HANK MOBLEY (Blue Note) |
| - Hank Mobley |
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Hank Mobley (ts) Bill Hardman (tp) Curtis Porter (as,ts) Sonny Clark (p) Paul Chambers (b) Art Taylor (ds) 1957/06/23 |
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ブルーノート1568番のハンク・モブレイのリーダー作は、その名も『ハンク・モブレイ』。 私はレコード番号でブルーノートのアルバムを記憶するような真面目で博覧強記なジャズファンではないのだが、1568番の『ハンク・モブレイ』だけは、タイトルと番号をセットで覚えてしまっている。 自分のためというよりは、どちらかというと、マニア同士で交わす会話のためだ。 「ブルーノートの“ハンク・モブレイ”っていいよね」。 この言葉は、相手に伝わりにくい。 会話の前提が違うままに話が進行してしまう恐れがあるからだ。 こちらは1560番のアルバムについて語っているつもりでも、相手は「ブルーノートというレーベルに多くの録音を残した“ハンク・モブレイというテナーサックス奏者の演奏”が素晴らしいんだという一般論を語っているのだな」と誤解してしまう可能性が大いにある。 まぎらわしいので、このような誤解を避けるためにも面倒でも「ブルーノート1568番のハンク・モブレイっていいよね」と番号の補足を織り交ぜれば、相手は「ああ、1曲目が《マイティ・モー・ジョー》のアルバムね」と受け取ってくれるのだ。 そうすれば、前提としている内容が違うために生じる、話がかみ合っているようで、じつは噛み合っていないという事態は防げるのだ。 ま、最近は、このような会話が出来るジャズマニアが減ってきてしまっているようだが……。 ちなみに、同じようなことはジョン・コルトレーンの『コルトレーン』というアルバムにも当てはまる。 プレスティッジとインパルスという異なるレーベルから発売された同じタイトルの『コルトレーン』というアルバムのことだが、この場合は、「プレスティッジのほうの『コルトレーン』というアルバム」で大体相手には通じる。 さて、1568番の『ハンク・モブレイ』。 このアルバムでの目玉、と同時にこのアルバムの雰囲気を特徴づけているのは、やはり一曲目の《マイティ・モー・アンド・ジョー》だろう。 テナーサックス、アルトサックス、トランペットの3本の管楽器が奏でるリズミックなテーマから始まり、その直後に、「うにゃ〜っ」と登場するカーティス・ポーターのアルトにはなんともいえない味わいがある。 この瞬間が早くもアルバムのハイライト。「おっ、来た来た」とハードバップ好きなら、きっと身を乗り出すことだろう。 またジャッキー・マクリーンにも通ずる熱気と、さらにマクリーンがひしゃげたようなカーティス・ポーターのアルトサックスのソロが始まった時点で、もうハードバップ好きは、「そう、そう、そう、そう、コレなんだよ、コレ!」と感涙にむせぶことだろう。 また、このアルバムの特徴をもう一つ挙げるとすれば、きわめて抽象的な言い方なのだが、「ジャズ喫茶が良く似合う」アルバムだということだ。 ジャズ喫茶が良く似合うブルーノートのアルバムなど、いくらでもあるので、あまり巧い言い方ではないなと思いつつも、やはり、演奏内容、ただよう雰囲気、参加ジャズマンの適度なマイナーさ加減とB級ジャズマン(?)たちが繰り広げる、ハードバップ好きのB級グルメ欲を満たすおいしいプレイの数々。これらの要素が、とても良い按配と湯加減で気持ちよくブレンドされているのだ。 この「ハードバップ特有の美味しさ」を味わうには、もちろん自宅で聴くよりも、大音量かつ珈琲と煙草の香りの染み付いたジャズ喫茶という環境で、耳のみならず、鼻と耳にもマイルドな刺激が無いよりはあったほうが良いわけで、だからこそ“ブルーノート1568のハンク・モブレイ”は、ジャズ喫茶で聴きたい名盤だと私は感じているのだ。 特に2曲目の《フォーリン・ラヴ・ウィズ・ラヴ》では、ビル・ハードマンがミュート・トランペットのワンホーンでテーマを奏でるが、彼がテーマを吹き終えた一瞬のタメの後に、もっさりとモブレイが入ってきてテナーサックスのアドリブが開始されるが、このモブレイ独特の「もっさりとした」タイミングと音色、そして「もっさりとした」本当に微妙なんだけれども分かる人には「たまんねぇ〜」空気は、自宅のオーディオで聴くよりも、絶対にジャズ喫茶で聴いたほうが快感度が増すはずだ。 ピアノがソニー・クラークだということもポイントが高い。 彼のコクのあるピアノは、否が応でも「ジャズ喫茶なる雰囲気」を漂わす。 《バグズ・グルーヴ》のテーマでは、ソニー・クラークは管楽器の主旋律の伴奏をせずに、伸び伸びとシングルトーンでアドリブを奏でているが、伸び伸びとしていながらもシャキッとした流暢さとはほど遠い、どこかポロポロとブルースからはみ出るような重みのある音色と粘り気の成分を含有したピアノなのだ。 このようなクラークならではの微妙な引きずるような重さをたたえたプレイが、このアルバムの随所に光り、本当に微妙な箇所でもクラーク好きにはニヤリとさせる要素が多い。 楽しく、しかし、じっくりと音と向き合わせてしまう不思議な引力を持つピアニストだと思う。 このアルバムが持つ何の変哲もない、だがしかしハードバップには必要不可欠なエッセンス、そう、この時代の演奏に漂う特有の空気感、後ろに引きずられるようなバックビートの効いたリズムのスピード感と、アンサンブルの肉厚さ加減、微妙にオンボロなところ……などなど、これらの要素が過不足なく詰め込まれており、この特有の空気感が好きなジャズ好きは多いと思われるし、この筆舌に尽くしがたい雰囲気を愛する者こそ本当のジャズ好きなんだろうけれども、この雰囲気を力強く醸し出しているのは、じつは、ソニー・クラークのピアノの効果が意外なほど大きいということに気がつく。 そしてさらに、ソニー・クラークが参加している管楽器の演奏は、どれもこれもが押し並べてジャズ喫茶の雰囲気にしっくりとくることに、改めて気がつく。 もちろん、ポール・チェンバースのベースに、アート・テイラーがドラムという黄金のリズムコンビネーションの賜物もあるだろう。特に、リズムのスピード感という面においては。しかし、漂う空気感、なんともいえない煙草と珈琲と煙が似合うもっさりと心地よい重さを伴った空気を醸し出しているのはまぎれもなくソニー・クラークのピアノなのだ。 ハンク・モブレイを代表するアルバム、たとえば「モブレイ・ベスト3枚」のような企画には当てはまらないだろう。しかし、作品として彼のキャリアを代表しないにしても、このアルバムが放つ空気は、日本の古き良きジャズ喫茶の空気を代表しているといっても過言ではないと思うのだ。 今回は「にゅるり」「もっさり」「ポロポロ」などと、分からない人にはまったく意味不明であろう言葉を乱発してしまったが、ハードバップの快感の源泉、微妙なジャズマンの表現のクセ、特徴をうまく説明するのって、うーん、難しい!! |
| (2011/01/27) |
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