UNDER PARIS SKIES (Futura)
- Freddie Redd

  1. Diane I Love You
  2. Bleeker Street Blues
  3. To Bud With Love
  4. This Heart Is Mine
  5. You
  6. My God Is Love

Freddie Redd (p)
Didier Levallet (b)
Didier Carlier (ds)

1971/06/26-29

嗚呼、なんてセンチメンタルなんだろう。
沈鬱で物悲しい曲と演奏が続く、フレディ・レッドの『アンダー・パリ・スカイズ』。

カバン一つに荷物をまとめ、アメリカから家出(?)をしてきたレッドが、エッフェル塔がうすボンヤリと見えるパリの曇り空の下で、途方に暮れているようなジャケット写真。

写真の周りの緑がかった青が、白黒写真の「曇り空感」をより一層引き立てている。
そして、このジャケットの雰囲気同様、中身の演奏も「曇り空」だ。
それも沈鬱で、熱い雲に覆われたような曇り空なのだ。

元より、フレディ・レッドは、哀愁を帯びた曲を書くのが得意なピアニストだと思う。
それがプラスに作用して、素晴らしい名演として結晶したのが、ブルーノートにおける、ジャッキー・マクリーンとの共演盤、『ザ・コネクション』と『シェイズ・オブ・レッド』だ。
レッドの哀感溢れる曲想に、マクリーンの哀愁を帯びたサックスはピッタリとマッチしていた。
そして上記2枚のアルバムが素晴らしいのは、単に「哀愁コンビ」による「センチメンタルな演奏」なだけに終始せず、マクリーン以下、サイドメンの熱演が、ハードバップが持つ特有の熱気と、躍動感を帯びていたからなのだと思う。
センチメンタルな中にも、力強さが秘められた演奏は、「分かる人には分かる」し、本当のハードバップ好きにとっては「クセになったらやめられない」ほどの魅力溢れる演奏なのだ。
今でも、ジャズ喫茶に出入りするような、ハードバップ好きのマニアの間では、秘かに名盤として語り継がれているのではないかと思う。

そして、この『アンダー・パリ・スカイズ』。
このアルバムは、ピアノトリオだ。
しかも、全曲レッドのオリジナル。

さぁ大変だ。

何が大変なのかというと、正しく哀愁を漂わせながらも、「熱気」の部分をも補っていたマクリーンがいないのだ。
ピアノが主役のピアノ・トリオなのだ。
彼の資質が剥き出しになってしまうのだ。
彼特有のセンチメンタルさ、哀感が露骨なまでに放出されるのではないか、という懸念が働く。
そして、結果はその通り。

どこか、抑制の眼差しは演奏に向けられてはいるものの、ときどき激情的までにレッドのセンチメンタルさがこぼれ出ているのだ。

もちろん、レッドからこぼれ出るセンチメンタリズムは上質のものなので、「哀愁のハードバップ好き」にとってはたまらない「美味しさ」を全曲味わえるのだが、それでも、こちらの気分までもがブルーになってしまうほどの、メランコリックさは尋常ではない。

おいおい、レッドよ、パリでなにか辛いことがあったのか!?と、余計なお節介を焼きたくなってくる。
一曲目の《ダイアン・アイ・ラブ・ユー》からして、沈鬱な異国の曇り空が目の前に拡がってくる。
やばい!いきなりメランコリックの渦に呑み込まれてしまう!
などと思いつつも、呑み込まれてしまう快感も知っているので、本当はもっと沈め!と思ってしまう不埒な私……。

全編、レッドならではの哀感のこもった曲とピアノを楽しめ、どの曲も、どの演奏も素晴らしい。
しかし、強いて個人的なベストを挙げるとすると、ベースとピアノのデュオによる《ユー》だ。
この沈鬱で物悲しいピアノといったら!
これほど切ない気分になってしまう曲、演奏もちょっと珍しい。
そして、ベースも力演だ。一音一音に魂をこめて弾いているんじゃないかと思うほどだ。
指板にバチン!と当たる弦の音が生々しく聴こえるほど、力のこもった入魂のベースだ。

アルバム最後の《マイ・ゴッド・イズ・ラヴ》では、途中でぷっつりと何の脈絡も無しに演奏が終わってしまうので、なんだか不安な気分になってしまう。
やっぱり、パリで何かあったのか、レッドよ!?

(2002/05/06) 

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