの音色に加え、パウエル的なフレーズが弾かれると、そこには、パウエルとはまた違った質の緊張感に満ちた世界が展開される。

この時期のホレスも、アタリマエだが、リズム感は良い。
ノリも抜群。

ただし、ファンキーと呼べる、和やかなノリとはまた違った、畳み掛けるような、なにかにせきたてられるようなノリが特徴的だ。

ドライブ感、と表現したほうが適切かもしれない。

とくに名曲の誉れの高い《オパス・デ・ファンク》などは、彼の堰きたてるようなドライブ感を活かした作りとなっている。

ジャケットではワケ分からんポーズで陽気なホレスも、演奏のほうは案外、緊迫感に満ちている。
あの、笑顔とポーズを象徴するような内容は、むしろ、水色版の『ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ』のほうでしょう。

もうひとつの聴きどころは、《ケニアからのメッセージ》。
アルバム後半に収録された、ホレス抜きのサブーとブレイキーの打楽器バトルだ。
聴くたびに熱き血が滾る。
(2010/05/29) 

ブルーノートからは、ホレス・シルヴァーが「わけわからんポーズ」をしているジャケットのアルバムが色違いで2枚出ている。
水色の『ホレス・シルヴァー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズ』と、今回取りあげるオレンジ色の『ホレス・シルヴァー・トリオ』だ。

この写真のポーズ、あまりにも決まりすぎていて、パッと見はなんとも思わないが、よく見ると、一体どういう意図で誰に向かって何を意味するポーズなのかと謎が深まる。
そして、この妙に嬉しそうな笑顔。
あまりにもジャケットに溶けこみすぎているために「普通のポーズと表情」に見えてしまうが、鏡の前で真似をしても、なかなかこの写真のようなポーズが取れない。
何人かの人にもこのポーズと笑顔をやってもらったが、わざとらしさとギコチ無さが漂ってしまい、なかなかジャケットの通りの絵を撮ることが難しいということが分かった。
というか、暇ですね、私って……。

余談はさておき、このトリオは、ホレス・シルヴァーの初期の演奏だ。
後年、ファンキージャズの第一人者として認知されるシルヴァーだが、すでにこの頃から、ビ・バップのテイストの中からも卓越したリズム感の良さを聞き取ることが出来るし、シルヴァーの大きな特徴の一つ、畳み掛けるようにドライブするピアノも味わえる。
また、彼お得意の“調整の合ったフレーズを弾いた後に、同じフレーズを半音ずらして調子をわざと外したメロディを繰り返す手法”も聴けて嬉しい。

しかしそれ以上に、このアルバムを聴いて興味深いのが、初期のシルヴァーは、かなりバド・パウエルの影響を受けていることが分かること。
ポキポキと歯切れ良く進んでゆく右手のフレーズや、左手のリズミックな和音はシルヴァーならではの持ち味だが、ちょっとダークなフィーリングといい、フレーズの合間にチラリと顔を出すフレーズを聴くと、バド・パウエル の影響を濃厚に受けていることが分かる。
特に、1曲目の《ホレスコープ》のアドリブには、パウエルの《異教徒たちの踊り》のテーマが自然発生的に顔を出すので、シルヴァー個人は、パウエルの曲を相当練習したのではないかと推測出来る。

だから良いとか悪いとかを論じたいわけではなくて、興味深いのは、「パウエル派」の筆頭とされる、バリー・ハリスやケニー・ドリューの初期の作品よりも、パウエル色を強く感じるところが面白いなと思うことの一つ。
バリー・ハリスやケニー・ドリューのほうが出てくるフレーズはパウエル色が強い(というより、そっくりそのまま)にもかかわらず、ダークなフィーリングの漂うシルヴァーのピアノの方にパウエル色を強く感じてしまうことが、2つ目に興味深いこと。
そして、パウエルを感じつつも、単なる「人真似」で終わらず、きちんとシルヴァーならではのオリジナリティも同時に感じること。
その先人からの影響と、オリジナリティの絶妙なバランスが3つ目に興味深いことだ。

名曲《オパス・デ・ファンク》も収録されていることも嬉しいが、シルヴァーのピアノをたっぷりと味わうには、これほど最適な盤もないだろう。
ラストの二曲を除けば、ピアノトリオのフォーマットで14曲の演奏。
一曲一曲の演奏時間が短いこともあるが、私は、最初から最後まで飽きることなく一気にいつも聴いている。こちらの耳を捉えて離さないだけの「力」がホレスのピアノにはあるのだ。

ラストには、シルバーが抜けたアート・ブレイキーのドラムと、サブーのパーカッションによるデュオが収録されている。
《メッセージ・フロム・ケニヤ》だ。
この演奏も豪快で中々気持ちよい。
(2003/04/13) 

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