BILLIE'S BLUES (Liberty)
- Billie Holiday

  1. Announcement By Leonard Fetther
  2. Blue Moon
  3. All Of Me
  4. My Man
  5. Them There Eyes
  6. I Cried For You
  7. What A Little Moonlight Can Do
  8. I Cover The Waterfront
  9. Billie's Blues
  10. Lover Come Back To Me
  11. Blue Turning Grey Over You
  12. Be Fair To Me Baby
  13. Rocky Mountain Blues
  14. Detour Ahead
  15. Trav'in' Light

#2-8
Billie Holiday (vo)
Carl Drinkard (p)
Red Mitchell (b)
Ellaine Leighton (ds)
Gregory Hutcherson (ds)

1954/01/05
Recorded live in Koin

#9&10
Billie Holiday (vo)
Buddy DeFranco (cl)
Red Norvo (vib)
Sonny Clark (p〔first solo〕)
Beryl Booker (p〔second solo〕)
Red Mitchell (b)
Ellaine Leighton (ds)

1954/01/05
Recorded live in Koin. Germany

#11〜14
Billie Holiday (vo)
Heywood Henry (ts&bs)
Tiny Grimes (g)
Bobby Tucker (p)
Unknown (ds)
Unknown (ds)

1951/04/29


#15
Billie Holiday (vo)
Monty Kelly,Larry Neill,Don Waddilove (tp)
Skip Layton,Murray McEachern,Unknown (tb)
Alvy West,Dan D'andre,Lennie Hartman,Unknown (reeds)
Mike Pingitore (g)
Buddy Weed (p) (p)
Artie Shapiro (b)
Willie Rodriguez (ds)
Jimmy Mundy (arr)
Paul Whiteman (musical director)

1942/01/12 for Capitol Records

《オール・オブ・ミー》という曲が好きだ。

単純明快で、親しみやすい名曲。

曲の構造もシンプルで、楽器初心者も演奏するのはカンタン。しかし、熟練者になればなるほど、このシンプルな曲にどう味付けを施そうかと頭を悩ますのではないだろうか。

料理で言えば、玉子焼きのようなものか。
シンプルで誰でもカンタンに作れるが、カンタンゆえの難しさもある。

この曲は、古今東西のプロからアマまでの数多くのシンガーがトライしている。
その中でも、ビリー・ホリデイこそが、もっともオリジナリティあふれる歌唱をしている歌手の1人だろう。

彼女の節回しは本当に独特だ。

以前、ブルース好きの女性(ヴォーカル&ギター)と、バンドを組んでいたことがあるが、《オール・オブ・ミー》もレパートリーの1つだった。

この曲を、ライブのレパートリーに加えようかと、スタジオで初めて音合わせをした時のこと。彼女がギターをかきならしながら歌うこの曲の節回しには驚いた。原曲の面影を残しつつも、まるっきりフェイクをしたメロディ。

おお、この人は天才か!?と一瞬感じた。

シンプルなメロディの曲を、こんなにも陰影の飛んだメロディに変えているのだから。
しかし、待てよ?どこかで聴いたことのある節だな、と思ったら、やっぱり、彼女、ビリー・ホリデイをコピーしていた(笑)。

独創性あふれるメロディの“改変”は、やっぱり歌い手としても気になるバージョンだったようだ。

さて、そんなビリーが歌う独創性溢れる《オール・オブ・ミー》は、『ビリーズ・ブルース』で聴くことが出来る。

54年、初の欧州ツアー。

彼女の気まぐれな性格ゆえか、2人のピアニストがツアーへの同行を拒絶したという。
そして、白羽の矢が立ったのカール・ドリンカルドというピアニスト。

あまり聞かぬ名前だし、バッキングもちょっと雑なところもあるが、これだけのザワついた会場内で“立つ”ピアノで存在感をキッチリと確保しているところは、正しくライブ向けのプレイなのかもしれない。

そして、このツアーに同行したドラマーは、女性ドラマーのエレイン・レイトンだ。

このリズムセクションを従え、ちょっと投げやりで気だるくスイングするビリーの歌唱は、やはり彼女にしか出せない味だ。

短い演奏時間で、「え、もう終り?」と拍子抜けするほどだが、この短い時間の中にはビリーの陰影に飛んだ人生がたっぷりと封じ込められている。
明るい曲調、快活なリズムの中に、どこか気だるく深い影が落とされているのだ。
(2007/03/12) 

スモール・コンボ編成で歌うビリー・ホリデイが好きだ。

ストリングス入りのオーケストラという豪華なバックを従えて歌うデッカのビリーも素晴らしいが、本音を言ってしまえば、素晴らしすぎて、聴く前からお腹が一杯になってしまうこともある。

