J.R.MONTEROSE (Blue Note) |
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J.R.Monterose (ts) Ira Sullivan (tp) Horace Silver (p) Wilbur Ware (b) Philly Joe Jones (ds) 1956/10/21 |
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人の味覚が年とともに変化するように、ジャズの好みも年とともに変化することが多いのではないだろうか。 コテコテからアッサリ系のジャズに移行するファンもいれば、あっさりテイストのものから、アクの強いジャズに好みが変化することもあるだろう。 あるいは、マイルス、ロリンズといったビッグネームを中心に聴いていた人が、隠れた通好みのジャズマンに好みが移行することもあるだろうし、逆に通好みのアルバムを中心にコレクトしていた人が、名盤の素晴らしさに改めて開眼することもあるだろう。 ただ、一般的には、最初は聴きやすいジャズ、というよりは演奏者の個性が掴みやすく、かつ、その個性が親しみやすいタイプのジャズマンから、アクの強い個性を持つミュージシャンに好みが移行するケースが多いように感じる。 たとえば、ハービー・ハンコックよりはハービー・ニコルス、レッド・ガーランドよりはフレディ・レッドというように、ジャズマンが持つ表現のクサみが強くなればなるほど、マニアのファンが増える気がする。 フランク・アンソニー・モンテローズ・ジュニアこと、J.R.モンテローズもその一人だと思う。 チャールス・ミンガスの代表作『直立猿人』にも参加しているテナー奏者ゆえ、知名度は低くはないはずだ。 しかし、大手をふってJ.R.モンテローズが大好きだというファンにはほとんどお目にかかったことがない。 もちろん、ジャズ喫茶のマスターや、レコードプロデューサーのようにジャズが「本職」の人たちには「モンテローズ? いいねえ!」と頬を緩める人には何人かお会いしているのだが、一般的なジャズファンとの会話では、そういえばモンテローズのことが話題の俎上に載ったことがない。 それだけ、マニア好みで、個性的なサックス奏者なのだろう。 彼の演奏は、一聴してモンテローズのものだとわかるほど個性的なものだが、では、その個性は果たして万人受けするものかといえば、必ずしもそうではない要素が多い。 まず、あの独特のくすんだ音色。 それにフレージングも独特で、特に「ぷっ、ぷっ」と鋭くスタッカートさせた短い音符を混ぜながら、あたかも聴き手が安易に予測する展開を拒むかのような蛇行したフレーズを織り交ぜて吹く一筋縄ではいかないところがある。 非常にユニークなテナーサックスを吹く人ではあるが、このユニークさはなかなか万人受けする要素のものではない。 しかし、彼が放つ強烈な音の佇まいに開眼すると、また聴きたくなってしまうという強烈な中毒性を含有していることもまた確かなのだ。 未聴の方は、まずは彼がブルーノートに残した唯一のリーダー作をオススメしたい。 濃いモスグリーンが基調のジャケットデザインが渋い味わいを見せるブルーノート1536番。その名も『J.R.モンテローズ』は、アイラ・サリヴァンがトランペットも参加している2ホーン・クインテットという編成だ。 モンテローズの初リーダー作でもある。 ピアノにホレス・シルヴァー、ベースがウィルバー・ウェア、ドラムスにフィリー・ジョー・ジョーンズというベテランをリズムセクションに迎え、モンテローズは存分に持ち味を発揮している。 まずは、1曲目《ウィー・ジェイ》に耳を通して欲しい。 ♪ぷっ、ぷっ、ぷっ…… と鋭いアタック音の連続吹奏からモンテローズのアドリブが始まる。 この音を聴くと、ミンガスの『直立猿人』に収録された《フォギー・デイ》を思い出す方もいらっしゃることだろう。 《フォギー・デイ》は、まるで車のクラクションやサイレンのような音を、ジャッキー・マクリーンのアルトと、J.R.のテナーが模して、都会の喧騒を演出するユニークなアレンジのナンバーだ。 この演出を考えたミンガスは、もしかしたら、エッジの鋭く、スタッカート気味に跳ねるJ.R.のプレイを聴いて閃いたのかもしれない。 この箇所のアレンジは、いずれにしてもモンテローズのテナーの音がなければ成り立たなかったと思う。 話を戻して《ウィー・ジェイ》についてだが、もちろんアドリブ出だしのインパクトだけではなく、演奏のほうも快調そのもの。 この曲は、テーマのメロディラインこと違えど、有名なスタンダード《アウト・オブ・ノーホエア》のコード進行が下敷きになっている曲だ。 したがって、おそらく参加ミュージシャンの全員が、一度ならずとも演ったことのある曲のはずだ。 この演奏の、いい意味でのほぐれ具合は、手慣れたいつもの進行の曲を演奏する気分に近いリラックス感によるものなのかもしれない。 モンテローズは、あえて流暢なニュアンスの間逆をいくアプローチが中心。 これはもしかしたら、コードの流れに特徴がある故に、すぐに原曲が分かってしまう《アウト・オブ・ノーホエア》の匂いを払拭する意図があったのかもしれない。 ファッツ・ナヴァロの《ノスタルジア》という曲も《アウト・オブ・ノーホエア》のコード進行が下敷きになった曲だが、こちらはメロウでレガート気味な吹奏がなされているため、いくらメロディを変えて吹いても、《アウト・オブ・ノーホエア》の面影が色濃く出てしまう。なぜかというと、《アウト・オブ・ノーホエア》のテーマのメロディ自体がメロウで流れるようなニュアンスだからだ。 しかし、モンテローズは、流麗な原曲の流れを断ち切るかのように、あえて持ち前の鋭い音色を有効に生かしたスタッカート的な奏法を多用している。これは、少しでも《アウト・オブ・ノーホエア》とは違う側面を見せようという彼なりの試みなのではないかと私は推測する。 というのも、この『J.R.モンテローズ』に収録されている演奏のすべてが、このようなアプローチだとは限らないからだ。 いずれにせよ、《ウィージェイ》は、彼の短めの音価が活きた演奏であると同時に、彼のユニークな個性が分かりやすい形で表出した演奏であることは間違いない。 また、アイラ・サリヴァンの気張り過ぎず、肩の力の抜けたトランペットも、J.R.のテナーと良い対比をなしていて、片時も耳を離せないオイシさ盛りだくさんの演奏となっているのだ。 彼のようなライト級のトランペットは、J.R.のようなクセのあるホーンがリーダーの場合は最適な組み合わせかもしれない。 1曲目の《ウイージェイ》のみの紹介にとどまらせていただくが、まずはこのユニークな1曲だけでも聴いていただき、J.R.モンテローズのユニークな個性をぜひとも味わって欲しいと思う。 |
| (2010/12/26) |
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