TOKYO (Savoy) |
| - Akiko Grace |
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Akiko Grace (as) 藤原清登 (b) 岩瀬立飛 (ds) Guests Toshihiro Nakanishi(vln) #4,13 Dozan Fujiwara (尺八) Chieko Kinbara (strings) 2003/11/22〜12/10 |
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「東京」と「Tokyo」。 意味は同じだが、その字感から漂うニュアンスは大きく異なる。 たとえば、ここに2冊の日本の観光ガイドブックがあるとする。 1冊は日本人向けの日本語のガイドブック。 もう1冊は、外国人観光者向けの英語のガイドブック。 写真もレイアウトも同じだが、印刷されている文字が日本語か欧文かで、受ける印象がだいぶ違うことは想像できるだろう。 雷門の写真の下のキャプションが、 「浅草」か「Asakusa」か。 祇園祭りの写真の下の文字が、 「京都」か「Kyoto」か。 たったこれだけでも、写真の持つニュアンスが著しく変わると感じるのは私だけではありまい。 アキコ・グレースが「和」をテーマにしたアルバム『Tokyo』。 もちろん、アキコ・グレースが描く“トーキョー”は、「東京」ではなく「Tokyo」だ。 そう、「かごめ かごめ」ではなく、《Kagome Kagome》で正解なのだ。 矢野顕子の《春咲小紅》や、The Boomの《島唄》もカバーしているが、これは、原曲のままの表記のほうが、より一層、原曲との差別化が際立つから、このまま漢字表記でOKだと思う。 また、藤原道山の尺八がフロントを張る《おぼろ月夜》は、やっぱり《Oboro-Zukiyo》よりは《おぼろ月夜》だよなぁ。 ま、表記なんてどうでもいいことかもしれないけれども、結構大事なような気がする。 曲名を欧文表記と和文表記が使い分けているのを見ると、恐らく本人、あるいはプロデューサーもそのへんのことは考えいたのではないかと思う。 日本的情緒はもちろん感じるが、湿り気が少なく、どこまでもドライなニュアンス。 日本の湿り気をドライに描写しているから、湿度はおのずと低くなる。 彼女が本質的に持つブライトで歯切れの良いタッチは、湿り気の度合いは低い。むしろ、本場のソニー・クラークのタッチのほうが湿度が高いと感じるほどだ。 この歯切れの良さは、おそらくはこのアルバムのベストトラック《東京狂詩曲》がもっとも生きている。どこまでも輪郭、ツブ立ちのはっきりとしたピアノがアップテンポでドライブする様はスリリングの一言に尽きる。 アタックの強いタッチで「和」的な「情念」を、湿ったニュアンスではなく、勢いのあるスピード感で描き切る。アキコ・グレースの本領発揮だ。 ただし、どうも彼女の和声感覚や、棒を切ったように真っ直ぐ素直なフレーズからはジャズ的匂いは希薄。 同様に、《ドナ・リー》のようなバップナンバーや、《ジャイアント・ステップス》も楽しいアプローチではあるが、まったくジャズな匂いは感じられない。 迫力あるピアノミュージックって感じで、“ジャズ的ではない”という言葉に語弊があるとすれば、少なくとも“バップの匂いが希薄”とでも言っておこう。 さらに、もうひとつ。これらの演奏、あえて、コンセプトアルバムなテイストが強い『Tokyo』に入れる必要あったのかな? ただでさえ曲の数が多く、すべて聴き終わるとかなりの満腹感なアルバムなのだから、「和」のコンセプトにそぐわない曲は無理して入れなくても、いや、潔くカットしたほうが却って統一感が出たのではないだろうか? と私は思うのだが……。 《島唄》では、一環したムードを保ち続けるドラミングが心地よく、全編にわたり、藤原清登の低音をガッシリと支える骨太なベースが頼もしい。とはいえ、私、彼のアルコはあまり好きではない。 藤原清登は、18世紀(だったっけ?)に作られたという名器を所有し、さらにクラシック作品の録音も残していることとからも、“クラシックも出来るジャズマン”というイメージをお持ちの方も多いと思うが(私もそうだ)、ピッチカートは良いにしても、私は彼のアルコはあまり買ってない。 ピッチの問題と表現の奥行き深さが、やはり本場のクラシック奏者と比較すると足りないと感じるのだ。さすがに音色は素晴らしいが。 ジャズ観というものは、人によって様々だが、私に限ってのこのアルバムの感想を述べると……。率直に言えば、私はこのアルバムは、ジャズの匂いがあまり感じられない。 もっとも、ジャズっぽくないから悪いという意味ではない。 むしろ、私は、イキの良いピアノミュージックとして聴いている。 たまたまフォーマットが、ジャズのオーソドックスなフォーマットを踏襲しただけ。聴こえてくるアキコ・グレースのピアノは、モノトーンとは対極の美しいハイビジョンカラーで迫ってくる、上質な「ピアノミュージック」だ。 だから、演奏がダイナミックでも、ジャズならではの神経をざわざわさせるような要素が希薄ゆえ、ジャズなんて厄介な括りにとらわれず、イキの良いピアノ音楽として単純に楽しむのがこのアルバムに接する極意だと思う。 曲によってめまぐるしく変わる色彩感覚は、なかなか楽しめます。 |
| (2007/12/08) (加筆:2011/11/22) |
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