REFLECTIONS (Prestige)
- Steve Lacy

  1. Four In One
  2. Reflections
  3. Hornin' In
  4. Bye-Ya
  5. Let's Call This
  6. Ask Me Now
  7. Skippy

Steve Lacy(ss)
Mal Waldron(p)
Buell Neidlinger(b)
Elvin Jones(ds)

1958/10/17

セロニアス・モンクの曲は、その楽想や構造の面白さゆえか、好んで取り上げるミュージシャンが多い。

しかも、ジャズ・ミュージシャンのみならず、ロック方面のミュージシャンもトライしている人が多いのだから、ジャンルの垣根を越えて、モンクの作った曲は、ミュージシャンにとってはチャレンジしがいのある曲が多いのだろう。

中でも、モンクの曲を精力的に取り上げたミュージュシャンとして真っ先に思い浮かぶのが、スティーブ・レイシーだ。

今回、スティーブ・レイシーを書くにあたり、周囲のジャズ好きの知り合い数人に、「スティーブ・レイシーのリフレクションズ、どう思いますか?」と、意見を聞いてみた。

すると、皆一様に、「スティーブ・レイシーか…」と一瞬曇った表情をした。
「嫌いなんですか?」と尋ねると、そういうわけではなく、嫌いというよりは、むしろ、苦手、いや、それ以前にあまり聴き込んだことがないので、どうコメントをして良いものか困っているような感じだった。

「だって、フリー・ジャズの人でしょ?」

とは、フリージャズが苦手な人からの反応。
彼にとっては、どうもフリージャズのイメージが強いサックス吹きのようだ。
たしかに、そういうアルバムもあるけれども、セシル・テイラーとの共演(『ジャズ・アドバンス』など)でそういうイメージを持っているのかもしれない。

「フレーズがさぁ、なんというか、リー・コニッツをもっとシンドくしたような感じなんですよ。ボクには、ちょっと疲れるなぁ」

とは、ハード・バップが大好きな人からの返事。
彼は、リー・コニッツ、というよりもトリスターノ一派の音楽が苦手らしい。
私はコニッツもトリスターノも好きだし、とりわけ、初期のコニッツが大好きだ。
というのも、当時のコニッツの演奏、たしかにフレーズはメカニカルな印象もあるし、口ずさみにくい複雑なメロディを演奏しているのかもしれないが、単に「歌」の無いシステマティックな指の運動ではなく、複雑なフレーズながらも、とても良く「歌っている」と思うのだ。

そんなわけで、個人的にはコニッツのサックスはかなり好きなのだが、自分も口ずさめないようなフレーズを奏でるジャズマンを苦手とする人もいるのだなと、思った。
つまり、彼が言うところによると、スティーブ・レイシーのフレーズは、コニッツ以上に素っ気無いと感じるので(あくまで彼の場合だが)、聴いていても自分自身とうまく同化できないようなのだ。

私の周囲、数人からは、

・フリー・ジャズの人
・とっつきにくい

というイメージをもたれているスティーブ・レイシーだが、私の感想は、彼らとは正反対だ。

彼のサックスは、どちらかというと素朴で、むしろ分かりやすいぐらいだと思っている。

セシル・テイラーら前衛的なジャズマンとの共演は、彼の表現力の「懐の広さ」を意味するわけで、決して、フリージャズという言葉から思い浮かべがちな、「難解」「フリーキー」などといった表現が彼の本質ではない。

むしろ、彼のルーツはシドニー・ベシェのようにオーソドックスでトラディショナルなジャズなのだ(そういえば、二人の音色は似ている)。
レイシーのソプラノ・サックスの音色は、単なる高音だけではなく、豊かな倍音をも含むふくよかな音色、そして、その音色から感じる印象には、ワビサビにも通じるような一抹の寂寥感もある。

そして、フレーズの紡ぎ方が、とても丁寧な人だと思う。
それは、彼自身の人柄なのかもしれないが、ハッタリ・フレーズが無い。
一音一音、意味のある音を選び、丁寧にフレーズを構築してゆくタイプだと思う。
そして、モンクのたった一曲を理解、マスターするために、半年の時間を費やしたという本人の証言もある通り、ある意味、非常に愚直で生真面目な求道者といったイメージが私にとってのレイシー像だ。

曖昧なフレーズや音はいっさい出さない。
音数は少ないながらも、一音一音になにがしかの意味が暗示されているような感じさえ受ける深い音色とフレーズ。
この『リフレクションズ』というアルバムを聴いただけでも、そのことは理解していただけることと思っている。

彼はプレスティッジに3枚の録音を残しているが、この全曲モンクの曲で構成された『リフレクションズ』というアルバムは、は初リーダー作の『ソプラノ・サックス』に続く2枚目のアルバムだ。

この作品に参加しているのは、ピアノにマル・ウォルドロン、ベースにブエル・ネイドリンガー、ドラムにエルヴィン・ジョーンズという布陣。
リズムセクションの面子を見ると、一瞬、なんだか激しくて、相当にクセのあるサウンドを想像してしまいがちだが、意外とそうではなく、各人が好サポート、レイシーのソプラノをあくまでも引き立てた、非常に聴きやすい演奏だ。
贅沢を言わせてもらえれば、パーソネルのわりには、ちょっと躍動感に乏しく、おとなしめの演奏とかな?とも思えるが、演奏自体は決して悪いわけではない。
思ったよりオーソドックスなバッキングなのかな?と個人的に思うだけだ。

ピアノのマル・ウォルドロンの好サポートが光っていると思う。
マル自身、出てくる音は違うものの、モンクからの影響を色濃く受けているピアニストの一人だ。
モンク的なタッチを注意深く避け、しかし、モンクのニュアンスから逸脱することもなく、あくまで自分自身のタッチでモンクの曲に色付けする姿勢には、とても好感が持てる。
その上、レイシーのソプラノと、マルのピアノは、とても相性が良いと思う。
事実、70年代、80年代と、レイシーとマルは度々コンビを組んで演奏している上に、モンクの曲も数多く取り上げている。

いまだに、モンクは取っつきにくくて聴かず嫌いな人は多いようだが、モンクの曲の輪郭を知る上でも、「外側から見たモンク」としての本アルバムを聴いてみるのも面白いかもしれない。
良い意味で、アクの取れたモンクの曲を楽しめると思う。
オーソドックスな演奏なだけに、逆にモンクの曲の持つユニークさが際立つのではないかと思う。
だからといって、単なるモンクの曲のショーケースで終わっていないところもサスガ。

モンクのアルバムを数枚聴いた後に、このアルバムを聴けば、モンクへの理解も深まる上に、このアルバム自体も楽しめるんじゃないかと思う。

《アスク・ミー・ナウ》、そしてタイトル曲の《リフレクションズ》が個人的な愛聴曲。

スローなテンポに、レイシーのあの音色。
しみじみとして、とても良い感じ。
(2002/03/28) 


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