THE LONELY ONE (Verve)
- Bud Powell

  1. Confirmation
  2. Star Eyes
  3. Lullaby In Rhythm
  4. Willow Weep For Me
  5. Mediocre
  6. All The Things You Are
  7. Epistrophy
  8. Dance Of The Infidels
  9. Salt Peanuts
  10. Hey George

Track 4
Bud Powell (p)
George Duvivier (b)
Art Taylor (ds)

1955/04/25


Track 1,2,3
Bud Powell (p)
George Duvivier (b)
Art Taylor (ds)

1955/04/27


Track 5,6,7,8,9,10
Bud Powell (p)
Percy Heath (b)
Kenny Clark (ds)

1955/01/13

私はチャーリー・パーカーが吹く《コンファメーション》は大好きだが、バド・パウエルが弾く《コンファメーション》はあまり好きではない。

『バドイズム』という、ストックホルムでのライブの模様を収録した3枚組のCDがあり、その中の《コンファメーション》を聴いたときは、演奏があまりにボロボロだったので、ひどく落胆したことがある。
また、数年前に発売された発掘音源、『バド・プレイズ・バード』の《コンファメーション》の演奏も、あまりシックリとこなかった。

何故シックリとこないのだろう?
色々と考えてみた。

音色では? と思った。
というのも、チャーリー・パーカーの芯の通った明快なアルトの音色と、彼自身が作曲した《コンファメーション》という、複雑なのにゴキゲンな旋律の曲が見事にピッタリと一致しているからだと思う。

もちろん、パウエルのピアノの音色も芯が通っている。いや、むしろ芯が通り過ぎているぐらいに強烈で重たい音色だ。しかし、この音色がどうも《コンファメーション》の旋律に合わないんじゃないかと思ったのだ。

逆に、この曲に合うピアニストもいる。トミー・フラナガンだ。
彼のリーダー作『エクリプソ』に収録されている演奏は、明快で歯切れの良い音色ゆえ、非常に曲と演奏がマッチしていて素晴らしい仕上がりとなっている。



個人的な見解だが、《コンファメーション》という曲は、演奏者の音色を選ぶような気がしてならない。
曲の旋律によっても、合う音色、合わない音色っていうのがあるんじゃないかと最近は思うようになっている。

パウエルのピアノは、一音一音のタッチが厳しく、言い方悪いが“憑き物に付かれたようなコワイ音色”のピアノだ。
時としてピアノが「ゴリン!」とか「バシン!」と悲鳴をあげているのではないかと思うぐらい音が歪むし、音空間が異様なほどに乾いているのだ。

もっとも、だからこそ、私はそんなバド・パウエルが大好きなのだが、どうもそんなピアノの音色ゆえ、《コンファメーション》のような「陽」の要素が強い曲を弾くと裏目に出てしまうんじゃないかなと思っている。

バド・パウエルがヴァーヴに録音した『ザ・ロンリー・ワン』は、《コンファメーション》から始まるアルバムだ。
冒頭のテーマは比較的無難に弾いているように感じるが、曲の後半になればなるほどタッチがたどたどしくなり、ディスコードも目立ってくる。
もっとも私は、ディスコードをした時のパウエルの和音の音も好きだが……。
明らかに間違って、意図した音とは違う音を弾いてしまった音にもかかわらず、パウエルの弾く“ミスった和音”にはダークで独特な響きがあると思うのだ。

『バドイズム』の《コンファメーション》よりはマトモな演奏内容とはいえ、やはり、パウエルと《コンファメーション》は相性が合わないのかな? と思ってしまうような演奏だ。

とはいえ、私はこのアルバムが嫌いなのかといえば、そうでもない。

《異教徒たちの踊り》、《オール・ザ・シングズ・ユー・アー》、《エピストロフィ》など、私の大好きな曲も入っているし、演奏も悪くない。

このアルバムの目玉は《メディオウカー》だろう。
いや、目玉というよりは、異色のナンバーと言っても良いかもしれない。
なんだか、とても妖しいのだ。
数音を並べただけの“音の一筆書き”的な単純なテーマだが、演奏全体を包むミステリアスな雰囲気は病みつきになる。
独特な雰囲気といい、人を食ったようなメロディといい、一聴するとモンクが作ったの曲なのかと勘違いしてしまうほどだ。
途中でストライド風のピアノになるところも、なんともモンク的。
もちろん、ピアノはパウエルそのものなのだが、出てくる雰囲気からは強烈にモンク臭さを感じる曲と演奏だ。

パウエルの『ザ・ロンリー・ワン』は、ほとんど雑誌やガイドなどに取り上げられることはない。
その理由、分かるような気がする。
一言で言ってしまえば、地味なアルバムだからだ。

しかし、ハッとするほど目新しいことやインパクトは無いにもかかわらず、じわりと聴き手を惹きつけてやまない魅力を持っていることもたしかだ。

才気ばしった天才が残した演奏は、そのすべてがまばゆい閃光のような音ではない。
光が強ければ強いほど、闇の面も濃く深くなるもの。

『ジャズ・ジャイアント』や『ジニアス・オブ・バド・パウエル』、『アメイジング・バド・パウエル』などの「光」と「速度」に満ち満ちたアルバムだけがパウエルではない。
音の迷宮を彷徨う天才の「闇」の部分をも呑みこんでこそ、あなたも立派なパウエルファンなのだ。
(2002/10/16) 
(加筆修正 2011/04/25) 


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