TENNORMAN (Jazz West)
- Lawrence Marable

  1. The Devil And The Deep Blue Sea
  2. Easy Living
  3. Minor Meeting
  4. Airtight
  5. Willow Weep For Me
  6. Three Fingers North /li>
  7. Lover Man
  8. Marables

Lawrence Marable (ds)
James Clay (ts)
Sonny Clarke (p)
Jimmy Bond (b)

1956年08月

アルバムのタイトルが『テナーマン』。
だからなのだろう、ジャケ写は、テナー奏者の横顔がアップで大写しになっている。
「“ローレンス・マレブルというテナー奏者”がリーダーのアルバムなのだな」と誤解をしても仕方がないかもしれない。
いや、実際、私がそうだったんですが(笑)。

しかし、ジャケットの“テナーマン”はローレンス・マラブルにあらず。
彼の名はジェームス・クレイ。
リーダーのローレンス・マラブルはドラマーだ。

よく見るとジャケット写真の奥のほうで、うっすらとピンボケな姿でドラムを叩いているのがご本人。
西海岸の実力ドラマー唯一のリーダー作ながらも、この控えめな存在感。
ジャケ写の映り具合がまるでそれを象徴するかのように、演奏のほうも、彼はあくまで控えめなサポート役に徹している。

タイトルからも分かるとおり、あくまでこのアルバムのコンセプトは、“テナーマン”のジェームス・クレイをフィーチャーすること。
当時20歳だったジェームス・クレイのサックスは、流れるように流麗な吹奏ながらも、ところどころに出身のテキサススタイルならではの豪放さが出現する。サウンドはストレート、フレーズも直球。
特に、ザラついた太い中低域がギラリと垣間見る瞬間など、スーツの下に隠れたタフに鍛え上げられた肉体が見え隠れするような、そんな魅力がある。

ピアノはソニー・クラーク。
だが、とくに、ソニー・クラークだから特別にイイとか悪いとか、そういった特筆すべきことは特になく、可も無く不可もなく堅実な伴奏に徹しているのは、リーダーのマラブルと同様。

先ほど、ローレンスのドラムは控えめなサポートと書いたが、じつを言えば、それは“良く言えば”の話で、じゃあ“悪くいえば”というと、まったくもってリーダー的な存在感が無い。
ジェームズ・クレイの存在感の陰にスッポリと埋もれてしまっている。

もちろん、ドラマーがリーダーながら、演奏のサポートに徹してとくにドラムソロなどの自己主張を繰り広げない作品はたくさんあるが、それでも演奏の中には明らかにドラマーがイニシアチブを握っていると思われるポイントが必ず見つかった。

ところが、このドラマーがリーダーのアルバムは、陰ながらサポートするドラミングが本来の趣旨ながらも、音を聴く限りにおいては、ローレンス・マラブルはリーダーシップを発揮しているとはとても思えない。
ジェームス・クレイのグループのいちサイドマンにしか聴こえないところが面白い。

演奏自体は悪くないのだから、べつにドラマーがリーダーシップを発揮しようがしまいが、リスナーにとってはまったく関係のないことだが、演奏においてはジェームス・クレイのお株を奪われ、ジャケットにおいてもジェームス・クレイに主役のポジションを取られ、挙句のはてに、タイトルもドラマーのリーダー作とは思えぬ『テナーマン』。

しかも、彼の生涯のリーダー作は、この『テナーマン』1枚きり。

うーん、こういう人っているよなぁ。地味で押しが弱いゆえ、他のずぅずぅしい奴や狡い輩にオイシイところを持っていかれちゃう可哀相な人。
マラブルはまさにそういう人だったのでは?

つくづくジャズは、押しの強さで勝負が決まる音楽だと思う。

ま、リーダーは可哀相かもしれないが、演奏は悪くない。
クレイのサックスは、まだ“自分の言葉”を確立しきっていない固さのようなものもあるが、音の迫力と存在感がそれを補ってあまる。

日曜日の昼下がりにでも、珈琲をすすりながら、リラックスして聴きたいアルバムの1枚だ。
(2005/02/01) 


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