アイアン・メイデンなどのヘヴィ・メタルのアート・ワークを連想してりまう、おどろおどろしいジャケットだが、内容は素晴らしい。
時代を反映してか、モーダルなアプローチも多々認められるが、基本的には、限りなくオーソドックスなハード・バップと呼んでも差し支えない内容だ。
だから、ブルーノートのハード・バップ好きには、たまらない内容なのだ。
マクリーンはもちろんのこと、ここでは、トランペッターのウディ・ショウが光っている。
彼のトランペットのふくよかなトーン、深みのあるトーン。
これに、マクリーンのちょっとくすんで、ほんの少しピッチがぶら下がっている(少し音程が低い)アルトのサウンドがブレンドされると、とてもオイシイ音色になる。
そして、彼ら2管によって奏でられる《スィート・ラブ・オブ・マイン》の素晴らしいこと。
この1曲のために『デーモンズ・ダンス』というアルバムを聴く価値は充分あると思う(もっとも他の曲も素晴らしいが)。
キャッチーで哀感溢れるメロディ。
おいしいコード進行。
それに乗っかる、印象的でメリハリのあるメロディ・ライン。
一度覚えてしまったら、ついつい風呂に入っているときなどに口ずさんでしまいそうだ。
この《スィート・ラブ・オブ・マイン》を作曲したのは、ウディ・ショウ。
なかなかの作曲のセンスだと思う。
日野皓正がよく演奏していたので、耳にしたことのある方も多いと思う。
しかし、このアルバムの聴きどころは、それだけではない。
ジャック・ディジョネットのドラムもなかなかパワフルだ。名演の続くこのアルバムの隠れた功労者といってもよいと思う。
特に1曲目のタイトル曲。モーダルな曲想と、スケールの大きい演奏。
いたるところにロールによるフィル・インが入るが、とても効果的な盛り上げ方だと思う。聴いているほうまで燃えてくる。
バラードも良い。
「ああ、やっぱり、マクリーンだなぁ」と思うのが、2曲目のバラード。
マクリーンならではの、哀愁たっぷりのアルト。このテイストは、マクリーン以外のなにものでもない。
モード奏法、新主流派との共演、フリー・ジャズ的なアプローチ(それどころかオーネット・コールマンとも共演している)、詩の朗読が入ったアルバムの吹き込みなどなど、様々なアプローチを試行錯誤していたマクリーンだが、結局のところ、方法論やアプローチの如何を問わず、終始一貫していたのは、「マクリーン節」だ。
どんなにヨソ行きの格好をしたり、奇抜なファッションで身を固めても、そして、どんなに都会的なイントネーションでよそ行きの喋り方をしても、どうしても漏れてしまう「マクリーン弁」。
我々、マクリーン好きは、こういった要所要所でポロっと聴こえるマクリーンの本音(=マクリーン節)をいつだって待ち望んでいるのではないだろうか。
そんな思いを抱かせるのが、2曲目の《トイランド》だ。
間違いなく、肩肘張っていない、いつもの素顔のマクリーンだ。
マクリーンは、ブルーノートにこのアルバムを吹き込んだ後は、5年もの間、引退同然となる。
ヨーロッパに渡り、スティープル・チェイスの記念すべき1号アルバムが復帰作となるが、それまでは長らくの間、シーンからは遠ざかっていた。
これが吹き込まれた1967年といえば、コルトレーンが亡くなった年でもある(7月17日)。
マクリーンの引退と、コルトレーンの死は、特に符号するものでもないが、この67年という年は、ジャズにとっても大きな転換を迫られていた時期だったのかもしれない。