A NIGHT AT THE VILLAGE VANGUARD
(Blue Note)
- Sonny Rollins

  1. Old Devil Moon
  2. Softly As In A Morning Surise
  3. Striver's Low
  4. Sonnymoon For Two
  5. A Night In Tunisia
  6. I Can't Get Started

Sonny Rollins (ts)
Wilbur Ware (b)
Donald Bailey (b)
Elvin Jones (ds)
Pete La Roca (ds)

1957/11/03

個人的には、ロリンズのアルバムの中ではもっとも好きなアルバムがコレだ。

私はながらく、別テイクも含めて2枚にわかれてライブの模様が収録されていた輸入盤のVol.1とVol.2の2枚を愛聴していたが、ブルーノートの人気盤 50枚が、一律1100円で再発されたので、またまた買ってしまった。

耳に馴染んだ演奏も、曲順が違うと、また違った流れ、違ったアルバムとしての表情をおびてくるからね。

もちろん、最初からこのアルバムは大好きなアルバムだったわけではない。

正直に告白してしまうと、最初はこのアルバムがさっぱり理解できなかった。

ピアノのいない、ピアノレストリオ(サックス+ドラム+ベース)という“通 ”な編成だったことが大きいが、ジャズを聴き始めの頃の私にとっては、このアルバムの演奏のおいしいところを捉えられなかったのだ。

“音楽”として聴くのではなく“演奏”として聴く。
アレンジや完成度を聴くのではなく、“迫力”を堪能し、“出来事”を想像力を働かせて追体験してみる。

このような聴き方が出来るようになったのは随分と後のことだった。

なにしろ、“分からない”→“悔しい”→“理解してやる!”モードだった私は、学生の頃、アメリカに2週間遊びに行っている間は、ずっとこればかりウォークマンで聴いていたぐらいだから(小休止として『ミントン・ハウスのチャーリ・クリスチャン』を挟んで聴いていたが、こちらはスッと体内に染み込んできた)。

このアメリカでの“下地体験”が有効だったかどうか分からない。

むしろ、集中して同じものばかりを聴きこむよりも、広く浅くジャズを聴いた量に比例して、理解度、楽しみ度が増してきたように思う。

たとえば、他の人が演奏する《チュニジアの夜》だったり《朝日のようにさわやかに》を聴き、脳のメモリーの中が徐々にストックが貯まってゆくにつれて、次第にこのアルバムの中におけるロリンズの歌いまわしの凄さや面白さ、音そのものの迫力が自然に味わえるようになってきたのだ。

いきなり、テーマもそこそこ、アドリヴの真剣勝負に突入する白熱の演奏を初心者に分かれというのも、無謀な話なのかもしれない。

そういった意味では、このアルバムは上級者向けのアルバムといえるかもしれない(べつに入門・中級・上級と厳密に区分しているわけではないが)。

ただ、この演奏を楽しむためのとっかりのポイントはいくつかある。

音そのものの迫力に溺れることだ。

ボリュームは大きければ大きいほど良いが、耳が壊れない程度の音量でかまわない。

ヘッドフォンでも、スピーカーでもいいから、デカい音で聴けば聴くほど凄さが体感できることと思う。

金属が悲鳴を上げるシンバルの音。
岩と岩がゴツンとぶつかるような固いベース音。←これがカナメ!
唾が飛び散るんじゃないかと思わせるぐらい熱演のロリンズの太い太いテナー。

無理してメロディーを追ったり、リズムに体を慣らそうとする必要はない。

まずは、たった3人によって作り出された圧倒的にパワフルな音空間に身をさらしてみよう。

きっと、なにかが感じられるはず。
そうなればしめたもの。
このアルバムは、一生手放せなくなる。

ちなみに、3曲目の《ストライヴァーズ・ロウ》に関して少し。
ジャズ・ジャーナリスト・小川隆夫氏の大作『ブルーノート大辞典 1500番台編』(東京キララ社)の352ページに、この曲の解説がある。

その一部を引用すると、

“ライナーノーツでレナード・フェザーが「馴染みのあるコード進行を基にしたソニー・ロリンズのオリジナル」と書いている。ところが浅学な筆者には思い当たる曲がない。いったいどの曲のコード進行を拝借したのだろう? セロニアス・モンクの《フォア・イン・ワン》に似たフレーズも出てくるのだが……。”