「よし!聴くぞ」という気合いがどうしても必要なぶん、ビリーを聴こうと思ったときに気軽に手が伸びるのは、『ビリーズ・ブルース』のようなスモール・コンボ編成の演奏のアルバムになる。

私が所有している『ビリーズ・ブルース』のCDは、EMIの傘下レーベルの録音を集大成した豪華仕立てなものとなっている。

つまり、UA盤の「レディ・ラヴ」全曲と、アラジン原盤の4曲、そしてラストの《トラベリン・ライト》は、キャピトルの原盤1曲という構成となっている。

コレクターからしてみれば、歴史的価値の高い、貴重なセッションも含む編集となっているようだが、ライナーをあまり読まない私は、そんなことなどお構いなしに、好きな曲だけピックアップして気軽に聴いていた。
上記に書いたような貴重な録音に関しては、今回これを書くにあたってライナーを読んで初めて知ったという体たらく。嗚呼、いい加減だな……。

全15曲、もちろん、最初から最後まで律儀に順番に聴き通すようなことはしていない。
その日の気分で、ランダムに聴きたい数曲をチョイスして聴くような接し方を続けている私。
しかし、必ずといって良いほど《オール・オブ・ミー》をチョイスしていることに、今気が付いた。
この《オール・オブ・ミー》は素晴らしい。

《オール・オブ・ミー》という曲自体、明るい旋律の中にも、ちょっとした湿り気のある曲なので、個人的には大好きな曲だし、ライブでもよく演奏する曲だが、ビリーの《オール・オブ・ミー》は、原曲を熟知した上での「崩しの妙味」を楽しめる内容だ。

彼女の恋人だったレスター・ヤングもテディ・ウイルソンとの共演盤で、気持ちの良いアップテンポで粋な演奏をしている(プレス・アンド・テディ)。
この《オール・オブ・ミー》は、比較的原曲に忠実なテーマで演奏されているのに対して、ビリーの歌唱は、辛うじて原曲の面影を止めている程度のフェイクのしかたで、その崩しと節回しの格好良さにいつもしびれている私。
この曲も早めのテンポで歌われているので、レスターの《オール・オブ・ミー》と聴き比べてみると、同じ曲でも、人によって、こうも別なものに仕上がるものなのかと思う。

この《オール・オブ・ミー》に影響されてか、うちのバンドのヴォーカルも、ライブで歌うたびに、いつも違う節回しで歌っている。
簡単で口ずさみやすいメロディの曲でも、歌う人の気持ち次第では、いかようにも変容を遂げる曲なのだ。

このアルバム、ジャズ・ヴォーカルを習い始めた人にとっても重宝するアルバムなのだそうだ。《ブルー・ムーン》が入っているという点で。
実際に習っている人から聴いた話だが、多くのヴォーカル初心者は、《ブルー・ムーン》からジャズヴォーカルに入門することが多いという。

なぜ、《ブルー・ムーン》が選ばれるのかというと、

1、メロディが親しみやすい
2、しかも、簡単なメロディなので歌いやすい
3、「L」と「R」の発音の練習となる格好の歌詞内容
という理由らしい。

ビリー・ホリデイの『ビリーズ・ブルース』には、《ブルー・ムーン》が入っている上に、ビリー独特のメロディをフェイクさせた歌い方も、学べるという寸法。

もっとも、ビリー独特のフェイクは、ビリーだからこそキマるわけで、ちょっやそっとヴォーカルをかじった程度の人にとっては、あまりに独特過ぎて、また、彼女の色が強すぎて、あまり参考にはならないのかもしれないんじゃないかと、個人的には思うが……。

しかし、自分が歌う原曲のメロディと比較しながら、改めてビリーの歌唱を比較すると、いかにビリー・ホリデイという歌手は優れた表現者なのかを実感として理解出来るので、メリットも大きいのではないかと思う。

もちろん、他の曲も素晴らしい。
特に、《マイ・マン》などの彼女が何度も歌っている十八番の曲は、その深い表現力に、一度耳が反応したら、最後まで吸い寄せられてしまう迫力がある。また、ライブ録音中心の構成なので、ライブ特有の肩の凝らないリラッスした内容の演奏が多く、自分も容易に観客の一員となって楽しめることだろう。

余談だが、そして、まったくどうでもいいことなのだが、このアルバムのジャケット写真、そう、犬を抱いているビリーだが、うちのおばーちゃんが若い頃にそっくりだ……(笑)。

(2002/07/02) 

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