BUDISM (Steeple Chase) |
| - Bud Powell |
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Bud Powell (p) Torbjorn Hultcrantz (b) Sune Spangberg (ds) Recorded At The Golden Circle,Stockholm,April & September 1962 |
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バド・パウエルのゴールデンサークルでのライブ盤は、スティープル・チェイスから、全部で5枚出ている。 淡々とピアノで音を綴るだけのパウエルだが、妙に深みのあるピアノゆえ、どれもが甲乙つけがたい内容だ(個人的には2と3が好き)。 この時期のパウエルの演奏は比較的安定していたのだな。 オフィシャルな5枚を聴けば、そう思うのも無理もない。 しかし、『バドイズム』という、上記5枚からこぼれた未発表演奏を集めた3枚組のCDを聴くと、必ずしもそうでないということが分かる。 この時期のパウエルにも、演奏の出来不出来に激しい波があった。 指がもつれた演奏、覇気のまったく感じられないボロボロな演奏までがこのCDには収録されているので、正直、記録としては貴重なのかもしれないが、聴くにはツラい演奏も収められていることを予め覚悟しておかねばならない。 たとえば、《コンファメーション》。 こんなに覇気のない《コンファメーション》は聴いたことがない。 勢いなく、テーマすらもまともに弾けていないパウエル。見てはいけないものを見てしまった感覚に襲われる。 ピアノを取ったら、あとは何も残らないほどに、徹底的なピアノバカだったバド・パウエル。しかし、そんな男から、ピアノすらも取り上げられてしまった状態なのだ。 見るに、いや、聴くに忍びないので、このCDは棚の隅でひそやかに封印されている1枚なのだ。 『アット・ザ・ゴールデン・サークル』の5枚が、いかにベストな演奏が抽出されて編集されていたのかが分かる。 もちろん、《コンファメーション》は極端な例で、比較的小康状態を保っている演奏も少なくない。 しかし、マニア以外にはオススメできない演奏集なことも確か。 しかし、ある程度、パウエルの代表作を聴き、絶頂期から晩年までの一連の音楽的な変化、流れを俯瞰出来ている人は、臆せずにチャレンジして欲しいアルバムでもある。 それはあたかも、麻薬でヘロヘロ、意識不明の一歩手前のチャーリー・パーカーの《ラヴァー・マン》の演奏が、不思議と聴き手の胸を打つのと似ている。 光陰矢のごとし(テンパス・フュージット)な速度感と刹那さを常にたたえた、ちょっとヘン(ウン・ポコ・ローコ)な天才ピアニストの影。それもものすごくダークで吸い込まれそうな影の部分を知ってこそ、真のパウエル・ファンとは言えまいか。 私は、息もたえだえの《アイ・シュッド・ケア》が好きだ。 超スローテンポで、閃きにも欠けた、ハッキリ言ってボロボロな演奏なのだが、そこにピアノ弾きパウエルの陰影に富んだピアノ人生に思いを馳せてしまうのだ。 こういうボロボロな演奏でも「それでもイイんだ。深い味わいがあるじゃないか」と自信を持っていえる私のようなパウエル・フリークならば、コレクションとしては必携アイテムかもしれないが、パウエル入門者には他にも聴くべきパウエルのアルバムは山とあるので、まずは、アルバムガイドなどを参考に、前期と後期の両方の彼のピアノを味わって欲しい。 しかし、酸いも甘いも噛み分けたパウエル・マニアにとっての、最後の残った本当に“酸い”な部分が、この演奏集『バドイズム』なのだ。 パウエルを知れば知るほど、演奏から受ける衝撃は高いと思う。 そして、きっと気がつくことだろう。 まばゆいばかいの輝きで人を魅了していたピアニストが、今度は、底なしの深い影で人の心を吸い寄せているのだということに。 |
| (2006/08/02) (加筆 2010/08/10) |
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