IT MIGHT AS WELL BE SPRING (Blue Note) |
| - Ike Quebec |
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Ike Quebec (ts) Freddie Roach (org) Milt Hinton (b) Al Harewood (ds) 1961/12/29 |
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邦題、『春の如く』。 良いタイトルだ。 うぐいす餅色のジャケットも、負けず劣らずに素晴らしい。 そして、もちろん、中身の音も。 アイク・ケベック。 テナー・サックス奏者。 アーシーなトーンと、メロディックなフレーズの端々からは、上品な「黒さ」が、ほんわりと滲み出ている。 そして、この「黒さ」は、決して下品なブロウではなく、あくまでも優美で上品、コテコテさに陥る一歩手前の寸止めが効いている。 加えて、音色も吹奏もハート・ウォームなテナーだ。 悠々と吹くスタイルは、まさに大人の風格。 大らかでリラックスした彼の吹奏は、終始、安心して聴ける頼もしさがある。 彼は、ビ・バップよりは、少し前のスタイル、いわゆる「中間派」と呼ばれているスタイルのテナー奏者で、古き良きハーレム・ジャズ・スタイルがルーツとなっている。だから、というわけでもないが、フレーズの一つ一つがとてもメロディックで、朗々としている。 また彼は、自分のプレイを客観的に見つめることの出来るクールな視線も持ち合わせていたのだろう、どんなときにおいても、オーバー・ブロウにはならずに、どこか淡々とした「引きの美学」に貫かれていると思う。 アイク・ケベックは、テナー奏者としてのほかに、ブルーノート・レーベルにおいては、オーナーのアルフレッド・ライオンの片腕としても大活躍した。 アドバイザー、スカウトマン、そして、ジャズマンをスタジオまで送り届ける運転手として。 ブルー・ノートの骨太で迫力のあるサウンドは、ご存知の通り、名録音技師、ルディ・ヴァン・ゲルダーの手によるものだ。 ルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオは、ニューヨークの郊外にある。 そのスタジオまで、録音に参加するジャズ・マンを車で送り迎えをする運転手の役もこなしていたのだから、本当にブルー・ノートにとっては、なくてはならない「便利屋」だったのだなと思う。 さて、本アルバムの内容だが、まずフレディ・ローチのオルガンが良い! 冒頭の「しょわ〜」という気持ちの良い音のシャワーを浴びた瞬間から、このアルバムの世界に染まること間違いなし。 メロディックなタイトル曲をはじめてとして、ほとんどの曲がゆったりとした気持ちの良いテンポの演奏が繰り広げられている。 ズンズンと、ゆったり大股で歩くミルト・ヒントンのベースも魅力だ。 このアルバムは、冷めた頭で、聴覚の感度を敏感にして聴くよりは、ちょっと「惚け」て、リラックスした気分でほわーん、と聴くほうが良いんじゃないかな、と思う。 ここからは、私の個人的な推測なんだけど、私は、アイク・ケベックのサックスは、男性よりも、むしろ女性に響くんじゃないかな?と思っている。女性泣かせなトーンと語り口なんじゃないかな、と思うのだ。 というのも、あのハート・ウォームなトーンは、男性が耳元で優しく囁く声そのものだし、トーンそのものが逞しさと柔らかさの両方を兼ね備えているからだ。 アイク・ケベックのテナーは、甘く肉感的な「声」を持っている。 先ほど、「優美で上品」と書いたが、単に上品なだけではなく、うっすらとした汗の匂いも、ほのかに漂ってくるようなセクシャルさ。そして、クサくはなり過ぎずにムーディだ。 決して多くは語らないけれども、ポイントとツボを押えて語る甘い言葉。 その言葉と言葉の「優しい間」は、洗練された大人の男性の語り口そのものなんじゃないかと思う。
ジャズには、多かれ少なかれセクシャルな要素は不可欠だけれども(「カッキンコッキン」で、セクシャルな要素が皆無なものも中にはあるが)、アイク・ケベックの「トーン」と「間」には、とてもセクシャルな匂いがする。 |
| (2002/03/17) (2010/03/01 加筆修正) |
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