HIGHWAY RIDER (Nonesuch Records) |
| - Brad Mehldau |
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Brad Mehldau(p,key,pump org,vo,orchestral bells,handclaps) Larry Grenadier(b, handclaps) Jeff Ballard(ds,per,snare brush,vo,handclaps) Matt Chanberlain(ds,pre,vo handclaps) Joshua Redman(ts,ss,vo,handclaps) Dan Coleman(cond,vo) and Orchestra. 2009/02/16-28 , 05/12-19 |
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先日ソウルに遊びに行ってきた。 電信柱やクレーンの写真を撮るのが好きな私は、カメラ片手に1日中市内を歩き回った。 市内には漢川(ハンガン)という大きな川が横たわり、この川には何本もの橋が架かっている。その橋の1つを渡る途中で、持参したiPodはブラッド・メルドウの『ハイウェイ・ライダー』のラスト曲《オールウェイズ・リターニング》をランダム選曲した。 微・緊張と微・非日常さを湛えたこの音像は、橋の中央から眺望するソウル市内のビルや団地群、仁王山(インウァンサン)をはじめとするいくつもの山々をドラマチックに彩り、不思議な異国情緒にひたることが出来た。 もちろん、このアルバムの原風景はアメリカ、それも郊外のハイウェイをイメージして作られた音楽なのだが、異邦人として、心の隅が微妙に緊張させながらフラフラと歩きまわる自分自身が捉える風景としっくりマッチしてしまう不思議さに驚きを覚え、同時により一層『ハイウェイ・ライダー』というアルバムに愛着を感じるようになった。 これはプレイヤーとしてのメルドウではなく、音楽家としてのメルドウを楽しめるアルバムだ。 力作2枚組。 しかし、2枚組だからといって、構えることはまったくないと思う。 リーダーが、ストイックな美意識と超絶テクニックの持ち主のブラッド・メルドウということもあり、期待と、それを上回るプレッシャーを感じたのは私だけではあるまい。 「ちゃんと聴かなければならない」→「しかし、2枚を聴きとおすには体力と気力が要りそうだ」というようなね。 しかも、ブラッド・メルドウ・トリオにオーケストラもバックにかぶさるのだから、耳を通す前から「大作」の匂いがプンプンと醸し出ている故、余計に聴く前からプレッシャーを抱いてしまいがちだ。 しかし、それは杞憂だということがすぐに気付くはず。 この『ハイウェイ・ライダー』は、重厚な力作というよりは、むしろ気楽な気分で聴けるアルバムなのでご安心を。 私は特にディスクの2枚目のほうを愛聴しており、ここ数ヶ月は、ほぼ1日1回のペースで聴き続けている。 もちろんディスク1も悪くはないのだが、ディスク2のほうが、緊張感が微妙にほぐれ、良い意味で気の抜けた按配が心地よいと感じる。 ま、真剣に鑑賞を繰り返すコアな人はディスク1のほうが完成度は高いと主張されるかもしれないけど。 もちろん気軽に聴ける親しみやすさと同時に、ある種の音楽的深さもあり、重厚で壮大っぽい(?)ナンバーもあるため、この弛緩加減が飽きずに聴き続けられる要因なのだろう。 特に2枚目の《スカイ・ターニング・グレイ》が好きだ。 このアルバムの中ではもっとも手の込んでいないストレート、かつアッサリ目な演奏なのだと思う。 ジョシュア・レッドマンが、おそらくは持てる力の4割程度でアッサリとテナーサックスで綴られるテーマの旋律には、のほほんとした余裕と、一抹の哀感が込められており、おそらくはこのアルバムの中ではもっとも力の抜けた演奏なのだろうが、なんともいえないしみじみとした味わいを出している。 ピアノソロの後に繰り広げられる、ジョシュアとメルドウのかけ合いも気持ちが良い。 時おり微妙にアウトしたフレーズで、ジョシュアのテナーに合いの手を入れるメルドウのピアノが、まったりとした雰囲気に適度なアクセントを加えており、そこのところがなんとも心地よい。 この《スカイ・ターニング・グレイ》は、『ハイウェイ・ライダー』中では、もっとも気合いの入っていないナンバーなのかもしれないが、そこがイイのだ。 人力ドラムンベース的ともいえるリズムの《イントゥ・ザ・シティ》や《カム・ウィズ・ミー》も現代アメリカ風な風情を醸しだしていて聴き応えがある。 これらのナンバーは、部屋でじっくりと腕を組んで“鑑賞モード”で聴くよりも、屋外で聞いたほうがより一層、風景に溶け込むナンバーなのではないか(実際、明洞で我がiPodが選曲したナンバーは、ジョシュアが千切れるようなソプラノ・サックスを吹く《カム・ウィズ・ミー》だった)。 たとえば「スターバックス」のような店でコーヒー片手に、あるいは渋谷や六本木の交差点でiPod片手に聴くほうが、リスナーの心象風景をよりオシャレに、より知的に彩ってくれるのではないかと思う。 タイトル通り、アメリカのハイウェイを意識して作られた作品であるだけに、音の向こう側に横たわる風景は正しくアメリカ的ではあるが、このアメリカ的な音風景のさらに向こう側に横たわるランドスケープは、日本であれ韓国であれ、どの街の風景にもきっと違和感無く溶け込んでくれるに違いない。 また、お洒落な店のBGMとしても最適かと。 行きつけのバーでも実験的にこのディスクをかけてもらったが、低ボリュームで無指向性のスピーカーから放たれるサウンドは、店内に漂うオシャレ度を数パーセント底上げしてくれた。 屋外でも店内でも、街の雑踏の中でも、日常から数センチほど遊離した非日常的気分を音で提供してくれるアルバムがメルドウの『ハイウェイ・ライダー』なのだ。 |
| (2010/10/22) |
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