A PORTRAIT OF THELONIOUS (Sony Records) |
| - Bud Powell |
|
|
Bud Powell (p) Pierre Michelot (b) Kenny Clark (ds) 1961/12/17 Paris |
|
|
|
セロニアス・モンクとバド・パウエルは師弟関係にあった。 モンクはパウエルのことを弟のように可愛っていた。 彼らが一緒に車に乗っていたときに警察から検問を受けたときも、ジャンキーかつ麻薬を所持していたパウエルを庇い、身代わりとなって、投獄されるほどの溺愛ぶり。おかげで、これがなくてはニューヨークでは演奏できないライセンス(キャバレー・カード)を取り上げられ、しばらくの間不遇をかこったほどなのだ。 そんな兄貴分・モンクの曲を中心に弟分・パウエルが吹き込んだアルバムがこれ。 モンクの曲は、そのユニークさゆえ、演奏者をからめとってしまうところがある。つまり、誰が演奏しても、演奏者の個性よりも、作曲者モンクの個性のほうが色濃く出てしまう傾向があるのだ。 それだけ、モンクの曲というのは、個性が強く、それゆえに、今でも多くのミュージシャンを挑発してやまない要素があるのだ。 しかし、このアルバムにかぎっては、「モンクの曲が演奏されているモンク曲集」として聴く必要はない。完全にパウエルの世界に染め抜かれているからだ。 師匠も師匠なら、弟子も弟子だ。 師匠の投げかけた公案(禅で用いられる師が弟子に投げかける問題)を完全に自分の世界に塗り替えて回答を提出しているのだ。 もちろん、モンクの曲以外も数曲演奏されてはいるが、モンクの曲であれ、スタンダードやブルースであれ、同一のトーン、つまり、パウエルにしか出せない世界観で染め抜いている点は、サスガというしかない。 絶頂期のような閃きやスピード感はないが、堅実なリズムセクションに支えられ、パウエルの安定したピアノを楽しむことが出来る。 このアルバムの中で、私が好きな演奏は《モンクス・ムード》。 メランコリックで思索的な曲に、自身の心情風景の投影させている。静かに朽ちてゆく、天才の孤独感が音の隙間に漂っては消えてゆく。 淡々と音を綴ってゆくパウエルだが、耳をひきつけてやまない深い演奏なのだ。 《ルビー・マイ・ディア》も同様。 どうやら、後期のパウエルは、めまぐるしいスピード感や圧倒的なテクニックを失った代償として、人の心の奥底まで食い込むようなスローテンポにおける味のある語り口を身につけたのではないか? これとは対照的に、《ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー》はリトル・ハッピーな雰囲気の漂う演奏。何の変哲もない、それこそ、ごくごく普通にピアノを弾いているだけの演奏だが、ほのぼのとした親しみ安さを感じる。 きっとパウエルのことだから、聴き手に親しみを抱いてもらおうなんて、これっぽちも考えて弾いていないのだろうけれども、淡々としたプレイからは、孤高の天才とは別のもう一人のパウエルという人物が見え隠れするのだ。 |
| (2006/01/24) |
|
|
|
|
All Rights Reserved. |