月光仮面のようなモブレイのジャケ写のブルーノートの1568番が『ハンク・モブレイ』で、
今回取り上げる1560番が『ハンク』。
うーん、まぎらわしい。
……と思っているのは私だけ?
地味ぃなジャケットデザイン。
およそブルーノートらしからぬジャケットワークだが、肝心の内容のほうは、かなり良い。
充実している。
ハードバップ好きにはたまらない内容で、躍動感に満ちた好盤だ。
特にドナルド・バードのトランペットがメロディアスなフレーズを連発し、印象深いフレーズを数えきれないほど放っている。
モブレイも負けじと……、と書きたいところだが、やはり華やかなトランペットの音色と、まるで事前に作曲をしていたんじゃないかと思うほどメロディアスなバードのプレイに比べると、一聴、地味。
しかし、よく聴くと、じつに味わい深いフレーズを吹いていることが分かる。
もっとも私の場合は、このモブレイの味わい深さに気づくまでは、結構時間がかかったが。
『ソウル・ステーション』のようなワン・ホーンものならともかく、トランペットとアルトサックスが加わった3管編成ともなると、モブレイの占める印象は相対的に低くなりがちで、「ジャズ耳」が育っていない時期は、どうしても派手な音色とフレーズに耳を奪われていた時期が続いたものだ。
今は、比較的余裕を持ってこのアルバムのモブレイの演奏を追いかけることが出来るが、モブレイの持ち味、グループの中での立ち位置、役どころを理解し、そこを含めてモブレイのことを丸ごと好きになるまでは、私と同様、人によっては時間を要するかもしれない。
会社でもこういうタイップの人がいると思うが、モブレイという人は、グループの中では、丁寧な仕事をするが、どうも目立たない存在だと思う。
分かる人には分かるし、陰ながら評価している人は少なくないんだけれども、リー・モーガンやドナルド・バードのような華のある営業マンにオイシイところどりをされてしまうきらいがある。
「今日も注文たくさん取ってきましたぁ!」
「あと一歩で契約とれそうですー!」
などと元気な声で会社に戻ってくるのが、リー・モーガンのように華のある営業マン。
しかし、月末や決算の時期に、個人売上の実績を集計してみると、意外にも、モーガンやバードのような華やか営業マンよりも、モブレイの売り上げのほうが高かったりする(笑)。
存在感が多少地味なだけで、じつは、いろいろな得意先に顔を出しているし、先方からも、「そんじゃモブレイさん、ひとつ、このプロジェクトにも参加してくれませんか」と声のかかり率も高い。
派手な仕事や、大規模プロジェクトからは縁遠いかもしれないが、中ぐらいの仕事を丁寧にこなし、これらの集積がいつのまにか、営業部ではトップを争う成績に落ち着いている。
なんだか、モブレイさんのようなタイプの営業マン、会社にいませんか?
リー・モーガンタイプのような、イケイケ調で鼻息荒い営業マンのほうが仕事をバリバリと精力的にこなしているように見えるが、その裏で、じつはクレームや返品も多かったり(笑)。
モブレイのブルーノートでのレコーディング量の多さからも、そのようなことを想像してしまう私。
実際、このアルバムでも、最初は明るいバードのトランペットの旋律に耳を奪われるが、次第に、じわじわとモブレイのプレイに引き込まれてしまうのも、モブレイの丁寧な仕事ぶりによるものだろう。
とくに、《タイム・アフター・タイム》が良い。
スローテンポに、メロウで流れるようなモブレイのテナーがよく似合う。
ラストのソロになったときの、微妙に効かせたサブトーン(すすすすという微妙なかすれ音)もよい。
もう1曲おすすめは、冒頭の《フィット・フォー・ア・ファンカー》。
いかにもモブレイらしい曲調。また、3管のアンサンブルだからこそ、より生きる曲調でもある。
1回、2回聴いた程度では、なかなかアタマにはいってこないメロディだが、聴きなれてくると、このアルバムの幕開けに相応しい、モブレイらしさ全開の曲だということが分かる。
ボビー・ティモンズのピアノもゴリンゴリンと的確に演奏をサポートしている。
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