FURTHER EXPLORATIONS (Blue Note)
- Horace Silver

  1. The Outlaw
  2. Melancholy Mood
  3. Pyramid
  4. Moon Rays
  5. Safari
  6. Ill Wind

Horace Silver (p)
Art Farmer (tp)
Cliff Jordan (ts)
Teddy Kotick (b)
Louis Hayes (ds)

1958/01/13

『ファーザー・エクルプロレーションズ』は、「肩の凝らない意欲作」として、私はけっこう愛聴している。
このアルバムは、ホレス・シルヴァーのブルーノート5枚目のリーダー作だ。
「未来への探求」という意欲的なタイトルが冠せられている。

とはいえ、来たるべきモード奏法を先取りした斬新過ぎるサウンド、アレンジというわけでもなく、どちらかというと、従来のハードバップ・テイストを少しだけ新しい切り口で推し進めた内容といったほうが良いだろう。
シルヴァーがこれまでに演奏し続けてきたハードバップ・ジャズに、シルヴァーならではのファンキー的なニュアンスで味付けほ施し、半歩、いや、1/3歩ほど、新しい試みやサウンドテイストに踏み出した「微妙に新しいハードバップ」というのが、もっとも適切な形容かもしれない。

どのナンバーも、親しみやすく聴きやすいものばかり。

しかし、シルヴァーが時々陥ってしまう、トゥー・マッチなほどにキャッチーなナンバーはここにはなく、メロディアスで親しみやすくあるが、かといって露骨なほどに砂糖がまぶされてはいない「微糖」な味わいが、このアルバムの底に一貫して流れるテイストといえよう。

これは、ちょっとしたアレンジの冒険ともいえ、特に1曲目の変則調などは、露骨ではないにせよ、今までの流れの中に、少しだけ新しい試みを付加してみました、という感じ。
聴き手の鑑賞の楽しみを奪うことなく、音楽性を保った状態で、新しい試みを付加していこうというシルヴァーの前進意欲と、常にリスナーのことを考えるサーヴィス精神が、うまく溶け合った一例だろう。

つまり彼のサーヴィス精神とは、ホレス・シルヴァーを求めるファンには、常にホレス・シルヴァーであり続けること。
ファンが求める自身の音楽のテイスト、ツボを熟知しているがゆえに、この基本テイストは決して破壊することなく、だからといってワンパターンに陥ることも潔しとせず、微速前進を繰り返していた音楽家が、ホレス・シルヴァーという音楽家であり、彼の一環した音楽人生に貫かれた美学なのかもしれない。
だからこそ、聴き手に「ああ、いつものホレス・シルヴァーね」「どこをどう切っても、やっぱりホレス・シルヴァーだ」という、安定したテイストを提供しつづけ、それが結果的に、聴き手に安心感をもたらす。そして、改めてよく聴くと、確実に前作よりは音楽が進化、ときには深化していることが、少し後になって気付く。

つまり、一見マンネリに感じられるかもしれないが、じつはマンネリとは呼ばせないサムシングが必ず注入されているということ。

微妙に音楽性を深化させてゆく音楽家、ホレス・シルヴァーは、マイルス・デイヴィスのように劇的な変貌を遂げ、場合によっては旧来のファンが離れてしまうような結果には陥らず、好きな人はずっと好き、興味ない人はずっと興味がないという、どこを切っても分かりやすい音のトレードマークを常に有しているのだ。

シルヴァーの音楽が、この時期、緩やかな微速前進を続けるのに貢献したもっとも大きな存在は、おそらくはアート・ファーマーがシルヴァー・クインテットのメンバーだったことが大きいだろう。

彼の理知的なトランペットは、ベタベタ感が希薄ゆえ、良い意味で抽象的な音風景を描くのに適している。
もちろん表現内容が冷たいというわけではなく、時として熱いプレイも繰り広げるが、暑苦しいプレイは一切しない。どの演奏にも必要以上に匂いをなすりつけない。だからこそ微妙な音楽的変化にも軽妙についてゆけたのだろうし、前作『スタイリング・オブ・シルヴァー』とテイストは似てはいつつも、微妙に違う、しかし劇的な変化ではない、聴き手の感性を置いてきぼりにするほどの急速な変化ではなく、充分に追いつける範囲での微妙な変化をそつなくこなせたのだろう。

《ソング・フォー・マイ・ファーザー》、《シスター・セイディ》、《セニョール・ブルース》のように、アルバムのトレードマークになるような強烈にキャッチーな曲は『ファーザー・エクスプロレーションズ』にはないが、結局最後まで、なんの抵抗もなくスッと聴けてしまう、いや、聴かされてしまうのは、ひとえにシルヴァーの優れたイマジネーションや音楽性、そして、それを具現化できるファーマーをはじめとした演奏者が彼の片腕に存在していたからにほかならない。

余談だが、私はこのアルバム、ブルーノート1500番台にしては珍しい4色(カラー)ジャケットになっているので、私はしばらくの間、4000番台の作品だと勘違いしていた。
ブルーノート1500番台には4色印刷のジャケットは数えるほどしかないので、「1500番台=モノトーン」というイメージが定着していたのだろう。
(2011/02/22) 

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