ORIENTAL SUN (タカギクラヴィア) |
| - MIYA |
|
|
Miya (fl,vo-per) スガダイロー (p) 渥美幸裕 (g) 2009年 |
|
|
|
楽器のデリケートな息づかい、震える空気感をたっぷりと体感できるアルバムだ。 Miyaさんは、お父さんが日本人、お母さんがイギリス人のフルーティスト。 私の番組にゲストでいらしたときは、ヨーロッパのファッションモデルがスタジオにやってきたのかと思うほど、スタイルよくクールビューティなお方だった。 背も高く、身長は私とほぼ同じぐらい。だけど腰の位置が私よりずっとずっと高いんだよな〜(笑)。 そんな美しいMiyaさん、ファーストアルバムの『グローブ・イン・モーション』や、この『オリエンタル・サン』のジャケ写イメージからは、クラシカルで優雅なフルートを思い浮かべるかもしれないが、実際のところは、かなりアグレッシブなフルートを吹く方だ。 一番最初に聴いたジャズフルート奏者がジェレミー・スタイグ。好きなフルート奏者がエリック・ドルフィーということからも分かるとおり、エレガントさの中にもアグレッシヴな攻撃性も同居した、コンテンポラリーなフルート奏者だといえる。 それは、このアルバムのパーソネルを見てもお分かりのとおり。 ピアニストが、ポスト山下洋輔の呼び声の高い“侍ピアニスト”スガダイロー。 ギタリストが、ソロ・プロジェクトthirdiq(サーディック)を始めとした活動を繰り広げる渥美幸裕。 この2人の新進気鋭のミュージシャン2人のみ。ドラム、ベースはなし。 つまり、フルートが主役に見えやすいフルート・カルテットのような編成ではなく、アグレッシヴなミュージシャンと1対1の対話に臨むかのようなフォーマットにトライしているところからも、彼女の意欲がうかがえる。 3人によるアンサンブルは《インスティンクト・モーメンツ1》のみ。あとはフルートソロか、ピアノかギターとのデュオによる演奏が占める。 シンプルな編成から生まれる音空間は、緊張と弛緩を絶え間なく行き来し、震える空気感、絶妙なニュアンス、息づかいを追いかけているうちに、いつのまにか“Miyaワールド”に引きこまれるという寸法。 完全即興演奏の《インスティンクト・モーメンツ1》のように、ニュアンス的にはフリージャズにも近い演奏もあるが、60年代、70年代の日本のフリージャズ的なアングラ感は感じられず、ソフトに洗練された楽器同士の知的な会話という印象が強い。 そういえば、彼女に「フリージャズ的な演奏もありますね」と言ったら、「私たちは、フリージャズとは言わずに“インプロ”と呼んでいるんですよね。フリージャズっていうと、難解というか、もっと重たいというか、高尚なイメージというか……」と仰っていたことが印象深かった。 たしかに、彼女らが繰り広げる演奏は、同じ即興演奏といえども、「フリージャズ」という言葉についてまわる、どことなく政治・思想・哲学などがセットになった語られそうな重苦しい雰囲気は皆無。 楽器奏者同士が互いに会話を交わしながら、サウンドを空間にデザインするアートワーク的な趣きを感じる。 個人的には、スリリングでありながらも、とてもコンパクトにまとまって聴きやすい《インスティンクト・モーメンツ1》を愛聴している。 文字通り“本能的な瞬間”。 つまり、Miya、スガダイロー、渥美幸裕の3人による完全即興演奏なのだが、いわゆる“フリージャズ”にありがちな、トゲトゲしさや毒気は皆無。 アグレッシヴであるが、それはあくまで音楽的な鋭さで、音以外のサムシング、たとえば情念がトグロを巻くような重たさとは無縁の世界だ。 「ビ・バップのチューンにもチャレンジしたかった」ということで選ばれたバド・パウエルの名曲《バウンシング・ウィズ・バド》は、フルートソロで演奏されている。とにかくスピード感を出したかったという急速テンポの演奏は手に汗握るスリリングさがあり、これも《インスティンクト・モーメンツ1》とともにオススメ。 三島由紀夫へのオマージュ的作品《美しい星》や《椰子の実》もなかなか良く、単に「美しいフルートの演奏」という一言では終わらない、フルーティスト・Miyaの多面的な魅力を放つ演奏だ。 「オリエンタル・サン=日本の太陽」というコンセプトのもと出来あがったこのアルバムは、読書や会話のBGMには不向きだと思う。 集中して耳で追いかけてゆか聴かないと、なかなかアルバムに封じ込められた空気が自分の中で解凍することが出来なまま終わってしまうと思う。 しかし、最後まで、音と音の空間、空気感、息づかいを丹念に追いかければ、このアルバムの面白さを感じることが出来ることだろう。 |
| (2009/12/04) |
|
|
|
|
All Rights Reserved. |