と記されているが、この演奏の土台となっているのは、チャーリー・パーカーの《コンファメーション》です。

ベースラインを追いかければ一発で分かる流れだと思うのだが、人によって聴くポイントが違うと、まったく感じ方が違うのだなと思った次第。
(2008/07/11) 
本コーナーの別項では、輸入盤の『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』の第1集と2集を併せて紹介しているが、個人的には“別のアルバム”と考えているオリジナル編集のリマスタリング盤を紹介したいと思う。

最近、東芝から1500円という廉価で発売された24bitデジタル・リマスタリング盤。とにかく、音の違いに驚いた。

私が長らく愛聴していた輸入版CDのバージョンは、良くも悪くも、音の迫力一発で聴くような内容だった。
シンバルが、シャーン!ではなく、ズチャーン!
ベースが、ポン・ポンではなく、ゴン・ゴン。

リズム楽器の音の迫力とパワーを楽しめるサウンドで、私は長らく、この音のバランスこそが、ロリンズのヴィレッジ・ヴァンガードならではのサウンドだと思っていたし、実際、耳ざわりと紙一重のこの迫力サウンドを愛していた。

ところが、「こうも違うものか!」と空に向かって叫びたくなるほどのサウンドの違いを今回の東芝リマスタリング盤で味わうことが出来、驚いている。

音のバランスが良いのだ。しっとりと上品にまとまっている。聴き易い。
楽器の音色も変化したし、音のバランスも随分と変化しているように感じる。

ドラムが若干奥に引っ込んだ。シンバルの音色に透明感が増した。

ベースの音色も円やかになった。ウッディで暖かな音に落ち着いた。

ロリンズのテナーの音色も、エッジのとがったザックリさが陰を潜め、円やかな太さが増した。

私の耳の奥で、長年染み付いていた『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』のサウンドテイストを心地よく裏切るような音色に変化しているのだ。

まるで、白と黒のコントラストのきつい写真が、一気に穏やかなセピア色のカラーに塗り替えられたような印象だ。

昔のままの迫力サウンドのほうがいいぜ、今のミックスのバージョンはモノ足りないぜ!と言いたいところではあるが、そうとは言い切れないところもあり、この24bitリマスターバージョンもそれなりに聴けるサウンドなのだ。
悪くない。
いや、素直に言っちゃいましょう。

良いです。

特に、はじめて『ヴィレッジ・ヴァンガードの夜』を聴く人には、このミックスのほうがオススメだ。
演奏の全体像を俯瞰できるバランス。“なにが起きているのか”を一望出来るサウンドなのだ。

だから、私としては、むしろ、新しい楽しみが増えたと喜んでいる。
同じ演奏内容を違う音質で楽しめるのだから。

そもそも、このアルバムはライブの演奏を記録したもの。
ライブ・ハウスでの演奏は、座る席によって聴こえる音のバランスが変わるわけで。

以前、マッコイ・タイナーのトリオを聴きにブルーノートへ行ったときのこと、我々は、ドラマーのルイス・ナッシュの真後ろの席を確保したので、ルイス・ナッシュの繊細なドラミングを心行くまで堪能できた。
確保した場所によって音のバランスが変わり、興味のある楽器に耳や目をフォーカス出来るということは、ライブならではの特権だろう。
もっとも、マッコイのピアノは、あまり聞こえなかったが…。

そういった意味では、私が長年愛聴していた輸入版のCDのほうは、リズムセクションを仰ぎ見るステージ前方で聴いている感じ。
そして、今回のリマスター盤は、ブルーノート青山で言えば、ステージ全体を把握できる後方のカウンター席ということになるか。
ブルーノート東京は、どちらの席についても、その席なりの楽しみ方が出来る。同様に、2種類の『ヴィレッジ・ヴァンガード』も、その日の気分で「今日はステージ前にむしゃぶりつこう」とか、「今日は、後方の座席でステージ全体を見渡そう」と、まるでライブハウスで席をセレクトする楽しみも増えたわけなので、今後は、2種類の『ヴィレッジ・ヴァンガード』を聴きわけ続けてゆこうと思う。

こういう聞き比べの楽しみ方が出来るのは、もちろん、ロリンズ・トリオの演奏が素晴らしいからだということは言うまでもない。
私が、同じ内容を音色の微妙な違いで楽しんでいるのは、あとはマイルスの『カインド・オブ・ブルー』ぐらいなものだ。
この楽しみの大前提としては、演奏の素晴らしさがあり、さらに、アルバムを何度も聴き込み、すべてのアドリブを口ずさめるほどに自分の中に刷り込まれてこそ、はじめて楽しめる、ある意味ハードルの高い楽しみだからだ。
(2004/07/11) 

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