CRAZY PEAPLE MUSIC (CBS/Sony) |
| - Branford Marsalis |
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Branford Marsalis (ts,ss) Kenny Kirkland (p) Robert Hurst (b) Jeff "Tain" Watts (ds) 1990年 |
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スティングのバンドに参加していたブランフォード・マルサリス。 1989年。 この時期の彼は忙しかった。スティングのワールド・ツアーの直後、映画『モー・ベター・ブルース』のサウンドトラックにも着手。 さらに、『モー・ベター・ブルース』の発表直前に、このような作品まで吹き込んでしまっているのだから。 この『クレイジー・ピープル・ミュージック』は、まぎれもなくブランフォード・マルサリスを代表する傑作だと思う。 私の拙い仕事上の経験からいうと、誰にも仕事には浮き沈みがある。 しかも、不思議なことに、忙しいときほど、人は良い仕事を残せるように感じる。 浮き沈み、好不調の激しいミュージシャンは、なおさらそれに拍車がかかることは想像に難くないが、89〜90年にかけてのブランフォードは疑いようもなく、精力的に音楽活動をこなし、しかも、実りのある成果を収めていたと思う。 私は、ロバート・ハースト(b)とジェフ・"テイン"・ワッツ(ds)を従えたブランフォードのトリオが好きだ。 機動力、トリオとしてのまとまり、演奏の充実度は申し分なく、現代の硬派なサックストリオとして一目も二目も置いていたものだ。 しかし、このトリオに今は亡きケニー・カークランドという頭脳、あるいは司令塔が加わっていたカルテットの音楽的充実度も捨てがたい。 すなわち、このアルバムのパーソネルだ。 贅肉を極限までそぎ落としたトリオでのストイックな演奏とは違い、カークランドの参加により、より一層、音楽的な広がりと色彩が増している。 職人カークランドは、自分のソロになると奔放なアドリブをとる一方、ブランフォードの後方に回れば、忠実な音楽の構築へと並々ならぬ手腕で貢献している。非常に自制心と攻守のバランスに長けた優れたピアニストなのだ。 カークランドが参加したカルテットは、ブランフォードのキャリアにおいてもベストなメンバーに支えられて幸福な時期だったに違いない。彼亡き今、それは、望むべくもないが…。 本アルバムにおいてのブランフォードのプレイは、様々なテナーサックスの巨人の影響と勉強の成果をまざまざと見せつける。 まずは、一番色濃いのがウェイン・ショーターからの影響。 予測不可避ながらも、ついつい耳が引き込まれてしまう不思議な世界観を垣間見せる旋律は、明らかにショーターからの影響。 ついで、演奏の展開や細かなフレーズの構築はコルトレーンそのもの。 特に、タイトルも韻を踏んでいる《ミスター・スティーピー》は、コルトレーンの《ミスター・P.C.》そのものではないか。 コルトレーン流のフレージングが満載された演奏だが、音の並びは一緒でも音から感じる切迫感や緊張感はコルトレーンのそれとはまったく違う。 ブランフォードの音の表情は、どこまでも余裕綽々としており、「皆さんが知っている有名なアノ曲を引用させてもらってます」と、愛嬌ある顔でペロリと舌を出しているようにも感じる。 ときおり激情にかられて吹く単純なフレーズや、なおかつ童心に返ったかのような伸び伸びとしたフレージングからは、アイラーやロリンズの影響も感じる。 しかし、ブランフォードは単なる器用なコピー屋ではない。彼らテナーの巨人の影響を一旦は飲み込み、再構成されて吐き出される色は、明らかにブランフォード流の色に染まっている。 まずは、先人の遺したテクニックを真綿のように吸収し、自分のものとしていること。しかし、先輩たちの音と違うところは、あくまで軽やかなニュアンスも強く感じられること。 ストイックさ70%に、やんちゃな遊び心30%といったところか。 この緩急のバランスが、トリオ編成になると、シリアスな演奏になると偏りを見せ、ときおり肩が凝ってしまうことは否めないが、このアルバムは“カークランド効果”とでもいうべき良い作用が働いており、最後まで耳の離せない内容となっている。 既に、現代のジャズ界においては、ベテランに位置するブランフォードだが、弟のウイントンに遅れて、彼の実力が世に知らしめはじめた時期の、みずみずしい演奏を楽しむことが出来るのが本アルバムだ。 後年のライブでのレパートリーとなる《スパルタカス》や《ランダム・アブストラクト》も収録されている。 |
| (2006/03/28) |
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