ART OF THE TRIO.vol.2 LIVE AT THE VILLEAGE VANGUARD (Warner Bros.) |
| - Brad Mehldau |
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Brad Mehldau (p) Larry Grendier (b) Jorge Rossy (ds) Recorded live at The Village Vanguard,NYC 1997/07/29-08/03 |
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一言で言ってしまえば、とても面白いピアノトリオだ。 刺激とアイディアに満ちている。聴けば聴くほど新しい発見がある。したがって、飽きることが全くない。 特にドラムが凄い。ピアノも凄い。 ベースは、えーと、正直、あまり聴いてません(笑)。というよりも、耳がピアノとドラムを追いかけるので精一杯なのだ。 バド・パウエルが編み出したピアノトリオの役割分担は、ピアノを三角形の頂点としたら、ベースとドラムは、三角形の底辺の両脇だった。 つまり、ドラムとベースは完全にピアノの従属楽器、伴奏楽器という考え方。 あくまでピアノを引き立てる役割がメインで、時おり“華”を持たせてもらうといった感じ。 図にすると、 p b―ds という感じですかね。 パウエルよりも後の時代。ビル・エヴァンス・トリオが新しく試みたピアノの表現形態は、三者対等のインタープレイ。ベースもドラムも、どんどんと積極的にピアノに絡んでゆく(と言われている)。 つまり、 b-p-ds といった感じですかね。 とは言われるものの、私はベースがピアノに積極的に絡んでゆき、ピアノを鼓舞しているのはよく分かるが、正直ドラム(ポール・モーチアン)は、それほど積極的に演奏に絡んでいっているようには聞こえない。むしろ、二人の絡みを後方から支えているという感じがするが、これって、私の聴き方が甘いんでしょうかね?(うん、甘いんだろうな) 図にすると、 b-p ds といった感じに私は聴こえる。 さて、ブラッド・メルドーのアート・オブ・ジ・トリオの場合はというと、ピアノとドラムが対等に前面に出ているといった感じ。 両者が支えあって前面に出るというよりは、お互いが独立して前へ出ている感じがする。 かといって、二人がバラバラなことをやっているというわけでもないところが微妙で面白い。 図にすると、 p―ds b といった感じでしょうかね。 ベースは地道に演奏をグッと支えているかわりに、ピアノもドラムもあれよあれよと一瞬にして彼方へと飛翔してしまう。この飛びっぷりが面白い。 疾走するシンバルの刻みの細かさといったら! ジョージ・ロッシーのシンバルの刻みはまるで速射砲だ。 殺傷力は弱いものの、発射速度の早いイングラム M11(サブマシンガン)から380オート(普通よりも一回り小型の弾丸)を巻き散らかしているかのようなシンバル刻み。そして、焼きそばの屋台の脇にある発電機をフル回転させているような、ブラシの回転速度。 いやぁ、早い早い。 スピード感満点。彼の鮮やかなドラミングだけでも十分に楽しめる内容だが、それに加えてメルドーのピアノが活躍するわけだ。 メルドーは、バツグンに面白いピアノを弾く。 メルドーは“現世”と“あの世”を行き来する達人だからだ。 硬質なタッチだが、光沢のある音色ゆえ、つまり色気のある音色ゆえ、“あっち”の世界に跳んでいってしまっても、聴き手としてはさほど違和感が無いのだ。 よくありがちな、「ははぁ、ここのコーラスからフリージャズっぽいアプローチに移行したいわけだな」と、聴き手に感づかれずに、いつの間にか“こちら”と“あちら”をスムースに何事もなかったように行き来するので、アグレッシヴで鋭利なピアノながら、非常に洗練されたものを感じる。 そんな二者対等な状態で突き進んでゆくヴィレッジ・ヴァンガードでのライブだが、モンク好きとしては、やはり《モンクス・ドリーム》の演奏が好きだ。 モンクの曲の核心を捉えつつも、メルドーならではの色を添えて料理をしている。 圧倒的な音で埋め尽くす中盤がハイライトだ。 メルドーの得意技、“左手・右手が別メロディ”が炸裂する。圧巻。 長尺演奏だが、まったく飽きることがない。 長尺演奏といえば、《ムーン・リヴァー》もいい。 間をたっぷり設け、さらに訥々とした調子で弾かれるピアノだが、弾いている内容はスルリと頭の中に気持ちよく入ってくる。 訥々さを装った、実は雄弁な彼のピアノの語り口を楽しめる。 ブラシの回転速度の小気味良さはさきほど書いたとおりだが、それを楽しめるのが《ザ・ウェイ・ユー・ルック・トゥナイト》。 滑った感じでテーマを奏でるメルドーのピアノのバックで恐ろしく高速回転するブラシの巧みさを味わおう。速過ぎて笑ってしまうかもしれない。 途中、スティックに持ち替えた瞬間のサウンドの切り替わりも聴きものだ。 コルトレーンの《カウント・ダウン》も面白い。 優雅な出だしとは裏腹に途中からいきなり“あっち”に行ってしまう。 つまり、例の“左手・右手が別メロディ”運動が延々と続くのだ。なかなかエキサイティング。 いつ“こっち”の世界に戻ってくるのだろうと手に汗握る楽しみがある。 以上、このアルバムの聴きどころをかいつまんで書いてみたが、まだまだ聴きどころはいっぱい。 エキサイティングかつ、高度な演奏が繰り広げられるので、正直、和みの世界からは程遠いことは否めない。 かなりの緊張感も強いられるかもしれないが、スリルと脳の刺激に満ちた緊張感もまた格別な心地よさなのだということを強調しておこう。 やっぱり、面白いピアノトリオです。 |
| (2004/02/20) |
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