Jazz In 3/4 Time (Mercury) |
| - Max Roach |
|
|
Max Roach (ds) Kenny Dorham (tp) Sonny Rollins (ts) Bill Wallace (p) #1,2,3,4,5,6 Ray Bryant (p) #7 George Morrow (b) #1,3 1957/03/18/NYC #2,4 1957/03/20/NYC #5,6 1957/03/21/NYC #7 1956/09/17,19&20/NYC |
|
|
|
4分の3拍子。 ようするに「♪ズン・チャッチャ」なワルツのリズムなのだが、我々はジャズ化されたディズニーの名曲《いつか王子様が》や、マイルスの《オール・ブルース》(正確には6/8拍子だけれどもニュアンスは一緒)、ビル・エヴァンスの《ワルツ・フォー・デビー》のテーマの部分など、「3」のリズムで演奏されたジャズは耳に馴染みがあり、違和感などまったく感じないはずだ。 さらには、4分の5拍子のデイヴ・ブルーベックの《テイク・ファイヴ》にも馴れ親しんでいるし、ジャズ以外でも、もっと変態的な変拍子が挿入されるキング・クリムゾンのようなプログレ(プログレッシブ・ロック)をスルーしている耳には、ジャズの3拍子は特に珍しいものとも、難解なものとも感じられない。 アルバムのライナーによると(執筆:岡崎正通氏)、「今でこそ3拍子のジャズは当り前のもになっているが、このアルバムが発表された50年代は、3拍子のジャズというのはまだ珍しかった」とのこと。 そして、「全曲3拍子で通すことなどということは、非常に大胆な実験でもあった」と続くとおり、今の我々にとっては何の違和感も感じない3/4拍子のジャズも、当時はかなり斬新なビートだったのだということが“活字知識”としては分かる。 しかし、頭で分かるが、50年代のジャズをリアルタイムで経験していない人にとっては、実感として理解するのは難しいのではないだろうか? 例えるなら、自転車に乗れる人が、補助車付きの自転車しか乗れなかった時期の自分の“感覚”を実感を伴って思い出せないことに近い。 「小さい頃は、自転車から転んでばかりで膝を擦りむいたっけ」という記憶は蘇るが、すでに乗れなかったときの気持ちや感覚までは思い出せないのと同じだ。 だから、昔と現在の感覚のギャップは、言葉の力を借りて「なるほど当時は大変なことだったんだな」と想像をめぐらせるしかないし、「そういうものだったんだ」と、事実を素直に受け入れるしかない。 こういう知識を得た後で、改めて『ジャズ・イン 3/4タイム』というタイトルを眺めてみると、なるほど、だから「4分の3拍子でジャズをやってみました」とわざわざタイトルに謳っているんだ、と理解できる。 リーダーのマックス・ローチをはじめ、テナー・サックスのソニー・ロリンズ、トランペットのケニー・ドーハムにとっても3/4拍子の演奏は、意欲的な試みだったのだろう。 しかし、「今の耳」で聴くと、とても「3/4拍子は、当時は珍しかったんです。それを叩くマックス・ローチのドラミングも凄いです。だから、聴きましょう」というようなススメ方はとても出来ない。 なにせ、私自身、このアルバムを「3拍子のアルバム」という聴き方をしたことが一度もないからだ。 では、どういう聴き方をしているのかというと、ソニー・ロリンズやケニー・ドーハムの鮮やかなプレイが素晴らしいアルバムとして。 じつは、「快楽ジャズ通信」というラジオ番組で「ソニー・ロリンズ」を特集した際に、私が真っ先に思い浮かんだ選曲候補が、このアルバムの《ヴァルス・ホット》だったのだ。 それほど《ヴァルス・ホット》という演奏には、ロリンズの持つ朗らかさや、即興演奏のセンスの良さ、「これぞロリンズ!」としかいいようのないテナーサックスのおいしい音色、ユーモアあふれるオブリガードなど、ソニー・ロリンズが我々を魅了してやまない要素がバランス良く詰め込まれているのだ。 しかし、いかんせん演奏時間が14分22秒と長く、他のロリンズがリーダーの演奏を削ってまでこの曲をピックアップしてしまうと、著しくバランスを欠いた内容になるだろうとの判断で泣く泣く削った記憶がある。 それほど、《ヴァルス・ホット》にはロリンズの魅力が詰め込まれているし、この曲のみならず、アルバム収録のすべての曲には調子の良いロリンズの名演奏が納められているのだ。 ロリンズのみならず、朗らかなケニー・ドーハムのトランペットも楽しめ、『静かなるケニー』だけのイメージを抱いていた人にとっては、彼のイメージが塗り替わってしまほど素晴らしく流麗で「陽」のオーラを発散したプレイをしているのだ。 したがって、私としてはこの『ジャズ・イン 3/4タイム』というアルバムは、ロリンズとドーハムをお腹いっぱい楽しめるアルバムとして紹介したい。 ドラマーにとっては、マックス・ローチの3拍子ドラミングも素晴らしい研究材料になるのかもしれないが、それ以外の方は「ふむふむ、なるほどこの3のところのアクセントの付け方が……」などといった分析的な聴き方はしないだろう。 ロリンズ、ドーハムが伸び伸びと素晴らしい演奏を繰り広げるだけの土台を築き上げているローチのドラミングはさすがだ、これぐらいの認識で良いのではないだろうか? レイ・ブライアントのテキパキとしたバッキングとソロも素晴らしく、彼のピアノトリオばかり聴いている人にとっては、サイドマンに回ったときの彼の一味違うプレイも楽しめることだろう。 いずれにしても、「3/4拍子が云々……」といった予備知識は綺麗サッパリ捨て去って、楽しく充実した演奏を楽しんで欲しいと思う。 それぐらい充実した演奏内容のアルバムなのだ。 |
| (2009/11/29) |
|
|
|
|
All Rights Reserved. |