THE SOLO ALBUM (Milestone)
- Sonny Rollins

  1. Soloscope

Sonny Rollins (ts)

Recorded in concert in the Sculpture Garden of The Museum of Modern Art,New York City
1985/07/19


これを聴いたからといって、天才インプロヴァイザー、ソニー・ロリンズのアドリヴのメカニズムが解明されるというわけではない。
しかし、明らかにこれを聴く前と後では、聞き慣れていたはずのロリンズのフレーズの“聴こえ方”が少しだけ変わってくることも確かだ。

1985年、ニューヨークの近代美術館で行われたライブは、サックス一本だけのライブ。
無伴奏で、ロリンズは果敢に1時間近くのインプロヴィゼーションを繰り広げた。

ロリンズは徹頭徹尾メロディの人だが、彼が繰り出すアドリブのすべてがメロディアスなわけではないという、当たり前な事実に今更ながら気が付く演奏だ。
アルペジオやスケール練習用のフレーズとも思われる、およそメロディアスとは言い難い、抽象的なフレーズの断片も散見される。
エンジンを暖めるための軽い肩慣らし的な音。あるいは、朝礼台の上に立った校長先生が演説を始める前にする「コホン」といった軽い咳払いとでも言うべき、本題に入る前のパフォーマンス。
これらのフレーズの断片は、“歌”というよりは、“呟き・独白”といったニュアンスが強い。ロリンズには意外とこのようなフレーズも多いことに気が付くはずだ。
本当に、その場その場の気持ちで、フレーズを紡ぎ出してゆくタイプの人なのだと思う。

しかし、それらもまた“音楽”として聴こえてしまうのは、ロリンズの勢いのある吹奏と、類い希なるタイミングの良さ、そして思いきりの良い音色からだろう。したがって、矛盾するようだが、非メロディックな旋律も、“音楽的”に聴かせてしまうのは、ロリンズならではの力技にほかならない。そして、それは、彼の類い稀なるセンスとテクニックに裏付けられていることは言うまでもない。

ロリンズの“独白”の隙間からは「アルフィー」や「セント・トーマス」などのおなじみの旋律が、思わぬ瞬間に出てくる。
この先をもう少し聴きたいと思ったところで、別のフレーズへと飛んでいってしまうので、我々は肩透かし状態に陥り、軽い飢餓感がつのる。そして、結果的に我々は次に出てくるフレーズを心待ちにして、否が応でも耳に神経が集中してしまうことになるのだ。

ロリンズの“呟き”が“歌”に変わる瞬間。
この瞬間こそ、我々は圧倒的なメロディの快感を彼のサックスから感じるのだろう。
まるで、散在する一滴一滴の水が一箇所に寄り集まり、いつしか大きなメロディの大河が形成されてゆく様に我々は立ち会っているようだ。

そして、このアドリブの組み立て方、フレーズの小出しの仕方は、無伴奏の時も、バックの演奏陣が豪華なときも、自由自在にサックスを媒介として、音空間を自由自在に行き来するロリンズはロリンズのままで、何ら変わることが無いのだ。

(2002/10/22) 

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