SUBCONSCIOUS-LEE (Prestige)
- Lee Konitz

  1. Progression
  2. Tautology
  3. Retrospection
  4. Subconcious-Lee
  5. Judy
  6. Marshmallow
  7. Fishin' Around
  8. Tautology
  9. Sound-Lee
  10. Rebecca
  11. You Go To My Head
  12. Ice Cream Konitz
  13. Palo Alto

track 1-5;
Lee Konitz (as)
Lennie Tristano (p)
Billy Bouer (g)
Arnold Fishkin (b)
Shelly Manne (ds) ※except #5

1949/01/11

track 6-9;
Lee Konitz (as)
Sal Mosca (p)
Arnold Fishkin (b)
Denzil Best (ds) ※6-7 only
Jeff Morton (ds) ※8-9 only

1949/06/28

track 10-13;
Lee Konitz (as)
Billy Bouer (g)
Sal Mosca (p) ※12-13only
Arnold Fishkin (b) ※11-13only
Jeff Morton (ds) ※11-13 only


1950/04/17

矛盾するかもしれないが、私は初期のアート・ペッパーも好きだが、同時に初期のリー・コニッツも好きだ。
フレーズの端々に、情緒と湿り気を適度に絡ますペッパーと、そのようなものはほとんど絡ませない、聴きようによっては、ちょっと無愛想な感じのコニッツのアルト・サックス。
二人とも白人アルト奏者で、スタン・ケントン楽団に在籍していたという共通点もあり、音色にしたって、パッと聴きでは、一瞬どちらがどちらか区別がつかないこともあるソフトな音色の彼らだが、彼ら二人の本質はまったく違う。

内側で熱く燃えている「サックス魂(?)」のほとばしりが、どう表出するか。
両者の特質が大きく浮き彫りになるのは、ここのところだ。

ペッパーは時に激情的なまでに剥き出しになる瞬間がある。
しかし、コニッツの場合は、あくまで頑なだ。たぎる情感をストレートに剥き出しにすることを潔しとしない「美意識」のようなものがあるような気がする。
もっとも、それは、彼の師、レニー・トリスターノによるクール・コンセプションによるものが大きいのかもしれない。
コニッツは今でも現役で活動しているが、年を取るにしたがって、少しずつウォームなトーンに変化をしてきているし、フレーズの端々に情緒が絡むことが多くなってくる。「本音」が漏れる瞬間も多くなり、親しみやすさのような点では上だと思う。
したがって、ストイックなスタイルのコニッツは、師匠・トリスターノの呪縛とも大きく関係しているのかもしれない。
クール時代のコニッツ以降のコニッツが好きだという人も多いと思う。

しかし、私の場合は、やはりクール時代のコニッツが好きだ。
彼の技量と音色が、トリスターノの理論にすごくマッチしていると思うのだ。特に『サブコンシャス・リー』の頃の切れ味鋭い彼のアドリブが好きだ。

音色やフレーズの最後の音色のエッジは冷たく尖っているのだが、アルトサックスの音色は柔らかくて、気持ちのよいヒンヤリ具合。
それでいて、冷血動物ばりなサックスかというとそうでもなく、熱くたぎる情熱を臆面もなく表に出すことなく、内側では熱い炎が燃えている感じ。

熱くて、ヒンヤリとして、柔らかくて、鋭い。

この、矛盾した形容をコニッツは、すべてバランスよく両立させているのだ。
言葉での表現には限界があるが、初期のコニッツを聴いたことのある方なら、納得していただけることと思う。

色々と彼のアルバムを聴いてきたが、彼のベストは、ヴァーヴの『モーション』か、本作『サブコンシャス・リー』だと思っている。
この「ベスト」とは、個人的な思い入れと、客観的に判断した演奏の凄さの両方を含んでいる。

前者をアドリブ一本にかけた凄みと、エルヴィン・ジョーンズの叩き出すリズムの躍動感だとすれば、この『サブコンシャス・リー』は、全体のサウンドの肌触りだろう。
「未来のジャズ」と言い切ってしまっても良いような不思議なクールな世界が展開されているのだ。
ビリー・バウワーのギターとのデュオの《レベッカ》なんて、1950年、つまり昭和25年に録音された作品だなんて、にわかには信じられない。
もちろん、今年や来年に録音されても信じられないと思うんだろうけど、それだけ未来的、というよりも、別の世界から聴こえてくる不思議なバラードのようなのだ。

45年にトリスターノと出会い、その音楽理論に共鳴したコニッツ。
いち早く ビ・バップの影響圏から脱却して、彼は、トリスターノ・スクールの門下生としてクール・コンセプションの創造に邁進する。
既存の曲のコード進行を拝借し、新たなメロディを創造するところなど、たしかに手法的にはバップの影響もあるが、バップの考えかたを土台に、独自のアイディアを付け加えたクール・コンセプション。
その最大の違いは、サウンドの肌触りだ。
すなわち、ビ・バップが即興演奏の熱気とスリルを持ち味だとすると、トリスターノ派は、「即興の熱狂」を知的にコントロールし、クールなスリルを生み出すことに価値を見いだした。
ビ・バップ的な熱狂とはまた違う、緊張感を孕んだ演奏スタイルと、コニッツの冷ややかで心地の良いアルトの音色は絶妙なマッチングを見せたと思う。

「サブコンシャス・リー」=「潜在意識下のリー」。
後年、「あのときの自分は本当に自分だったのだかよく分からないんですよ」と語ったコニッツだが、それほどまでに、切れ味鋭いアドリブの連続なのだ。
と、同時に不思議な情緒も感じられる。
《レベッカ》というバラード同様、私は《ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド》の冷ややかな感触、まるで冥王星で吹かれた子守唄のような冷たく寂しい感触も好きだ。
トリスターノ作曲の《ジュディ》というバラードも、トリスターノのピアノと、ビリー・バウアーのギターの絡みが素晴らしい。

と、バラードのことばかり書いているが、アップテンポの演奏も好きだ。
特に、タイトル曲。
これは何回聴いても歌えない、口ずさめない。
パーカーの《ドナ・リー》以上に、私にとっては難解なメロディラインだ。
ところが、歌えないんだけども、すごく惹きつけられてしまう。不思議な魅力を持つ曲だ。
スピード感のあるアドリブと、淡々としているが勢いのあるリズムが最高だ。

同様に《トートロジー》も素晴らしい。
コニッツのアドリブも切れ味抜群。
まだまだ紹介していない曲もあるが、『サブ・コンシャス・リー』の中でのコニッツの演奏は、どれもが素晴らしい。
やっぱり、初期のコニッツはたまらない。

ちなみに、このアルバムは、プレスティッジの記念すべき初レコーディングだ。
(2002/04/24) 


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