ELMO HOPE TRIO (Contemporary)
- Elmo Hope

  1. B's A-Plenty
  2. Berfly
  3. Eejah
  4. Boa
  5. Something For Kenny
  6. Like Someone In Love
  7. Minor Bertha
  8. Tranquility

Elmo Hope (p)
Jimmy Bond (b)
Frank Butler (ds)

1962/02/05

一見、聴きやすそうだが、そのじつ、なかなか手ごわいアルバムだ。

ブルーノートから出ている、クリフォード・ブラウンの『メモリアル・アルバム』で聴ける、メロディアスで、バド・パウエルを彷彿とさせるピアノを期待すると、肩透かしにあうかもしれない。

内容がハードだからではない。
難解だからでもない。
むしろ、パッと聴きは、何の変哲もないピアノトリオだ。

しかし、よく聴くと、妙なズレと違和感を感じる瞬間がある。まるで、遠近感が微妙にズレた絵を見ているときのような感覚とでもいうべきか。

しかも、このズレに気づくのに多少の時間を要するところに、エルモ・ホープの確信犯っぷりを感じざるをえない。

ジャケットに映る、彼の挑戦的な眼差しは、そのまま、我々リスナーの聴覚への挑戦なのかもしれない。

まるで、パズルのように構築されたフレーズの集積は、非メロディアスというわけではないが、情緒的で甘い砂糖菓子のようなフレーズはほとんど出てこない。
スローテンポで演奏される、最初から砂糖菓子のようなメロディの《ライク・サムワン・イン・ラブ》においても、ピリリと辛口だ。

彼の紡ぎ出す音楽の全体像を掴むのには、ちょっとした苦労が伴う。
油断していると、あっさりと彼の右の穴から左の穴へと音が通り過ぎていってしまうことだろう。
しかも、意識して聴かないと、平易なフレーズに聞こえてしまうところがミソ。
なかなか、巧妙なのだ。

とくに、1曲目の《ビーズ・ア・プレンティ》は、極度に節約した短いフレーズが、4ビートの上に散りばめられているが、あまりに断片的かつ、フレーズとフレーズの“つながり感”が希薄ゆえ、演奏の行く先が見えず、不安な気持ちに苛まされるのでは?

エルモ・ホープは、巧妙にツボと核心を隠す。

まるでリスナーに謎かけをしているように。
しかも、平易な語り口で語りかけるので、一瞬分かったつもりになってしまうところがクセモノだ。

決して露骨な難解さは伴わないが、そのじつ、ひとたび気になり始めると、謎に満ちた出口の予想がまったくつかない迷宮へと引きずりこまれていることに気がつく。

初心者にはトッツキにくいピアニストの代表例としてよく挙げられるのは、セロニアス・モンク、ハービー・ニコルズ、セシル・テイラーの3人だが、もう少し、微妙な位置で難解なのが、このアルバムのエルモ・ホープのピアノなのではないだろうか?

モンクの演奏は、強烈な不協和音は伴うものの、メロディ自体は決して難解ではない。むしろ、鼻歌でなぞれるほど平易なラインが多いほど。

同様に、ニコルズの場合も、どんよりと重たい左手のハーモニーが特徴的ではあるが、リズムもメロディも難解というほどではない。難解そうなベールに包まれてはいるかもしれないが、少なくとも演奏全体の輪郭を掴むのはそれほど難しいことではない(雰囲気は、このアルバムに通ずるところはあるが)。

セシル・テイラーに関しては、彼のピアノは露骨に過激なので、これはもう“そういうもの”として、リスナーは最初からそういう気構えで演奏に臨むので、「平易なようでいて、意外に難解」はホープのピアノとは対極に位置する。

さり気なく、難解な要素をすべり込ませた『エルモ・ホープ・トリオ』。
ジャズファンの間では、あまり俎上に上ることのない、マイナーなアルバムかもしれないが、これはなかなか聴きごたえのあるアルバムだ。

これは、なかなかに上級者向けのアルバムかもしれない。

個人的には、“コンコン・チキチキ”と連打されるシンバル・トップのアタック音が気持ちが良い《サムシング・フォー・ケニー》がお気に入りだ。

(2005/07/28) 


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