BRILLIANT CORNERS (Riverside) |
| - Thelonious Monk |
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Track 1-3 Thelonious Monk (p,celeste) Ernie Henry (as) Sonny Rollins (ts) Oscar Pettiford (b) Max Roach (ds) 1956/10/09 & 15 |
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Track 4-5 Thelonious Monk (p) Clark Terry (tp) Sonny Rollins (ts) Paul Chambers (b) Max Roach (ds) 1956/12/07 |
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密度が濃く、なおかつ多彩な曲群、そして、モンク独特の味わいのあるアルバムだ。 あらゆる要素が渾然一体と、まるで闇鍋のように放り込まれ、グツグツと特濃な仕上がりに料理されているのに、それでもモンク風に仕上がっているところが、不思議で面白い。 ほとんどのジャケットで、帽子をかぶっているモンクだが、このアルバムのモンクは、珍しく帽子もかぶっていなければ、サングラスもかけていない。 そのかわり、たくさんのモンクが増殖して、グルグルと笑顔で回っているジャケットは、不気味を通り越して笑える。 ユーモラスでいて、なんだかワケの分からなさも潜んでいるところなど、彼の音楽そのものだと思う。 タイトル曲の《ブリリアント・コーナーズ》は、一言で言えば、「怒涛の“なんじゃこりゃミュージック”」とでも言うべきか。 33小節というヘンなサイズのテーマは(普通は偶数小節が1コーラスの楽曲が圧倒的に多い)、メロディも奇妙に歪んだ印象を受ける。 ソニー・ロリンズとアーニー・ヘンリーのサックスの二重奏に加え、モンク特有の不協和音的なピアノが混ざった、それはそれは、ブ厚く濁った鈍重なサウンドだ。 かと思うと、テーマが1コーラス終わると、一転して倍速のテンポにチェンジ。そして、軽快なテンポに耳が慣れはじめたところ、1コーラスが終わり、再び元のテンポに逆戻り。 この落差、この「落とし」っぷりの巧みさは、たしか『ジャズ批評』だったと思うが、モンクのことを「セックスの業師の如く」と評されていたことを思い出すが、それ以上に、この緩急は「SMの業師」レベルかもしれない(なんのこっちゃ?)。 アーニー・ヘンリーというアルト・サックス奏者は、31歳という若さで亡くなったことも手伝って、彼が参加しているアルバムは極端に少ない。 だから、知名度もそれほど高いとは言えない人だが、“『ブリリアント・コーナーズ』でアルトを吹いていた人”ということでは、けっこう有名だ。 名前は知らなくても、「ああ、あの人ね」という反応が返ってくることが多い。 それほど、このアルバムでの彼のプレイは、強烈な印象を残しているのだろう。 実際、『ブリリアント・コーナーズ』での彼のプレイは「やばい」(笑)。 やばい上に、妖しさも醸しでている。 彼のリーダー作を聴けば分かるのだが、もとより、エッジのとがったアルトを吹く人だが、「モンク効果」が加味されることによって、「やばさ」により一層磨きがかかっているのだろう。 同様のことはロリンズにも言える。 いつもの余裕たっぷりのプレイとは言いがたい。 しかし、不思議なことに、ロリンズらしくないといえば、まったくそんなことはないし、彼の演奏がダメなのかというと、むしろ良いのだから、不思議といえば不思議だ。 「モンク・マジック」とでも言うべきか。 つまり、モンクが「ぽん!」と投げかけたた問題を、ロリンズ、アーニー・ヘンリーらサイドメンが必死になって読み解こうとする。 モンク自身は、気軽に投げたつもりなのかもしれないが、他のジャズマンにとっては、不可解で、恐るべき難問。 懸命に解読を試み、さらに、演奏に自分らしさを出そうと、必死にモンクという重力圏から自由になろうとする。 自然、演奏に緊張感が漂う。そして、この緊張感も一流のジャズマンの手にかかれば、プラスに作用するのだ。 モンクの作った曲のこと、当然ながら、雰囲気においては、モンク色が強いことは否めないが、だからといって、モンクの曲がメンバーの個性を抑圧しているとも思えない。 メンバーに自由に演奏させつつ、ちゃっかり自分のカラーを出させてしまっている。 それも、マイルスのような「冷徹な編集の眼差し」による結果でもなく、どうやら「天然にそうなちゃった」的な感じがするので、もし本当にそうだとすれば、それは相当にスゴイことだと思う。 もちろん、それは共演者のレベルが相当に高くなければ実現しえない話で、この『ブリリアント・コーナーズ』が名盤たるゆえんは、サイドマンの個性を最大限に発揮させつつも、モンク的なカラーが濃厚に漂っているという矛盾が、ベストな演奏な形となって昇華されているからだろう。 