THREE STORIES,ONE END (ACT)
- Simon Nabatov

  1. Three Stories,One End
  2. Emily
  3. For Herbie
  4. Epistrophy
  5. Groofta
  6. I Wish I Knew
  7. Giant Steps
  8. St.Thomas
  9. Wish I Were There

Simon Nabatov (p)
Drew Gress (b)
Tom Rainey (ds)

2000/11/13-14

“黒さ”のまったく感じられない、“漂白”されたセロニアス・モンクの《エピストロフィ》や、ジョン・コルトレーンの《ジャイアント・ステップス》も、ときには悪くない。

脂分が丁寧にアク抜きされ、そのかわり、曲の骨格は殺すことなく、再度、綺麗に肉付けがなされている。

微毒まじりの危険な曲が、丁寧に再構築されている様は、それはそれで気持ちが良い。スタティック、優雅ですらある。

サイモン・ナバトフのピアノは、蒸留水のようだ。
ピュア、という意味ではない。蒸留水は、たしかに、まじりっ気のない水ではあるが、このまじりっ気のなさは、“安全”を意味するものではない。
それが証拠に、蒸留水を飲むと大抵の人は下痢をしてしまうのだから。

毒の無い攻撃力というのもあるのだ。

一聴、まじりっ気のないピュアさを感じるナバトフのピアノも、心してかからないと、やられてしまう。

この危険度は、分かりにくいぶん厄介ではある。

タイトル曲の演奏などから、たしかに叙情的で柔らかなピアノを弾く人ではある。攻撃力も殺傷力も低いピアノだ。少なくとも、一撃でガツーンを聴き手を殺るピアノではない。

しかし、水の浸食作用と同じで、我々のマインドの中に幾重にも張り巡らされたフィルターをその無毒性ゆえ、やすやすと潜り抜け、結果的に、いつのまにか我々の内部を彼のピアノの音が占拠しているという、なかなか強かなピアニストでもあるのだ。

やわらかく突んのめるロリンズの《セントトーマス》も悪くない。
ハードバップ風なピアノに飽きたら、これを1枚どうぞ。
(2006/04/22) 


いやぁ、見事に漂白してくれたものだ。
セロニアス・モンクの《エピストロフィ》、
ジョン・コルトレーンの《ジャイアント・ステップス》、
ソニー・ロリンズの《セント・トーマス》。

そうそうたるジャズマンの、そうそうたる曲たちを、丁寧にアク抜き・油抜きしたら、こんな仕上がりになりました。お口に合いますでしょうか?
そんな、サイモン・ナバトフ料理長の声が聞こえてきそうだ。

はい、もちろんです。
そして、「腹八分目で、料理の味と、楽しいひと時を過ごすことが出来ました。」という言葉も付け加えたい。
もちろん、皮肉ではなく。

黒人ジャズ、ことに50年代のブルーノートやプレスティッジなどの音源には絶対に求め得ないサウンド・カラーだ。
真っ黒とは対極な、サイモン・ナバトフの真っ白なノリは、それはそれでかなり気持ちの良いものがある。

難解ではなく、平易で親しみやすい演奏内容も幸いしているのだと思う。
特に、タイトル曲の、ベースとピアノによって執拗に繰り返されるリフと、それにかぶさる優しい旋律は、まるで柔らかい子守唄を聴いているようで、とても心地よい気分になれる。

そう、ナバトフのピアノは柔らかいのだ。
決して、コチコチでカチカチで観念的なピアノではない。
時折、フリージャズ的なアプローチも見せるが、不思議なことに、それとて、耳に優しいのだ。

エネルギー感と、躍動感には乏しいものの、ストイックなほどにスタティックで上品なピアノ。こういうピアノも悪くない。
部屋の空気も、しっとりと落ち着いた空間に早変わりしてしまうほど、クリーンで、清潔で、趣味の良いピアノだと思う。

アール・デコ調に変形された(?)、《ジャイアント・ステップス》や《エピストロフィ》に興味のある方は、是非。
(2002/06/10) 


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