V (Somethinelse) |
| - Ralph Peterson |
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Ralph Peterson (ds) Terence Blanchard (tp) Steve Wilson (as,ss) Geri Allen (p) Phil Bowler (b) 1988/04/19 & 20 |
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近頃のジャズマンは、ドラッグどころか煙草も酒もやらない人が多いようだ。 ベジタリアンな人も増えているような気もする。 結果、波茶滅茶な生き様のジャズマンって少ないような気がするんだけど、それは、気のせいかな? ドラッグ・酒・煙草。 時代の流れなのだろうか、ジャズマンといえばすぐに思い浮かぶこれらの要素はもはや過去の遺物で、今の世の中、破茶滅茶な生活っぷりなジャズマンよりも、品行方正なジャズマンのほうが多い世の中になっているような感じがする。 誤解を受ける前に予め断っておくと、私は「音楽良ければそれで良し」なリスナーなので、この風潮は良いとも悪いとも思っていないし、もちろん、ドラッグや酒は、演奏の良し悪しには直接には関係が無いと思っている。 しかし、パーカーやパウエル、そしてジャコなどの傑出したイノヴェーターの途方もなく破天荒な生活ぶりや、彼らにまつわる伝説を知れば知るほど、最近のジャズマンに対しては“肉食動物”というよりも“草食動物”的な印象を抱いてしまうのも仕方の無いことだろう。 重ね重ね繰り返すが、だからといって、そのことは音楽の良し悪しとは無関係だ(と思う)。 現に、キース・ジャレットは煙草が大嫌いだそうで、『ジャズマンとの約束』の著者・中山康樹氏は、待合室でキースがやってくるまで煙草を吸っていたら、煙草の嫌いなキースはドアを開けた瞬間去っていったそうだ。 しかし、煙草を吸わないキースは激しくエモーショナルなピアノを弾く。 また、ハービー・ハンコックも、入信している創価学会の決まりなのかどうかまでは分からないが、酒も煙草も飲まないそうで、だからといって、彼の音楽が大人しく草食的なものかというと、そうとも思えない。 ソニー・ロリンズだって、ある時期を境にドラッグも煙草も断っているが、年をとっても元気で、ますますパワフルな演奏を繰り広げている。彼の吹きまくりな姿は、草食どころか、どちらかというと“肉”なイメージが強い。 例を挙げればキリがないが、要するにミュージシャンの嗜好や生活と、音楽の内容は直接の関係があるわけではないと思う。 もちろん、破天荒な生き方をしたジャズマンの演奏には素晴らしいものが多いことも確かだが、だからといって破天荒な人間が演奏すれば面白い演奏が出来上がるというわけでもないだろう。 生き方は波茶滅茶でも、演奏は面白くない本末転倒な人だってたくさんいるんではないだろうか? しかし、ドラッグも酒も煙草にも縁の無い「健康なジャズマン」って、単に私個人が抱くイメージの話だが、なんだか“ジャズっぽく”ない。 そもそも「健康なジャズマン」という言葉自体、矛盾した表現のような気がしてならない。 ヤバくて、ルーズで、だらしなくて、楽器を取ったら何も残らないロクデナシで、しかし、ひとたび楽器を手にすれば我々を音でノックアウトさせてくれ、キメる時はキメてくれる。 これこそが、正しいジャズマンの姿だ。とまでは言わないが、やっぱり心のどこかには、ジャズマンはこうあって欲しいという願望はあるのかもしれない。 こんなことばっかり言っていると「勝手なオマエさんのイメージを俺達に押しつけるなよ」と、ジャズマン達もいい迷惑だろう。 それはともかくとして、小川隆夫氏の『知っているようで知らないジャズおもしろ雑学事典』という楽しい本を紐解くと、ラルフ・ピーターソンは近頃には珍しく破天荒なジャズマンなようだ。 “最後の破滅型ミュージシャン”とも呼ばれているようで。 なにしろ、彼は、結婚した当日に奥さんの家財道具一式を売り払ってしまったらしい。 また“某プロデューサー(という表記に本書ではなっているが、恐らくは『V』のプロデューサーの行方均氏では?)”は、ニューヨークでラルフに会うたびにブルックリンまで帰るタクシー代をせびられるのだそうだ。お金を貰うと、タクシーは拾わずに地下鉄の駅に向かうそうで、一体貰ったお金は何に使っているのやら。 麻薬の借金で、ギャングにペンチで歯を抜かれたチェット・ベイカーや、借金返せと楽屋にまでギャングが押しかけてきたウディ・ショウや、日本ツアー中、広島の池にベースを放り投げたジャコほど滅茶苦茶なわけではないが、それでもなんだか、いかにもジャズマン的な行動っぷりで、こういうエピソードがある人って個人的には“ああ、ジャズだなぁ”などと私は無責任に思ってしまい、なぜか頬が緩んできてしまう。 被害を被った人たちからしてみれば、たまったものではないだろうけど。 そして、こういうヤツの音楽こそ、聴いてみる気がおきるのも、また確かなことであり。 そんなラルフのドラミングを楽しめる彼の初リーダー作が『V』だ。 彼は、新生ブルーノートが結成した新進気鋭メンバーを集めたジャズ・コンボ「OTB(Out Of The Blue)」の初代ドラマーだ。 東芝EMIが興したレーベル「サムシン・エルス」の第1作目が、この『V』。 ワイルドでシャープなドラミングが全編に渡って楽しめる。 手数の多いタイプのドラマーだが、曲のツボを良く心得ているためか、まったくウルサさを感じない。 そういえば、このアルバムは一曲を除けばすべて彼のオリジナルだ。 全編、一言で言えば格好いい演奏ばかりが続く。 第一、彼の作った曲そのものが格好いい。 そして、特筆すべきは、演奏全体に漲る「スピード感」だろう。勢いがある。 パワフルで、豪放なドラムには違いないけれども、とてもシャープな音楽を描き出す人だ。 加えて、ジェリ・アレンのピアノが陰ながら、なかなかの好サポートをしていることにも気が付く。プレイ自体はそれほど目立たないけれども、彼女のサポートの有無でこのアルバムの出来が左右されたと言っても過言ではない。 テレンス・ブランチャードの力のこもったトランペットも迫力があり、熱演。 曲の良さ、加えて勢いに溢れた演奏を楽しむアルバムだといえる。 ラルフ・ピーターソンという人、生活は波茶滅茶なのかもしれないが、音楽のほうは、どうやら波茶滅茶というよりは、むしろピシッ!と決まった演奏をする人のようだ。 |
| (2002/10/02) |
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