PIKE'S PEAK (Epic)
- Dave Pike

  1. Why Not
  2. In A Sentimental Mood
  3. Vierd Blues
  4. Besame Mucho
  5. Wild Is The Wind

Dave Pike (vib)
Bill Evans (p)
Herbie Lewis (b)
Walter Perkins (ds)

1962/02/06 #3,5
1962/02/08 #1,2,4


神保町にあるジャズ喫茶「ビッグ・ボーイ」のマスターが、まだデザイン事務所の社長だった頃、デイヴ・パイクの『パイクス・ピーク』を紹介された。

彼はビル・エヴァンスの熱烈なファンで、ビル・エヴァンスがサイドマンとして良い演奏をしているという文脈で、このCDを私にくれたのだ。
「エヴァンスもいいピアノ弾いているし、なにしろタイトル通り、デイヴ・パイクという人のキャリアのピークなんですよね、この演奏は」
そう言われてCDを渡された記憶がある。

ヴィブラフォン奏者、デイヴ・パイクの演奏は、たとえばジャズにおける代表的なヴィブラフォン奏者のミルト・ジャクソンとはずいぶんと違ったニュアンスを感じる。
ミルトのようにふくよかで丸っこく、いわゆるモダンジャズのニュアンスを感じさせるノリとは違い、もう少し直線的で粘りの少ない音価がパイクのヴィブラフォンの特徴といっても良いだろう。

これはジャズのみならず、クラシックの演奏もこなしてきた彼のキャリアが形成したニュアンスかもしれないし、このアルバム録音時のパイクは、ハービー・マンのバンドに在籍していたことも大きく関係しているかもしれない。

ハービー・マンは、自己のバンドではジャズのリズムのみならず、ラテンやソウルなどのリズムも積極的に取り入れていたからだ。
後年(1960年後半)、パイクは、ジャズ・ロックのバンド、ノイジー・サイレンス=ジェントル・ノイズを結成し、人気を博しているので、ハービー・マンのバンド時代に培われた音楽性が花開いたといえよう。

マンのバンド在籍時に、様々なリズム・フィギュアに対して柔軟に対応して演奏していたパイクだからこそ、新しい感覚のヴィブラフォン・プレイヤーとして、当時としては新しい感覚のピアニスト、ビル・エヴァンスとの共演が良い結果につながったのだろう。

とはいえ、このアルバムはいろいろな意味で怪しい。
この怪しさ(妖しさ)を楽しむのが『パイクス・ピーク』鑑賞の極意なのかもしれない。

まずは唸り声。
デイヴ・パイクの唸り声は、正直かなり「デカい」。
もしかしたらヴィブラフォンの音より大きいのかもしれない。

しかし、この唸り声とヴィブラフォンの音色が混ざると、ときに恐ろしさ(?)を通り越して、情念の塊となって聴き手に迫ってくる瞬間もある。
《イン・ア・センチメンタル・ムード》や《ベサメ・ムーチョ》などがまさにそうだ。

そして、1曲目のタイトルとクレジット。
少しジャズに詳しい人ならば、この曲はジョン・コルトレーンの《インプレッションズ》であることはすぐに分かるはず。
ところがタイトルは《ホワイ・ノット》になっており、作曲者クレジットもデイヴ・パイク。
これはいったいどういうことか。

さらに、このアルバムの録音日。
長らく1961年の11月とされていたが、正確には翌年の2月だ。

よくジャズマニアの間では、「このアルバム吹き込みに参加した時期のエヴァンスは、相棒のスコット・ラファロが亡くなり茫然自失状態が続いたが、それを乗り越えようとしているプレイがピアノに現れている」というようなニュアンスで語られている。
しかし、私にはそこまで、演奏者の内面を演奏の音だけから読みとることは出来ない。
エヴァンスはラファロを失った悲しみにくれていたのかもしれないが、具体的にどの曲のどのようなフレーズあたりに、そのことが読み取れる音が存在しているのかまでは分かるはずもないし、指摘出来る人だっていないだろう。
全体の音の感じから、そのような「ラファロを失った悲しみ」が漂っていると指摘する人もいるかもしれないが、それってどこまでいっても「妄想」の域だろう。
私には、このアルバムでのエヴァンスの演奏は、いたってエヴァンスらしいプロの仕事ぶりとしか感じず、時に怪しく光り出すパイクを盛り上げ、綺麗にサポートしている以上のものは感じない。

(2011/04/23) 

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