THE COMPLETE SURF RIDE (Savoy Jazz) |
| - Art Pepper |
disk 1
disk 2
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Art Pepper (as) Jack Montrose (ts) disk2 #1-22 Hampton Hawes (p) disk1 #1-4 Russ Freeman (p) disk1 #5-19 Claude Williamson (p) disk2 #1-22 Joe Mondragon (b) disk1 #1-4 Bob Whitlock (b) disk1 #5-19 Joe Mondragon (b) disk1 #1-4 Monty Budwig (b) disk2 #1-22 Larry Bunker (ds) disk1 #1-4, disk2 #12-22 Bobby White (ds) disk1 #5-19 Psul Ballerina (ds) disk2 #1-11 1952/03/04 disk1:#1-4 1952/10/08 disk1:#5-19 1954/08/25 disk2:#1-22 |
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優れた“即興演奏家”としてのアート・ペッパーを骨の髄まで味わいたければ、避けては通れない名盤だ。 もちろん、ペッパーはこれ以外にも多くの優れた演奏を残している。名盤と呼べるアルバムも多い。しかし、アルトサックス吹きとしてのペッパーのみならず、“アルトを吹く優れたインプロバイザー”としての彼の本領は『サーフ・ライド』に凝縮されているといっても過言ではない。 このアルバムは、いうなればチャーリー・パーカーにおける『サヴォイ・レコーディングズ』のような存在だ。 つまり、『チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス』や『ジャズ・アット・マッセイホール』はたしかに名盤だが、これだけじゃ真のパーカーの即興演奏家としての凄みを味わうには片手落ちなのと同様、『ミーツ・ザ・リズムセクション』や『再会』だけを聴いただけじゃアート・ペッパーの本質を理解したとはいえない、ということだ。 誤解のないように書き加えておくと、上記アルバムは、作品としてダメだと言っているわけではない。むしろ、世評どおり優れた名盤だと思う。 しかし、これらのアルバムの良さは、“アドリブ”という一言に集約されるものではなく、むしろそれ以上に、選曲の良さだったり、聴きやすい演奏内容だったり、共演者の魅力だったりする。 これらの、いくつもの要素が合わさった結果の名盤だということ。 人それぞれ好みがあるように、これらのアルバムは、それぞれの好みに適応できるだけの、掴みの数がたくさんあるし、それだけの広い間口を持っているということだ。 それに比べれば、『サーフ・ライド』の内容は硬派だ。 乱暴に言ってしまえば、“アドリブ分からんやつが聴いても良さなんて分かるわけがない”ということ。 自分が歌えるメロディの多い演奏を好みのジャズとみなしている人。あるいは、ジャズを過去の思い出に浸るための記憶再生装置や、ムードを演出する小道具としてしかみなしていない人。 こういう人たちには、取り付く島のない内容だと思う。 たしかに、初期のアート・ペッパーはフレージングや音色に微妙なニュアンスを湛えているので、彼の吹くアルトに情緒を感じることはできる。 しかし、この演奏で聴くべきは、それ以上にペッパーのアドリブそのもの。 即興演奏家として、一つの曲にいくつものテイクを重ね、ベストな演奏を残そうとするペッパーの真摯な姿だろう。 情緒だけを感じ取って「いいねぇ〜」と言うのは、クリスマスケーキの上に乗せられた砂糖のカタマリのサンタさんをかじりながら「うまいねぇ〜」と言っているのと同じことだ。 砂糖のカタマリで出来たサンタさんは、たしかにクリスマスケーキの一部だ。おいしければそれに越したことはない。 しかし、ケーキ職人が一番味わって欲しいのは、スポンジとクリームで構成されたケーキそのものの部分でしょ? ケーキの本体を味わうことなく、砂糖のカタマリのサンタさんだけでクリスマスケーキを論じても、それはそれで面白いかもしれないが、素っ頓狂な戯言と陰で失笑を買うことも覚悟しなければならない。 だから、歌謡曲の延長としてのメロディの良し悪しのみでジャズを楽しんでいる人には不向きな内容といえるのだ。 たしかに、《エヴリシングズ・ハプン・トゥ・ミー》、《ホワッツ・ニュー》、《今宵の君は》といった、テーマの旋律が魅力的なスタンダードも収録されてはいる。 しかし、テーマの後のアドリブこそ聴いてほしいところだし、ペッパーとしても、テーマの後のアドリブの出来不出来で、何回も録音をしなおしているのだ。 聴くべきは、ペッパーはいかに題材となる曲挑み、料理しているかのほうなのだ。そして、これを聴き比べる楽しみこそが、何テイクも重ねられた演奏記録が収録されている2枚組の『サーフ・ライド』を所有する醍醐味でもある。 私はここ数日、ペッパー漬けで、飽くことなくディスク1とディスク2を交互にくり返し聴いているが、う〜ん、素晴らしい! しかも、これが即興演奏の面白いところなのだが、聴けば聴くほど面白くなってくる。 アドリブに賭けたペッパーの意気込みが聴けば聴くほど伝わってくるし、そういう意気込みで放たれた音はいつの時代も新しい。何度聴いても、やっぱり新しい。 さて、このアルバムについてのウンチクを少々。 『サーフ・ライド』は、アート・ペッパーが26歳のときの初リーダー録音から、ディスカバリーに吹き込んだ録音を集大成したものだ。 52年と54年の演奏が収められている。 田舎の店の安っぽく寒々しい看板絵のようなジャケットを見ると、なんだか能天気なイメージと、ビーチボーイズのようなサウンドを連想してしまいそうだが、もちろん演奏内容は、まったく違う。 きっちりとツボを抑えた、ストイックで締まりのある演奏の連続。 そして、少しでも良い音を出そうとトライを重ねるペッパーの記録でもある。 ピリリと締まったペッパーのアルトはどこまでも真面目でひたむき。 1枚目は、管はペッパーのみのカルテット編成。 2枚目は、テナーにジャック・モンテローズが参加したクインテットとなっている。 ピアニストは、ラス・フリーマン、ハンプトン・ホース、クロード・ウイリアムソンとセッションによって違うが、堅実にペッパーを支えるという一点の目的と方向が一致しているためか、どのピアノも誰が弾いているのか、よく聴かないと判別がつかないほど、驚くほど似ているのが興味深い。 ペッパーは、キャリアの初期から既にスタイルを完成させていたのだな、と納得出来る貴重な記録でもある。 「ジャズが分かる・分からない」という言い方を嫌う人は多い。私だって、あまり使いたくない言葉の一つだ。 しかし、それでも、「分かっている人」と「分かってない人」の間には、歴然たる境界線は感じられる。 「分かる・分からない」を言い換えるとすれば、「ジャズを楽しめる回路」が自分の感性の中に形作られているか否かということ。 もちろん、計測可能なものでもないので、具体的なモノサシは、ない。 しかし、リトマス試験紙となるアルバムというものは存在する。 チャーリー・パーカーのサヴォイやダイヤル盤、 バド・パウエルの『ジーニアズ・オブ・バド・パウエル』、 リー・コニッツの『サブコンシャス・リー』、 オーネット・コールマンの『ゴールデン・サークル vol.1』、 そしてアート・ペッパーの『サーフ・ライド』も、その仲間に入れてもいい1枚だ。 ジャズの旨みを知り尽くした人が真に楽しめる1枚といえよう。 |
| (2006/11/28) |
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