"THE END OF LEGAL FICTION" LIVE AT JZ BRAT (Airplane) |
| - 濱瀬元彦 E.L.F. Ensemble&菊地成孔 |
|
|
濱瀬元彦(b) 菊地成孔(sax) 成澤功章(key) 清水 玲(b) 岡部洋一(per) 2010/04/13 |
|
|
|
ベーシストであり、音楽学校「ラング」にて後進を育成し、また近年はチャーリー・パーカーのアナライズにも精力的に取り組む濱瀬元彦が20年ぶりに放ったアルバムはライブ盤。 東京は渋谷の「JZ Brat」にて、2010年の4月13日に、サックス奏者の菊地成孔をゲストに迎え演奏された白熱のライブといえる。 そう、まさに白熱という言葉が相応しい。 ハイレベルかつ高密度なアンサンブルが、打ち込み無しの生演奏で繰り広げられており、「JZ Brat」にて演奏された2時間半の演奏から60分の演奏がパッケージングされている。 従来の作品『テクノドローム』や『樹木の音階』、また青山スパイラルで行われたライブの模様を収録した『アネクドート』は、どちらかというとスタティックで密室的な要素が強かった。 ところが、今回のライブは、鼻血が出るほどぶっとぶ演奏が多い。 とくに、『テクノドローム』の代表曲のタイトル曲や《エンド・オブ・リーガル・フィクション》や《オペーク》の知的な暴走っぷりは聴き手を興奮の坩堝に誘ってくれるに違いない。 濱瀬は6弦のフレットレスベースで、ほとんどのパートでリードを奏でているが、アンサンブルの根底を支える伴奏役にもう一人のベーシスト、清水玲がいる。 彼のベースがなかなか良いのだ。 ラフで攻撃的なスラップが、演奏のバッテリーでもありエンジン役を果たしており、さらには「打」の絨毯爆撃とでもいうべき岡部洋一のドラミングとのコンビネーションが、暴力的なまでに攻撃的。 彼ら2人の暴れん坊がリズムセクションに加わったことが、濱瀬作り出す音楽の「知」に、「血」と「肉」と提供しており、密室的な実験的要素の強い音楽が肉体性を獲得している。 そして、もう一人のソロ奏者・ゲストの菊地成孔の存在も、ライブにおいては、アンサンブルが単調に陥らないための「もう一人の主役」、そして「地味な濱瀬を補完する“華”的存在」としては良い配役と感じる。 『Bass Magazine』のバックナンバーのインタビューでも語っていたが、濱瀬は死んだ弦のこもったベースの音色が好みとのことだが、素晴らしいテクニックを持っていながらも、こもり気味の音色でパラパラと高速パッセージで弾かれるリードベースは、メリハリとダイナミクスに欠けることは否めない。 ゆえにノッペリとした単調さを感じ、しかもエコーがかかっているので、音の輪郭とアタック感に欠けるきらいがある。 また、演奏面においても、繰り出されるフレーズの中には濱瀬特有のクリシェが頻出する。 しかも、これらストックフレーズは、テンポも雰囲気もまったく異なる曲においても多出するため、瞬間的にはスゴいと思える箇所はあるにせよ、長い目でソロ全体の構成を見渡すと、どの曲のアドリブにおいても瞬間風速的にインパクトのあるフレーズも、これらの集積の果てにはついぞ大河をなしえていないところが残念。 このようなことを鑑みても、アンサンブルにメリハリと華を添える菊地のサックスの存在は不可欠だったのかもしれない。 しかも、面白いことに、菊地成孔のサックスがソロを取り始めると、どうしてこうも音がダブ・セクステット風になってしまうのだろう。 菊地の演奏は興奮のボルテージのコントロールを心得ており、なかなか良い。 特に《エンド・オブ・リーガル・フィクション》でのソロの前半は、バックの激しいリズムの嵐を軽くかわしながら、あたかもミドルテンポの4ビートのリズムを想定しているかのようなアドリブをノホホンと繰り広げているところに、ユーモアと遊び心を感じる。 このライブ盤は、このアンサンブルの中で「ジャズ係」としての役割を忠実に果たしている菊地成孔の“ジャズっぽい名演”が聴けるという点においては、菊地ファンにもお薦めしたいアルバムだ。 |
| (2010/11/20) (加筆 2012/04/13) |
|
|
|
|
All Rights Reserved. |