SONGS FOR DISTINGUE LOVERS (Verve)
- Billie Holiday

  1. Day In Day Out
  2. A Foggy Day
  3. Stars Fell On Alabama
  4. One For My Baby (And One More For The Road)
  5. Just One Of Those Things
  6. I Did'nt Know What Time It Was

Billie Holiday(vo)
Harry Edison(tp)
Ben Webster (ts)
Jimmiy Rowles (p)
Barney Kessell (g)
Red Mitchell (b)
Joe Mondragon (b) #3,4,5
Alvin Stoller (ds)
Larry Bunker (ds) #3,4,5

1957/01月

デザイナー、コピーライター、カメラマンなど、いわゆるクリエイティヴな仕事をされている方にはジャズ好きが多いと思う。
少なくとも私の身の周りに関しての話、だが。

即興演奏が主体となるジャズという音楽は、ある意味、過激なクリエイティヴ行為だともいえるし、ジャズの持つ特有の“カッコよさげな雰囲気”がクリエイターの琴線を刺激するのかもしれない。

また、洒落さと、粋さと、セクシーさが幸せな形で共存できる音楽がジャズだし、ジャケットのデザインも秀逸なものが多いのもジャズの特徴とも言える。
特に、ブルーノートの大胆な写真のトリミングと、秀逸なアイディアの宝庫ともいえる数々のタイポグラフィを楽しめるジャケットのデザインは、デザイナーのデザイン心を刺激してやまないんじゃないかと思う。
特にジャには関心の無いデザイナーでも、デザイン事務所の本棚の一角には、美術出版社の『ブルーノート・アルバム・カヴァー・アート』を蔵書している人も多い。
“ジャズの音”には興味が無くても、ジャケットのデザイン(主にタイポかな?)は、大いに刺激と参考の種になっているようだ。

先日も一緒に飲みにいったデザイン事務所の社長さんもそうだった。
初めて飲む相手だったので、最初はお互い緊張していたが、酒が進み、お互い、ジャズが好きだということが判明したら、一気に打ち解けた。

彼はビリー・ホリデイが好きで好きでたまらないのだという。
「じゃあ、サラ・ヴォーンは好きですか?」
「いいですねぇ、亡くなる前に中野サンプラザに見に行きましたよ」
「もしかして、エラ(フィッツジェラルド)は苦手ですか?」
「よく分かりましたねぇ。彼女は一流のエンターテイナーだと思います。でも、そこがボクの好みじゃないんだよね……。」

といった具合に、ジャズが好きだということが分かった途端に、一気に親近感を互いに抱き、会話も酒も進む進む。
結局店を4軒をハシゴし、気が付くと空が明るくなっていたという。

彼のビリー・ホリデイ好きは、間接的にはコーヒーの影響なのだという。
彼は大のコーヒー好き。
実家の近くには「ビリー・ホリデイ」という名前のコーヒーのおいしい喫茶店があり、よくそこに通っていたのだという。
その影響で、ビリー・ホリデイが気になり、聴いて好きになり、今ではジャズにドップリ、という感じ。

ビリーのアルバムは何十枚も所有しているそうで、一日中聴いても飽きないのだそうだ。
京都のジャズ喫茶にロケにいったときも、休憩時間は、その店でビリーのレコードばかりをかけてもらったというほどのビリー好き。

「でも、やっぱりビリーって夜のイメージが強いじゃないですか?昼間からビリー聴くのは、ちょっとヘビーじゃないですか?」という私の質問に、全然そんなことは無いよと、涼しい顔で仰っていた。

どうも、私の場合は文字による先入観が強かったのかもしれない。
村上春樹のエッセイでは、夜に聴いたら突然ビリーの歌が“染みてきた”という内容のものがある。
これを読んで以来、どうも“ビリー・ホリデイ=夜”という先入観が形作られてしまっている私。

しかし、ヘヴィで重いのだけがビリーじゃないはずだ。
私が好きなビリーのアルバムに『アット・ザ・ストリーヴィル』というライブ盤があるが、このアルバムの内容は、軽快でノリの良い演奏が多いことを思い出した。

そう、ビリーは夜だけに聴くものじゃないんだ。
私も『チェット・ベイカー・シングズ』はいつも朝に聴いて爽やかな気分 になっているが、寺島靖国氏の著書によると、“チェット・ベイカーは夜”なんだそうで、人が良いと感じるシチュエーションや時間帯の差は結構激しいものなんだなと思った。

で、早速、今朝は早朝にビリーをかけてみた。
選んだアルバムは、『アラバマに星落ちて』という邦題で知られている『Song For Distingue Lovers』。

ご機嫌なミドルテンポの一曲目《デイ・イン・デイ・アウト》から、ご機嫌な演奏が飛び出してきた。
心地よいテンポに乗り、ピアノ、ギター、テナーが気持ちよくソロを交換してゆく。非常にリラックスした感じだ。

原曲のメロディの崩しが絶妙で、かつ歌詞の一語一語がするすると頭に入ってくる《霧深き日》。

軽快なハリー・エディソンのトランペットに、抑制の効いた大人の味わいを感じさせるベン・ウェブスター。
バーニー・ケッセルのギターも粋だ。
ソロ奏者は三者三様の個性を邪魔することなく主張している。
つまり、彼女を彩る男たちも、申し分ない人選なのだ。

最近は、“イケメン(=イケてる男)”なる言葉が巷で流行っているようだが、今風に言えば、彼ら3人は間違いなく“イケメン”だ。

もちろん、シチュエーション的には照明の落とした飲み屋がもっとも相応しいんだろうけれども、陽光降り注ぐ、まぶしい朝にコーヒーを飲みながら耳を傾けるのも悪くないと思った次第。

おっと、もう出かけなければ。
残念だけど、途中でCDプレイヤーをストップさせる。数曲しか聴けなかったけど、帰ってきたら続きを聴こう。

朝の静かで気持ちの良い時間帯に、ビリー・ホリデイのこのアルバムを聴いた私は、月並みな表現だが、聞いている間は、とても“幸せ”な気分に浸ることが出来た。
このアルバムに、素直に「ありがとう」と言いたい。
(2003/05/30) 


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