LOOKING AHEAD (Prestige) |
| - Ken McIntyre |
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Ken McIntyre (as,fl) Eric Dolphy (as,fl,bcl) Walter Bishop Jr. (p) Sam Jones (b) Art Taylor (ds) 1960/06/28 |
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映画『ラウンド・ミッドナイト』冒頭のタイトルバックに流れる《ラウンド・ミッドナイト》をご存じだろうか? この不思議な音色はボビー・マクファーリンのファルセットだが、まるでミュートをつけたトランペットが歌っているようにも聴こえる。 それと同様、ケン・マッキンタイヤーとエリック・ドルフィーの共演盤『ルッキング・アヘッド』を聴くと、マッキンタイヤーのアルトも、まるで人の声。 楽器ではなく、人間がハミングを口ずさんでいるように聴こえる。 この“ヴォイス”は、あまりアルトサックスが鳴っているようには聴こえない。 まさに「肉声に近い楽器」といわれているサックスが、マッキンタイヤーによって肉声に近い音色を獲得している。 フラフラと上下する音程。 このフラフラと微妙に揺れるピッチと軽やかさで徘徊するフレーズ。 まるで、笑いながら口ずさんでいるようなアルトの音色は、聴き手の気分を和ませるに十分。 いや、それ以上に、私など、いつも聴くたびに笑ってしまうほどなのだ。 彼と共演している同じくアルトサックスのドルフィーのプレイを聴くと、いかに彼のアルトサックスは骨太で、フレーズも構築的なのかが、よく分かる。 音色。 芯の太いドルフィーと、薄くて軽いマッキンタイヤー。 音程。 少なくとも発音中には音程のよれないドルフィーと、 一音を鳴らしている間も音程がフラついているマッキンタイヤー。 フレーズ。 確信を持ってフレーズを構築しているドルフィーと、 とりとめもなく、気分にまかせて、ゆらゆらと鼻歌を歌っているようなマ ッキンタイヤー。 両極端な個性を持つこの両者の組み合わせは、不思議とうまくかみ合い、楽しい気分で聴けるジャズに仕上がっている。 真剣な顔つきになってしまうジャズは多いが、口もとがほころんでくるジャズはそう多くはない。 まさに、これが、そんな1枚。 ジャケットのケンちゃんは、ガンを飛ばして怖い顔だが、アルトのプレイは、和む、和む。 顔は怖いが和みの音色。 フィル・ウッズとジーン・クウィルのアルト対決は、どちらの演奏が誰のアルトなのか分かりにくいが、こちらの共演は、もうバッチリ。これほど分かりやすいアルト同士の共演(どうしても“競演”には聴こえない)はないのではないか? |
| (2009/01/05) |
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「哭きのサックス」という形容の当てはまるサックス奏者は何人かすぐに思い浮かぶが、「笑うサックス」という形容が当てはまるサックス奏者は、そう多くはいないだろう。というより、私にはケン・マッキンタイヤーぐらいしか思い浮かばない。 不安定なピッチ、揺れ動く音程、よれよれな音色、笛のように軽い音色など、サックスの演奏上、不利な要因がマッキンタイヤーの場合はすべてがプラスに作用していると思う。 軽やかで、まるで口笛を吹くような軽やかなプレイなのだが、そう感じさせるのは、彼の肉厚さのまったく無い薄っぺらな音色。 まるで甲高い声の黒人がハミングをしているような、そんな音色で、まるで鼻歌を歌うかのように、軽やかに彼はサックスを吹く。 ときおり、フレーズを拉げさせて、笑い声のような効果を出したり、不確かな音程のロングトーンを出すなど、非常に人間臭いサックスなのだ。 音色やピッチが独特すぎるのだ。 彼の初リーダーアルバム『ルッキング・アヘッド』には、多くの笑いの要素が詰め込まれている。 共演相手がエリック・ドルフィーという豪華なお膳立てだが、あの個性の塊ともいえるドルフィーのアルトすらマトモに聴こえてしまうほど、マッキンタイヤーのアルトサックスは独特。 構築的、理論的、タフで太いドルフィーのアルトに対して、マッキンタイヤーのアルトは、気分的、情緒的、おおらか、線が細い…などと、どこまでもスタイルはドルフィーの正反対。 《ラウティア》の笑うサックスはどうだ。 素朴な鼻歌を聞かされているようではないか。 後に出てくるドルフィーのフルートが対比効果で非常に饒舌に感じる。 《カーティシティ》も楽しい曲想だ。 テーマのラスト4小節のマッキンタイヤーのオブリガードが良い。 《ジョーズ・チューン》はアフロリズムから始まる、このアルバム中では一番エキサイティングなナンバーだ。 ケンもドルフィーもあるとのソロで、二人とも熱い。 ほのぼのとしたミディアム・バウンスの《ゼイ・オール・ラフト》。 ガーシュインの曲。 テーマのメロディを生かしたソロを取るマッキンタイヤーがほのぼの&しみじみ。 《ヘッド・シェイキン》は、テーマのメロディがなんともケンとドルフィーのアルトの音色のために書かれたようなメロディ。 テーマの次に出てくるリズミックなピアノが良い。一瞬ウイントン・ケリーかと思ってしまった。ほどよくダークな雰囲気。 ラストの《ディアンナ》はケンがフルート、ドルフィーがバスクラリネット。優雅なワルツの曲だ。一瞬、ドルフィーとブッカー・リトルによる《ブッカーズ・ワルツ》を思い出す。 締まりがあり、なおかつピチピととしたサム・ジョーンズのベースのピチカートも全編にわたって楽しめる。 「剛」のドルフィー、「柔」のマッキンタイヤー。 「直」のドルフィー、「曲」のマッキンタイヤー。 「難」のドルフィー、「単」のマッキンタイヤー。 同じ楽器同士でも、対極と言っても良い個性。見事な対比をなしている。 まるで、医学書と子供向けの絵本が同列に並んでいるようなギャップと、そこから醸し出る面白さが癖になるアルバムなのだ。 |
| (2002/11/17) (加筆修正:2010/11/15) |
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