BOOKER LITTLE (Time)
- Booker Little

  1. Opening Statement
  2. Minor Sweet
  3. Bee TeeI's Minor Plea
  4. Life's A Little Blue
  5. The Grand Valse
  6. Who Can I Turn To

Booker Little (tp)
Tommy Flanagan (p)
Wynton Kelly (p)
Scott LaFaro (b)
Roy Haynes (ds)

1960/04/13 & 15

ブッカー・リトルのトランペットの音色は、常に形容したがい哀しさを湛えている。

色にたとえると“青”というよりは“蒼”。
この色彩は、晴れて澄み渡った秋空の深みを思わせるものがある。

彼は、エリック・ドルフィーとの双頭コンボを組み、ファイヴ・スポットで、歴史的な名演を残したり、同じくドルフィーをサイドマンに迎え『アウト・フロント』というリーダー作を吹き込んだりと、かなり先鋭的なこともやっていたトランペッターだが、どんな演奏においても、彼のトランペットの音色は、ほんのりと一抹の哀しみを帯びた“ブルー=蒼”に彩られていることには変わりがない。

そいうえば、このアルバムにも《ライフ・イズ・ア・リトル・ブルー》というタイトルの曲がある。
なんて良いタイトルなのだろう。
まさに彼のトランペットそのものではないか。

そして、この音色とフレーズが、とてもこちらの心に“来る”のだ。

彼のトランペットの特徴は、マイルスのようなトランペットとは違って、抑揚があまり無い。細かいところにまで微妙なニュアンスを込めず、どちらかというと“ぷわぁぁ〜”と、一本調子で吹く感じがする。

しかし、だからといって単調なわけではない。
飴色のツヤをした、蒼色の音そのものが魅力的なのだ。

このアルバムはマイナー調の曲が多いが、このような独特の音色で吹かれているので、哀しくないのに、じんわりと哀しい気分になってくるので注意が必要だ。

しかし、マイナー調の曲だけではない。
《ザ・グランド・ヴァルス》という曲。この曲はメジャーだ。
ドルフィーとの共演で、ファイブ・スポットのライブでも演奏されている。
演奏の模様は『メモリアル・アルバム』に収録されているが、なぜかタイトルが違っていて、この時のタイトルは《ブッカーズ・ワルツ》だが、曲は同じだ。

このアルバムの演奏は、賑やかで華やかな『メモリアル・アルバム』の演奏よりも、グッとテンポを落として演奏されている。
この曲のメロディを、語りかけるように、一本のラッパでしみじみと吹かれると、マイナー調ならずとも、ジワリと哀しい気分になってくる。
この演奏は、何か哀しいことがあった時には聴かないほうが賢明かもしれない。哀しみが増幅される可能性がある。

音色、語り口とともに、蒼く、物哀しいブッカー・リトル。
そんな彼の資質がもっとも良く出たアルバムがタイム盤の『ブッカー・リトル』なのだと思う。

この音色と、この旋律。
秋の夜長に、ひっそりと耳を澄ますのも良いかもしれない。

パーソネルも特筆に値する。
ベースがビル・エヴァンスとのインタープレイで有名なスコット・ラファロ。
このアルバムでは、堅実な4ビートに徹したバッキングだが、ベースライン作りのセンスの良さも味わえる。安定したビートを奏でる彼もなかなかだし、心地よい。

ドラムのロイ・ヘインズも繊細でなドラムワークで、あくまでフロントを立てるプレイに徹しているので、好感が持てる。

ピアニストは2人。トミー・フラナガンとウイントン・ケリーだ。
ケリーは3曲目と4曲目、残りの曲はフラナガンという分担となっている。
フロントをのせるタイプのケリーに、フロントを支えるタイプのフラナガン。
バッキングのタイプは微妙に異なるが、2人ともバックに回ればピカイチのサポートをするセンスの良いピアニストなことには変わりがない。
個人的には、『ザ・グランド・ヴァルス』のフラナガンのピアノソロが好きだ。

ところで、このアルバムのジャケットは、とても素敵だ。
トランペットの3本のバルブの部分をクローズアップした手描きのイラストだが、シンプルながら、とても味わいの深いイラストだと思う。

手描きのトランペットといえば、マイルスの『クッキン』のジャケットもそうだ。
このジャケットも私はお洒落で大好き。

マイルスといえば、60年代のマイルス・クインテットのメンバーに、ウォレス・ルーニーがトランペットで加わった『ア・トリビュート・トゥ・マイルス』のジャケットのトランペットも、味のあるタッチのイラストだった。
そういえば、「いーぐる」というジャズ喫茶のロゴマークもトランペットだ。
昔の看板というかロゴのイラストは、デヴィッド・サンボーンの『ハイダウェイ』のジャケットを彷彿とさせるテイストだった。
多角形の図形を組み合わせたピアノとピアニストのイラストで、この絵柄も私は好きだった。
ところが、最近の「いーぐる」のロゴマークは、シンプルなトランペットだ。
真横から見たトランペットを、『ブッカー・リトル』のジャケットのテイストに似たタッチで描かれた、可愛らしいトランペット。
私はけっこう、このロゴも好きだ。

トランペットという楽器は、絵になりやすいのだろうか、それとも描きやすいのだろうか、イラストがサマになりやすい楽器なのかもしれない。
(2002/10/21) 

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