LIVE AT THE IT CLUB (Columbia)
- Thelonious Monk

 disk 1
  1. Blue Monk
  2. Well,You Needn't
  3. 'Round Midnight
  4. Rhythm-A-Ning
  5. Blues Five Spot
  6. Bemsha Swing
  7. Evidence
  8. Nutty
  9. Epistrophy〔Theme〕


 disk 2
  1. Straight No Chaser
  2. Teo
  3. I'm Getting Sentimental Over You
  4. Misterioso
  5. Gallop's Gallop
  6. Ba-lue Bolivar Ba-lues-are
  7. Bright Mississippi
  8. Just You,Just Me
  9. All The Things You Are
  10. Epistrophy〔Theme〕

Thelonious Monk (p)
Charlie Rouse (ts)
Larry Gales (b)
Ben Rilley (ds)

1964/10/31

モンクが作曲した曲の魅力は、“親しみやすさ”と、“一筋縄ではいかなさ”という一見相反する特徴がある。

有名な《ラウンド・ミッドナイト》や《ブルー・モンク》などは、非常に単純素朴なメロディゆえ、誰もが口ずさめるし、一度聴いたら誰もが忘れられないほど、特徴のあるメロディラインだ。
そう、モンク作曲のメロディは、“ジャズ童謡”とでも言っても良いくらいシンプルで分かりやすいのだ。

また、前述したメロディアスな曲に限らず、《エピストロフィー》《ストレート・ノー・チェイサー》のようなクロマチカルなメロディを特徴とする曲も、リフレイン(繰り返し)の多用によって、脳に刷り込まれやすい印象的な作りとなっている。

《ミステリオーソ》も、クロマチカルンではないが、単純で印象的なメロディラインのリフレインのみによってテーマが成立している。しかも、分かりづらいかもしれないが、形式はブルースだ。

さらに、もっと単純というか、これもメロディなんですかね?と感じる人もいるかもしれないが《エヴィデンス》という曲にいたっては、単音がぽつり、ぽつりと、流れるリズムの中に置かれているだけだ。
好きな私にとっては、この音数が極端に削がれた緊張感がたまらない。

いろいろと例を挙げてみたが、もちろん例外はあるにせよ、モンクの作り出すメロディ・ラインは、「単純」に聴こえるものが多いと言って良いと思う。

ただし、“一筋縄ではいかない”のだ。
ズラシがある。
シカケがある。

たとえば、先述の《ブルーモンク》。
ラスト4小節の小節を飛び越えたズラシ。4つでカウントを取りながら、正確にはなかなか口ずさめないのではないのではないのだろうか?
4分の4拍子に合わせたメトロノーム、あるいは手拍子のカウントでも良い。
リズムを一瞬はみ出したような「ヘン」な感覚、この譜割で良いのだろうかとよぎる不安。でも、12小節目にはキチンと元の拍子に戻っているという、ちょっとした“ズラし”による“仕掛け”。
同様の手法は、《リズマニング》《エヴィデンス》《ストレート・ノー・チェイサー》にも見られる。

リズムが難しいのは 《エヴィデンス》も同様だ。
1小節に弾く音が、たったの1音だけという箇所が多く、音の量が極端に少ない曲だが、その一音一音の置かれるタイミングが、とても絶妙。
小節の頭に、音がポツンと置かれているように聴こえるかもしれないが、実は、微妙なタメがある。ほとんどの音が、半拍休んだ後にポツンと弾かれているのだ。
手で膝を「1・2・3・4」と叩きながら歌ってみて欲しい。意外と難しいことに気が付くだろう。あるいは、やっているうちに頭の内側が痒くなってきてしまう人もいるかもしれない。

演奏したことの無い人はあまり実感がわかないかもしれないが、《エピストロフィー》の一見単純なクロマチカルな昇降を繰り返するメロディも、構成が単純なようでいて意外と複雑だ。
奏者はちょっとでも気を抜くと、自分が今どの場所を演奏しているのかを見失ってしまうような構造となっている。

《パノニカ》《リフレクションズ》などはシンプルで本当にしみじみするメロディラインだ。聴いている分には心地よくメロディが流れてゆく。
ところが、いわゆるツーファイブ進行(ジャズのスタンダードに多く見られるコード進行)のアドリブに慣れた奏者が、これらの曲にトライすると、指が一瞬引っかかること請け合い。曲の構造が、彼らの演奏慣れした凡庸なツー・ファイブの進行とは全く異なる構造で出来ているからだ。

一聴親しみやすく感じるモンクの曲も、楽器奏者にとっては一筋縄ではいかない曲が多く、だから、挑戦しがいがあるのだろう。
楽器奏者にモンク好きが多いのも、またモンクにトライするミュージシャンが多い理由も頷ける。
ソプラノ・サックス奏者のスティーヴ・レイシーなどは、たったの一曲を研究、練習するのに半年も費やしたこともあるようだ。

もちろん、楽器を演奏しない人も、何度もモンクを聴いているうちに、「そこはかとなくヘン」な曲の構造に何となく気が付くことだろう。

このいわゆる「モンク的」な構造に気が付けば、セロニアス・モンクというピアニストの魅力が増し、より一層中毒になってしまうこと受け合いだ。

そんなモンクを知るのに格好のライブアルバムがコレ、『ライブ・アット・ジ・イット・クラブ』だ。
先述した代表的なモンクの曲のほとんどが収録されている。
ライブということも手伝って、ドラムソロやベースソロが演奏の中に組み込まれている曲も多く、結果、長尺の演奏が多いが、演奏自体は非常にオーソドックスなのでモンクの曲の輪郭を知るには格好のアルバムだと思う。

2枚組みのCDゆえ、曲目が充実。初めての人がモンクを知るには適当なアルバムなのではないだろうか。
彼の代表レパートリーのほか、《オール・ザ・シングズ・ユー・アー》《ジャスト・ユー、ジャスト・ミー》のようなスタンダードも収録されているのも嬉しい。

これ!というインパクトは無い代わりに、何度聴いても飽きない白米のような味わいがあるアルバムだ。
(2002/10/19) 


Thelonious Monk | Charlie Rouse | Jazz Blog | Cafe Montmartre

←backward
homeJazz Albums

forward→


Copyright(c) Kumo Takano,
All Rights Reserved.