BLACK SAINT (Black Saint) |
| - Billy Harper |
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Billy Harper (ts,cowbell) Virgil Jones (tp) Joe Bonner (p) David Friesen (b) Malcom Pinson (ds) 1975/7/21-22 Barclay Studios,Paris |
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ブルース・リーのヒットによって、香港からは雨後の竹の子のように多くのカンフー映画が生み出されたが、一部の作品を除けば、ほとんどが、オリジナルをB級テイストに格下げしたものばかりで、映画史に名を残すほどの傑作は少ない。 同様に、独自のスタイルを築き上げたジョン・コルトレーンにも、多くのフォロウワーが生まれた。もちろん、デイヴ・リーヴマンやマイケル・ブレッカーらのように、優れたプレイヤーも出現したが、彼らの影には何百もの“コルトレーンになりたくてなれなかった男”たちの屍が累々と積みあがっているに違いない。 ビリー・ハーパーも“コルトレーンになりきれなかった男”の一人なんじゃないかと思う。 この『ブラック・セイント』を聴けば、このアルバムで彼のやりたいことは、コルトレーンがやったことなんだなぁということよく分かる。 インパルス移籍後あたりのコルトレーンのサウンド・フォーマットに、多少フリーキーな要素も交えたコルトレーン、…になれなかった男の咆哮が続く。 彼のテナー・サックスの輪郭は太く力強い。 武骨といっても良いほどの“漢(おとこ)”を感じさせるサックスだ。 しかし、武骨なだけに、器用に音楽を組み立ててゆくタイプのサックス奏者でもない。 どちらかというと、簡単な演奏のレールを敷いてしまえば、あとは、細かいことなど一切考えずに、ひたすら一直線に力強く突き進むタイプだといえる。 このアルバムにおいて、ハーパーは思う存分テナーをブロウするためのサウンド・フォーマットを、コルトレーン・カルテットに求めたことは想像に難くない。 アレンジを効かせた細部への心配りよりも、とにかく重量感と迫力でグイグイと押し、聴き手と演奏者を恍惚状態へと誘おうとするアプローチ。 モード奏法を取り入れ、一時代を築き上げたコルトレーン・カルテットや、ブルーノートの新主流派の演奏に通ずるサウンドだが、この演奏の土台はひたすら渾身のアドリブを繰り広げるための土台に過ぎず、リズム的な発展や曲のアレンジの掘り下げは、ほとんど無頓着といっても良いほど。 しかし、コルトレーン・カルテットのサウンドを目指しつつも、なりきれないまま終始している理由の一つに、サイドマンの力量の問題もある。 エルヴィン、マッコイのような実力者と比べてしまうのも酷な話かもしれないが、ドラムはエルヴィンほどの重量感も爆発力も無いまま、ひたすら力任せにドラムセットを連打している感じ。音量はあるが、リズムの奥行きは感じられない。 同様に、鍵盤のジョー・ボナーもマッコイほどのハーモニー的な厚みも発展も感じさせずに、同じ和音をいったりきたりなのだ。 トランペットのヴァージル・ジョンソンも、グループのサウンドにフィットした無難なプレイをするが、音色的にもフレーズ的にも、いかんせん迫力と説得力に欠ける。 ま、この軽やかさが、ハーパーのサックスと良い対比をなしているといえないこともないが…。 エルヴィンになりきれないドラム。マッコイになりきれないピアノ。 そんなリズムセクションをバックにいくらハーパーのド根性サックスが渾身のアドリヴを繰り広げたところで、コルトレーン・カルテットの迫力に近づけるはずもなく、また、演奏のテイストが似ているがために、どうしても聴き手は、コルトレーン・カルテットと演奏内容を比較せざるを得ない。 考えようによってはビリー・ハーパーは、すごく損な土俵を選択してしまっている。 ただ、B級にはB級の良さがあるように、このアルバムの演奏がダメかというと、そうでもなく、なんだかんだいいながらも、いつも私は最後まで聴きとおしてしまう。 どちらかというと一本調子な演奏にもかかわらずに、だ。 ある意味、これはスゴイことだと思う。 アドリブ奏者が変わると、突然ハーパーの叩くカウベルがカパコポと鳴りはじめるのが面白いし、で、気がつくと、いつのまにか鳴り止んでいるのも笑えるし、この一生懸命演奏に変化をつけようとしているんだけれども、どこかツメが甘いところが、逆にこのアルバムに愛着を感じさせてしまう要素の一つだ。 思うに、この『ブラック・セイント』というアルバムは、彼の魅力の全貌を捉えきれていないんのではないか? というのも、3曲ともに、どれもが同じ曲調で、たとえばバラードのようなスローテンポの曲は1曲も演奏されていない。 これは、ビリー・ハーパー一人の問題ではなく、プロデューサーの力量とセンスの問題もありそうだ。 ただ、力まかせの演奏をさせっぱなしで、彼の魅力に一種類の角度からし か光を当てていないのでは? だとすると、ちょっとハーパーが可哀想な気もしてくる。 ジャケットの中央に、ちょこんと淋しそうに立つ彼の姿を見るにつけ、より一層、その思いが強くなる今日この頃。 |
| (2005/01/12) |
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