電気 Standard Jazz (King Records) |
| - 水野正敏 |
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水野正敏 (el-b) 大徳俊幸 (p) 岩瀬立飛 (ds) クリヤマコト (p) 松山修 (ds) 2001/05/02 & 03 キング関口台スタジオ |
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ポンタ・ボックスの初代ベーシスト、そして現在は「フラジャイル」のベーシストでも有名なフレットレスベース奏者、水野正敏。 『ジャズ・ライフ』や『ベース・マガジン』など、楽器をやってる人向けの音楽雑誌にはよく登場する人なので、ご存知の方も多いと思う。 彼は、頻繁に雑誌や本にジャコ・パストリアスの奏法の解析を執筆していることからも分かるとおり、ジャコのベースを分析&語らせたら、同じくフレットレス奏者の濱瀬正彦と並んで日本では第一人者だろう。 彼の分析は、なかなか鋭いし、『偉大なる巨匠たちの軌跡 ジャコ・パストリアス』(リットーミュージック)というジャコの分析本で書かれている、“ベースの音色は、ベーシストの指の肉質で決まる”という記述にいたっては、目からウロコだった。 しかし、表面的な奏法はジャコと共通する部分が多々認められるものの、本質的にはまったくジャコとは正反対のタイプのベーシストだと思う。 違う人間に同じ服を着せれば、両者の違いがより一層浮き彫りになるのと同じ理屈だ。 ジャコと水野のベースの本質的な違いは何かというと、“グルーヴ感”。 この差は、大きい。 ジャコのベースは恐ろしいほどのグルーヴを持ち、たとえ単純なリフの繰り返しの曲や、単調なベースラインのときですら、驚くほど演奏を鼓舞させることが出来るが、水野のベースはまったくグルーヴしない。 平面的でノッペリとしている。 そして、どんなにテクニカルで速度のあるベースを弾いても、常にスタティック(静的)な印象を受ける。スピードはあるが“スピード感”が無いのだ。 また、同じフレットレス・ベースを使用していても、音価のコントロールやニュアンスのつけ方のレンジは、明らかにジャコのほうが広いし、ダイナミックだ。 それに反して水野正敏のフレットレスベースはよく言えば淡々とクールなのかもしれないが、悪くいうと一本調子。 この一本調子さ加減を、時折垣間見せるトリッキーな技で補っているような気がしないでもない。 また、ピッチもそんなに良いほうではないので、この音程の悪さがフレーズによっては、非常のペチャペチャした印象を受ける。もっともこのペチャペチャさ加減は、好みの分かれるところで、フレットレスベースの音色が好きな人にとってはたまらない音色なのかもしれない。 ベースのノッペリさ加減は、同じ“ジャコ派”のベーシスト、濱瀬正彦にも当てはまることなので(もっとも濱瀬のベースは、もっとグルーヴしていないが)、逆に言えばジャコの持っている体内グルーヴが、いかに凄かったのかということを逆に証明してくれるベーシストなのかもしれない。 もちろん、ここで一応フォローのために書いておくと、グルーヴがすべてだとは私は思っていないので、グルーヴしないベースも、演奏よければ、それはそれで面白いとも思っている。 ノリにも色々な種類があるし、すべてがノリノリじゃなきゃいけないといったような、ソウル信奉者やファンク野郎のような単純な割り切り方は、エゴイスティックで排他的な盲信だとすら私は思っているぐらいだから。 じわりと染みてくるグルーヴだってあるし、微妙な陰影を感じる“揺れ”だってある。 平面的だが、一音一音の積み重ねによって生み出されるノリもある。そう、水野正敏のベースプレイは、まさにそのようなノリに近い。 使用しているベースのタイプ、演奏のアプローチはジャコそのものだが、音から受ける印象はまったく異なる彼のベース。 むしろ、私は、水野正敏のベースは、ウッドベースのロン・カーターに近いものを感じる。 彼らが共通しているところは、 ・アイディアが豊富 ・切り口が多彩 ・ゆえに面白いベースラインや興味深いベースラインが多い →ベースをやっている人には“参考”になる点が多い ・音程が悪い ・音程の悪さをさらに増長させるような音色 ・芯がなくふにゃふにゃな印象の音色 といった点が共通している。 水野正敏のリーダー作『電気スタンダード・ジャズ』。 CDのオビには“4ビート・スタンダードをエレキ・ベースで弾くことを許された男”って書いてあるけれども、いったい誰が許したんだろう?誰かに許してもらわなきゃ、エレキベースで4ビートやっちゃいけないんだろうか、ああ、やばい、俺、誰の許可も取らずエレキで4ビートにやってるよ、なんて冗談はさておき。 そもそも、“4ビートはウッドベースじゃなきゃダメ”という前提があるからこそ生まれたコピーだと思うんだけど、サウンド良ければウッドだろうがエレキだろうが、ベースの種類は関係ないのでは?と、私は思う。 だって、 アンソニー・ジャクソンは? スティーヴ・スワローは? モンク・モンゴメリーは? でしょ? ウッドベースだって胴の鳴りを拾わずに、ピックアップで弦の鳴りだけを拾えば、エレキベースのフレットレスに近い音色がするし。 イメージやビジュアルの問題で、ウッドベースを弾いていてくれたほうが、なんとなくジャズっぽい雰囲気が出るというのであれば、それはそのとおりかもしれないけれども。 さて、『電気スタンダード・ジャズ』の中身。 《バイバイ・ブラック・バード》、 《イフ・アイ・ワー・ア・ベル》、 《グロリアス・ステップ》、 《マイルストーンズ》、 《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》、 《マイ・フーリッシュ・ハート》 カンの良い方ならお気づきかもしれないが、選曲は、マイルスやエヴァンスが取り上げたナンバーが中心だ。 偶然かもしれないが、たしかにこれらの曲は有名だし、聴くだけではなく、プレイヤー心をもくすぐるスタンダードでもある。 これらの曲をピアノトリオのフォーマットで料理しているのが、本アルバム。 オーソドックスなピアノとドラムを向こうに回し、8割オーソドックス、2割がリトルストレンジなベースを披露するような内容。 ほか、 《イパネマの娘》、 《ブルーセット》、それにバップフレーズ満載のオリジナルナンバーや、ジャズのブルースでは常套のツー・ファイヴ進行のブルースなどなど、選曲は、ジャズ研1年生や、ジャムセッションに参加するためには必聴の曲ばかりの選曲と言える。 芯の細い低音を、電気で“ぶよっ”と増幅して太らせたような音色は、個人的にはまったく好みではないが、時折出てくるトリッキーなフレーズは面白いし、他のプレイヤーからは顰蹙を買うかもしれないが、エレキベースを弾いている人にとっては、マネをしてみたいアイディアが豊富にちりばめられていることは確かだ。 感動はしないが、感心はする箇所はいくつか見つかるに違いない。 エレキベースで、4ビートのジャズもやってみたいという人にはオススメなアルバムといえる。 純粋に4ビートジャズを鑑賞したいという人には、ハッキリ言って全編聴き通すのはつらい内容かもしれない。 クリヤマコトのピアノは良いが、やはり水野のベースが良くも悪くもアクが強いのだ。 |
| (2003/11/21) |
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