THE MAGNIFICENT (Blue Note) |
| - Thad Jones |
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Thad Jones (tp) Billy Mitchell (ts) Barry Harris (p) Percy Heath (b) Max Roach (ds) Kenny Burrell (g) #7only 1956/07/14 #1-6 1956/07/09 #7 |
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学生の頃、コンビニでバイトをしていたことがある。 主に夜勤をしていた。 勤務時間は長いが、まとまったお金が手に入るので、週に1回のペースで夜勤のシフトを入れていた。 夜の10時に店にインして、解放されるのはたしか翌朝の8時か9時。 勤務時間が長いことに我慢し、襲いかかる睡魔に打ち勝つことさえ出来れば、比較的ラクな仕事だった。夜中の0時を過ぎた瞬間に、賞味期限が過ぎた弁当やらオニギリを食べられるのが嬉しかった。 さらに、この仕事のオイシイところはもう一つあった。店内の有線のチャンネルを自由にいじれたことだ。 いや、本当はいじってはいけなかったらしいのだが、私は店長がいないタイミングを見計らって、積極的にツマミを回していた。 もちろんチャンネルは“モダンジャズ”。 ボリュームも気付かれないように1目盛りほどアップさせていた。 モダンジャズの4ビートが流れるなかで、仕事をしていたので、とても快適に仕事をすることが出来た。 選曲はもちろん出来ないが、12時間近く“4ビート漬け”になれるわけだし、深夜の客の少ない時間帯は店の漫画や週刊誌やコミックや、持参した本を読むこともできたので、こんな幸せが他にあろうか。 知っている曲が流れれば、レジを打つ手もはずむし、知らない演奏が流れても、うむ、このピアノはウイントン・ケリーに違いない、などと、勝手にブラインドごっこを楽しめたので(たぶんハズレていたと思うが)、退屈どころか、私にとっては“ジャズを聴けてお金をもらえるオイシイ仕事”だった。 必ず睡魔に襲われる時間帯があった。 何時だと思う? 深夜の2〜3時? それとも、明け方の5〜6時? いや違うのだな。 一番睡魔に襲われるのは、実は、朝の6時から7時の間なのだ。 深夜の2〜3時というのは、客は少ないが、漫画や小説に夢中になっている時間帯なので、眠くならない。 それに、ロス(賞味期限切れの食べ物)で回収したプリンやサンドイッチや弁当やイナリ寿司を食べながら、ジャズを聴き、さらにタバコを吸い、コーラを飲みながら漫画本を堪能する“パラダイス時間”なのだ。 つまり、眠くなるのが勿体無い時間帯。 では、明け方の5〜6時は?というと、意外と忙しい時間なのだ。 まず、雑誌や新聞が届けられる時間なので、並べなければならない。並行して古い雑誌は返品の荷造り。けっこう時間を食う上に忙しいのだ。 さらに、早起きおじさんたちが、スポーツ紙と缶コーヒーをセットで買いにくるので、レジからは離れられない。 で、それが終わり、一息つく時間帯が、6時から7時の時間帯なのだ。他のコンビニはどうだか知らないけど、私がバイトをしていたところは、そうだった。 カウンター内の折りたたみ椅子に座り、足を組むと、次第にうつらうつらしてくる。 もちろん、お客さんが店にはいってくると、自動ドアと連動して、アラームが“ピポ・ピポ・ピンポーン!!”と鳴るので、「おっと、いけねぇ」と目が覚めるのだが、客が来ないと、かなり深いマドロミの世界に落ちてゆく。 で、必ずといって良いほど、私が眠くなる時間帯に店内に流れるのが、サド・ジョーンズとケニー・バレルのギターが柔らかい、《サムシング・トゥ・リメンバー・ユー・バイ》なのだ。 ケニー・バレルの柔らかいギターは、これ、絶対、マドロミを助長させる。 ジャズ版「寝ん寝んころりよ・おころりよ〜」だ。まるで赤ちゃんを音でやわらかく包みこむようなギターだ。 さらに、優しく、寝ている子を起こさないようなメロウで柔らかいトランペットを吹くサド・ジョーンズ。 この二つの音色が合体したら、「はい、寝ましょう、寝てくださいね」と言わんばかり。 まるで、消灯時間を告げられているようだ。 もう随分前の話なので、記憶が改竄されている可能性もあるが、それでも、朝方の私の“マドロミタイプ”には狙ったようにサドとバレルの《サムシング・トゥ・リメンバー・ユー・バイ》が必ず流れていたような気がする。 ブルーノート1527番、サド・ジョーンズの『ザ・マグニフィセント』は、マックス・ローチのブラッシュワークが印象的な《パリの四月》で有名な盤だが、私にとっては、ラストの《サムシング・トゥ・リメンバー・ユー・バイ》。 いずれにしても、持てる力の7分までにセーブした、穏やかで柔らかな演奏を楽しめる好盤だ。もっとも、私の場合、この“渋い柔らかさ”の良さに気付くまでにはある程度の歳月を要したが……。 カッコつけてタバコに火をつけているサド。足元にはたくさんのハト、ハト、ハト。 それもそのはず、サドの背後に隠れるように立っているオバちゃんらしき人が餌をまいているようなのだ。 餌まきおばちゃん、たくさんのハト、スタイリッシュにタバコに火をつけるジャズマン。奇妙な組合せだが、モノトーンのジャケ写の上に、タイトルを黄緑色のフォントのタイポグラフィを施すことによって、しっくりと落ち着いた、ムードのあるジャケットとなっている。 この雰囲気は、まさに、ウォームで落ち着いたアルバムのサウンドそのものだともいえる。 ドラマーのマックス・ローチ以外は、すべてデトロイトからやってきたジャズマンたちだが、彼らが繰り出す上品な味わいとコクを醸し出すこのアルバムは、聴きこめば聴きこむほど手放せなくなる。 |
| (2004/06/21) |
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