私の場合は、何はさておいてもタイトル曲の「ヘンな魅力」ゆえに、このアルバムがお気に入りだが、『ブリリアント・コーナーズ』が好きな人の中には、ソロで演奏されている《アイ・サレンダー・ディア》が良いから好きだという人もいる。 たしかに、不思議な味わいのある演奏だと思う。 最初は、とっつきにくく感じるかもしれないが、モンク流の「美」は、底なしに深い。 超スローなテンポで演奏されている、《バルー・ボリヴァー・バルーズ・アー》も、重厚で、気だるくスイングしているので、私は好きだ。 私は、ここでのロリンズのソロが好きだが、アーニー・ヘンリーのソロもいい味出している。ロリンズのソロを喰ってしまうんじゃないかと思うほど、印象的なプレイをしている。クラスの中で、目立たない男の子が、実は、泣くと一番強かった、といったような感じだ(なんのこっちゃ)。 モンクが右手でチェレスタを弾いている《パノニカ》は、こんなにも臆面もなく可愛らしくて、ロマンス全開でいいのかしら?というぐらい、ストレートに情感がこぼれ出ている演奏だ。 モンクのチェレスタに2つの管楽器がかぶさる瞬間がとても好きだ。 「おおお、きたきたきた!」ってな感じで。 最後の曲、《ベムシャ・スイング》では、ベースがポール・チェンバースに変わっている。オスカー・ぺティフォードからチェンバースに変わった理由は、どうやら、モンクとの喧嘩のようだ。 喧嘩の原因は不明だが。 さらに、アルトのアーニー・ヘンリーが抜け、トランペットのクラーク・テリーが加わっている。 個人的には、流麗なクラーク・テリーのトランペットは、モンクと相性が良いと思っている。 特にテリーのリーダー作『イン・オービット』などは、互いの個性を殺しあわずに、モンクらしさ、テリーらしさが最大限に発揮された名盤だと思っている。 ただ、ここでのテリーのプレイは、『イン・オービット』ほど、奔放ではない。悪くはないのだが…。 この曲の目玉は、なんといっても、マックス・ローチのティンパニーだろう。豪快、強烈だ。そして、演奏に面白い効果を与えていると思う。 いつも疑問に思うのだが、後年、モンクは《ブリリアント・コーナーズ》をライブなどで再演していない。 なぜなのだろう? このバージョンが最高で、これ以上のものは生まれないだろうという判断からなのだろうか? それとも、作曲者自身にとっても、弾くのが難しかった?(笑) もっと、モンク自身による、様々なバージョンの《ブリリアント・コーナーズ》を聴きたいと思っているのは、きっと私一人だけではあるまい。 |
| (2002/05/18) |
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その昔、「Monkのページ」というサイトを作っていた。 そこに書いた『ブリリアント・コーナーズ』のレビューの一言が、 “怒涛のなんじゃこりゃメロディ”。 …いやはや懐かしい。 この言葉がキッカケで、この表現に共感を持っていただいた方と親交をもてたりもしているので、面白いものです。 もちろん今も、その感想に変わりはない。やっぱり、《ブリリアント・コーナーズ》は“なんじゃこりゃ曲”です。 正直、最初は私、この曲のよさがまるで分からなかった。 なんだかドンくさいメロディがズブズブと軟体動物のように空間に生えてきたかと思うと、いきなり速くなるし、ロリンズは“ぶほほほ”だし、アーニー・ヘンリーが“てらぁ〜、たらぁ〜”と妙に不気味甘いし、めまぐるしくかわる曲の展開と、少ない編成ながらも極彩色な万華鏡的世界に、目の前がくらくらくらぁ〜だったわけです。 この曲の変態さをよりいっそう理解するキッカケとなったのは、じつは大西順子の演奏を聴いてからだ。 初リーダー作の『WOW!』で、彼女がピアノトリオで演奏するバージョンを聴いて、ようやく作曲者・モンクの音楽的な意図がおぼろげながら見えてきた次第。 やっぱり、少人数編成のピアノトリオだと、曲の輪郭が見えやすいのかもしれない。 重厚なだけではなく、シャープな側面もある曲なんですね。 再び、オリジナルの演奏に戻ると、なんとスケールの大きな奇妙な音空間なことよ。ロリンズからも、アーニー・ヘンリーからも、実力以上の、何かを引き出しているんだよね、モンクは。 このアルバムで、アルトサックス奏者、アーニー・ヘンリーを知った方も多いと思う。 私もその中の一人だ。 少ないながらも彼にはリーダー作が出ているので、聴いてみたが、そこそこ普通のありきたりなジャズ。 そこはかとなくユニークな個性の持ち主だということは分かるが、《ブリリアント・コーナーズ》で見せた、奇妙なねじれ感覚は、彼のリーダー作からは聴き取ることは出来なかった。モンク効果の大きさを、逆に彼のリーダー作から知ることになったわけだ。 とにかく聴きこめば聴きこむほど、周辺のジャズを聴けば聴くほど、面白さが際立つ曲、それが《ブリリアント・コーナーズ》なのだ。 |
| (2006/02/01) |
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