MAIDEN VOYAGE (Blue Note) |
| - Herbie Hancock |
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Herbie Hancock (p) Freddie Hubbard (tp) George Coleman (ts) Ron Carter (b) Tony Williams (ds) 1965/05/17 |
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タイトル曲に関しては、長らくボビー・ハッチャーソンの『ハプニングス』のバージョンのほうが良いと思っていた。 こちらのほうが、サウンドの輪郭がハッキリしているし、メリハリもある。清涼感溢れるヴァイブの音色の効果が効いているので、非常に“クール”な感じがする。 こちらのオリジナルのほうの演奏は、トランペットとテナーサックスが織り成すテーマのアンサンブルが、どこか茫洋とした感じがして、“ハッチャーソンバージョン”に慣れた耳にとっては、生アクビが出るそうな感触だったのだ。 ところが、この“茫洋とした生アクビ”の良さに目覚めると、こちらのバージョンも愛しく感じてしまう。 いや、むしろこちらのバージョンのほうが今では好きかもしれない。 潮の香りがするのだ。 それも、かなり濃厚にムンムンと。むせかえるほどに。 いい具合に曖昧な輪郭を描く、テナーとトランペットのアンサンブル。 濃密かつ静謐な海の表情が、実に見事に描写されているのだ。 ハンコックは、音で絵を描く達人だ。 いや、情景のデッサンが秀逸なのだろう。 このデッサンにペイティングを施すのは、フレディ・ハバードとジョージ・コールマン。 爽やかさと同時に、べったりとした湿度を含んだ海沿い独特の空気感を実に見事に2管で着色している。 《処女航海》は、理論的に分析すれば、ハーモニー的には、非常に論理的で、明晰な構造が織り込まれているのだが(※)、結論から言ってしまうと、“12音のすべてが使える”構造となっているので、ソロの自由度が増している。 つまり、何を吹いてもよいし、何を弾かないでも良いのだ。 逆に言えば、なんでもありゆえの表現の難しさもあり、タガが外れると主題の雰囲気から大きく外れてしまう危険性も十分にはらんでいる。 しかし、このへんのところは、さすがに新主流派の代表的なミュージシャンの集まりなだけあって、そのへんは手慣れたもの。きっちりと、ハンコックの世界から逸脱することなく、丁寧に、一貫して“海”な世界を描ききっているのはさすが。 というよりも、このような自由にアドリブできるスペースをソロ奏者に与え、それでいて、“世界”から大きく逸脱することのない音楽的枠組みを作ったハンコックのほうが、さすが、というべきかもしれない。 ※《処女航海》は、Dsus4 / Fsus4 というコードのパターンの繰り返しが曲の骨格となっている。 ハンコックのピアノの“例のバッキング”が、このコードパターンだ。 このピアノのボトムを支える(というか漂っている)ベースは、DとFの音を中心に繰り返されている。 このDとFの音の距離は、短3度。 この短3度は、バルトークの中心軸システムを参考にしていると思われ、それぞれ近親調のドミナントとして機能しているので、この2つの組み合わせだけで、奏者がアドリブを取る際には、12音すべての音が使える。 この曲のように、骨格となる和音を変えずに繰り返し、上にのっかるメロディを変化させてゆくことによって、サウンドのトーンが印象派的な雰囲気を帯びてくるのだ。 ハンコックがインタビューで、バルトークの影響を受けていると語っていた記事を何かで読んだ記憶があるが、このような曲作り一つとっても、影響が色濃く認められる。 |
| (2003/06/20) |
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