4,5 AND 6 (Prestige)
- Jackie McLean

  1. Sentimental Journey
  2. Why Was I Born?
  3. Contour
  4. Confirmation
  5. When I Fall In Love
  6. Abstraction

Jackie McLean (as)
Donald Byrd (tp)
Hank Mobley (ts)
Mal Waldron (p)
Doug Watkins (b)
Art Taylor (ds)

1956/07/13

ジャッキー・マクリーンのアルトサックスの魅力のひとつ。それは、誤解を恐れずに言えば「不器用なところ」が挙げられる。

ちょっとくすんだ音色のアルトサックス。
音程もちょっとフラット(実際の正しいピッチよりも低め)している。

熱気を帯びたサックスから発せられるフレーズも、テンポやタイミングによっては決して流暢とは言えない箇所も散見され、どちらかというと詰まった感じもする。

さらにテンポが速くなると、リズムへのノリ方も、多少つんのめり気味。

しかし、これらマイナス要素が、逆に「一度聴いたら忘れられない」という強力なトレードマークとしてリスナーの脳裏に焼きつくことも事実。

完璧過ぎるものは「当たり前」として素通りしがちな人間の意識だが、多少イビツだったり、引っ掛かりの要素があると、人はかえってその対象に愛着を感じることも少なくない。

「俺にはこれしか吹けないんだ!」という真摯さは音に十分過ぎるほど宿り、これにやられて虜となったジャズファンは数知れず。

上記にあげたマイナス要因が、いちどマクリーンのことが好きになってしまえば、すべてプラスの要素に転じてしまうところが面白い。

『4,5 and 6』は、《センチメンタル・ジャーニー》の名演で有名なアルバム。

タイトルの、3つの数字は、フォーマットを表す。

4人のカルテット、
5人のクインテット、
6人のセクステット。

3つの種類のフォーマットで演奏された内容が封じ込められている。

ドナルド・バード参加の演奏は、ブリリアントなバードのトランペットがマクリーンのアルトと良い対比をなし、マイルドなテナー、ハンク・モブレイが参加すると、マクリーとともに相乗効果的にハードバップな味わいが増す。

個人的愛聴曲は2曲ある。

まずは、このアルバムの看板ともいえる《センチメンタル・ジャーニー》。

落ち着いたテンポに、何の気取りも衒いもなく、ごくごく「普通」に有名なメロディを吹くマクリーン。

ブレイクの箇所でフレーズが詰まる瞬間もあるが、何故だかその箇所ですら心地よく感じてしまう。

この普通さ、さり気なさから醸し出す諦観まじりのゆるい気だるさ。
このフィーリングこそ正真正銘、ジャズだ。

もう1曲はラストの《アブストラクション》。
哀感漂うテーマからして、マクリーンの泣きを味わえる舞台装置は整っている。切々と聴き手に訴えかけてくるようなサックス。たまらなく哀愁。胸に迫ってくる真摯な演奏だ。
(2008/11/22) 

《センチメンタル・ジャーニー》が看板のアルバムだが、《センチメンタル・ジャーニー》以外の曲を中心に愛聴しつづけてきた。

たとえば、2曲目の《ホワイ・ワズ・アイ・ボーン?》とか、ラストの《アブストラクション》とか。

この2曲は、ほんと、イイ演奏だと思う。

マクリーンの『4,5&6』で《センチメンタル・ジャーニー》ばかり聴いている人は、ぜひ、この2曲も真剣にチェックしてみましょう。

……と言いたいところなんだけど、

だがしかし、ようやく最近、この《センチメンタル・ジャーニー》の“なんでもない魅力”に開眼してきた。

特別な意味なんてないのよ。
特別な仕掛けとか、演奏のすばらしさとかじゃないのね。

ふつうにふわっと吹いて、気合いの入る箇所には、きちんと熱が加わって、だけども、場合によっては、その熱量が上滑りしてしまうところもあったりで。

このマクリーンの演奏行為の過程そのものが愛おしく感じられるようになってきたのだ。

特別に深い意味はない。
深い意味がないところに、この演奏の魅力がある。

なにかの記念日に呑む特別な酒は、特別な旨さを感じるかもしれないが、そうそう人生に特別な日があるってわけでもない。

むしろ、平日になんの気なしに呑むビールの旨さってのもあるじゃない?

マクリーンの《センチメンタル〜》まさに、そんな感じ。

平日に呑む旨いビールに意味なんか求めちゃいけない。
それと一緒。

普通の日に、普通の気分で、普通に聴く、普通にいいジャズ。

特別気合を入れるわけでもなく、だからといって、まったく手を抜いているというわけでもない。

マクリーンの技量をもってすれば、平、平、凡、凡な中庸な出来の演奏かもしれないが、その演奏の中に、

「うーん、今日のビールもなんだか旨いねぇ」

と感じられることになった私は、また、少し年をとったわけである(笑)。

マル・ウォルドロンのピアノが奏でるなにげないイントロも、気だるく、い〜感じ。案外、この演奏のムード設定の要なのかもしれない。
(2009/04/14) 

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