OBLIQUE (Blue Note)
- Bobby Hutcherson

  1. 'Til Then
  2. My Joy
  3. Theme From Blow-Up
  4. Subtle Neptune
  5. Oblique
  6. Bl-Sectional

Bobby Hutcherson (vib)
Herbie Hancock (p)
Albert Stinson (b)
Joe Chembers (ds)

1967/07/21

1曲目の《ティル・ゼン》をはじめて聴いたときは、
「うぉールパン三世!」と思ったものだ。

ニース、モナコ、サンパウロ。
あるいはカリオストロ公国でも良い。

とにかく、穏やかな海、美しい海辺の街と、海に映える夕陽の美しいロケーションがよく似合うサウンドだな、というのが、この曲の第一印象。

ルパン三世が活躍する舞台って、こういう場所が多いじゃないですか。

あと、峰不二子が海風を浴びる夕焼けエンディングの映像にも合いそう。

ピアノとヴァイブの音が綺麗に溶け合い、よく聴くとハッチャーソンはかなり細かい打鍵をしている。

余韻を抑え目にしたヴァイブラフォンをコロコロと。
うん、心地よい。
心地よすぎるかもしれない。

しかし、こんなに気持ちの良い音源も、長らくお蔵入りしていたのだ。

それは、おそらく名作『ハプニングス』と重複する内容だと判断されたためかもしれない。

録音されたのは1967年。
つまり『ハプニングス』の翌年で、パーソネルもほぼ同じ。

ベースがボブ・クランショウからアルバート・スティンソンに代わったぐらいだ。

よって、音楽の内容も大まかに言ってしまえば、同じような内容だから続けて出しても仕方がない、という判断がくだされたのかもしれない。

しかし、なかなかどうして、どうして。

なぜお蔵入りさせたのか疑問に思うほど、質の高い演奏が楽しめる。

ハンコックの活躍ぶりも素晴らしいし、ハッチャーソンのリリカルかつミステリアスなプレイも健在。

『ハプニングス』に勝るとも劣らない内容だ。

『ハプニングス』に《処女航海》あれば、
『オブリーク』に《ティル・ゼン》ありだ。

個人的には、前者より後者のほうが、曲も演奏もずっとずっと素晴らしいと思うのだが……。

尖がった前衛的なアプローチも得意とするハッチャーソンだが、それだけではなく、叙情的で柔らかな演奏も彼は得意とする。

それは、デクスター・ゴードンと共演した『ゲッティン・ゼア』やグラント・グリーンと共演した『アイドル・モーメンツ』を聴いてもらえれば分かるとおり。

そして、このアルバムは、どちらかというと、尖ったハッチャーソンではなく、丸いハッチャーソンの割合が大きい。
聴いているうちに、頬が自然と緩んでくること請け合い。

もっとも、硬派な演奏もある。
特にタイトル曲における、ハッチャーソンの渾身のソロ。
まるでヴァイブラフォンによる高速スケール練習のようなフレーズではあるが、彼はなみなみならぬ技術の持ち主だということが分かるだろう。

ピアノとベースのリフレインが印象的な3曲目の《ブロウアップのテーマ》は、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の映画『ブロウアップ』(邦題『欲望』)のテーマ曲だ。

リラクゼーションと、微妙な緊張感がバランスよく入り混じったこのアルバムは、その聴きやすさからも、ハッチャーソン入門としても最適だ。

彼の『ハプニングス』が好きな人は、是非『オブリーク』のほうも耳を傾けてみてほしい。

実質的に『ハプニングス』の姉妹盤と呼んでも差し支えのない内容なのだから。
(2003/06/22) 
(加筆修正 2009/11/09) 

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