TO BE ORNETTE TO BE (NEC Avenue) |
| - Aldo Romano |
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Aldo Romano (ds) Paolo Fresu (tp,flh,YAMAHA SPX90) Franco D'andrea (p) Furio Di Castri (b) 1989/11/13,14 (Paris) |
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私の隠れ愛聴盤。 発売された当時から、よく聴いているアルバムだ。 よって、自分にとってはあまりに日常的すぎて、改めて“ジャズのメルマガ”として紹介することすら思いつかなかったほど、生活の中に溶け込んでしまっている作品なのです。 このアルバムの特徴を一言で? とても舌足らずな表現だけども、とにかく、洗練されていて、知的で、お洒落です、と答えるのがもっとも適当なのかもしれない。 リーダーのドラマー、アルド・ロマーノは、イタリア生まれのフランス育ち。このレコーディングに参加している、ロマーノ以外の3人のジャズマンもイタリア人。 つまり4人のイタリア人による演奏だが、どういうわけか、この香りだつ知的、かつ洒落っ気も感じさせるサウンドは、エスプリの効いたフランス的なテイストを強く感じる。 アルド・ロマーノは、ミッシェル・ペトルチアーニ(p)の初期のアルバムに参加しているドラマーだと言えば、「ああ、なるほど」と思い出す方もいらっしゃると思う。 ペトルチアーニを世に送り出したのも、じつは彼。 活動歴は古く、そうそうたるキャリアの持ち主でもある。 カーラ・ブレイとマイケル・マントラーのアルバムにも参加していることからも分かるとおり、先進性、前衛性にも富んだ感性の持ち主だということが分かる。 その一方で、本国のアメリカを離れてヨーロッパに渡ってきたジャズマン、たとえば、バド・パウエルやジャッキー・マクリーン、チェット・ベイカー、ケニー・ドリュー、ジョニー・グリフィンらとの共演歴もあり、彼らの多くがバップ、ハードバップのスタイルの持ち主だということを考えると、オーソドックスな4ビートから、先鋭的なアンサンブルまで、非常に幅広いスタイルと、柔軟性に富んだスタイルの持ち主だということがわか る。 彼のドラミングは、スピード感と包容力の共存したドラミングが特徴だ。 このアルバムでも、シンバルの叩き方が、トニー・ウイリアムスを彷彿とさせるドラミングもあるが、まったくトニー的な雰囲気が漂っていないことが面白いといえば、面白い。 かなりのテクニシャンだが、アンサンブル中、ドラムだけが浮き立つことはない。こんなところにも、彼の美意識が垣間見れる。 それに加えて、空間の組み立て方が非常にうまい。 叩き過ぎず、かといって平板で退屈するようなドラミングも一切叩かない。 彼の作り出す快適なリズムと、的確なプッシュが、フロントを心地よく鼓舞するのだ。 『トゥ・ビー・オーネット・トゥ・ビー』。 タイトルからも分かるとおり、このアルバムは、オーネット・コールマンのナンバーに挑戦した曲集だ。 さらに、タイトルは"to be or not to be"にひっかけた言葉だということも分かる。ちょっとしたシャレも効かせているわけだ。 だからといって、面白いことに、このアルバムの演奏すべてが、まったくオーネットっぽくないということが興味深い。 オーネットというドロドロの原液が、知的で鋭く、スマートでスパイスの効いたカクテルに昇華されてしまった。 サウンドの気分はパリ。ヨーロッパ流の洗練、エレガンスを感じる。どう転んでもアメリカではない。 ロマーノ以下3人が繰り出す演奏は、ひたすらカッコいいし、知的にセンス良くまとまったものばかり。 ジャケットも素敵だが、まさにジャケットを象徴するかのようなサウンドともいえる。 トランペットが1本のワンホーン・カルテットの編成だが、単調さはまったく感じず、なかなかメリハリのある演奏となっている。 パオロ・フレズというトランペット奏者、これそ聴くまでは名前すら聞いたことの無いプレイヤーだったが、テクニックといいセンスといい、なかなかの実力を持ったトランペッターだと思う。 軽妙洒脱なライト級トランペッターといったところか。 ミュートをつけ、搾り出すような倍音を鳴らし、1本のトランペットから、2つの音を鳴らしている《W.R.U.》が面白い効果をあげているが、彼のプレイは、基本的にはストレート・アヘッド。奇をてらったところは無い。 注意を払わずに聴いていると、オーネットの曲だということに気づかずに耳を通り過ぎてしまうほど。まるでスマートな彼らのオリジナルなのかと錯覚してしまう。 もっとも、彼らのオリジナルも一人一曲ずつまぎれているが。 なかでも顕著なのが、《シンフォニー(「アメリカの空」のテーマ》だろう。 逆さ顔が印象的なジャケット、オーネットの『ダンシング・イン・ユア・ヘッド』の例の単純素朴なメロディが、ここではなんと知的にスマートにリメイクされていることか。 炸裂するアホバカメロディのオーネットのバージョンも単純明快であっけらかんとしたパワーに漲った快作(怪作?)だが、この幼稚園児が描いた絵のようなメロディの曲を、洗練されたエレガンスさすら漂う演奏にまで昇華させてしまったのは見事。 選曲も凝っている。オーネットといえば、「いかにも」な、《淋しい女》や《ピース》といった、他のジャズマンが好んで取り上げるような曲は選ばれていない。 《ザ・ブレシング》という曲に初めて注目したのも、このロマーノのバージョンがあったからこそ。 よく聞くと、たしかにオーネット流のメロディ感覚を感じることが出来るが、これほどまでにクールでスマートな演奏は、オーネットという先入観を持たずに聴くと、まったく気がつかないほどだ。 青物系の魚と同様、オーネット・コールマンの曲は、旨いが、匂う。栄養はあるが、臭みもある。 この匂いを生かすも殺すも料理人(=ジャズマン)の腕次第ということになる。 ほとんどのジャズマンは、オーネットの曲を演奏すると、どんなにアレンジやアプローチを変えても、オーネットの匂いは少なからずついて回るものだが、アルド・ロマーノたち4人は、オーネットのエッセンスを残しながらも、とても上手に“アク”を掬い取った料理を作り上げてくれた。 見事な仕込み、味付けが施された“オーネット料理”の決定版といえるだろう。 現在、店頭ではなかなかお目にかかれないアルバムとなっているようだが、中古ショップでは比較的よく目にするので、気になった方は、是非とも探してみてほしい。 |
| (2004/12/21) |
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